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オリジナル盤もどき調理法
CD Programming Guide For "Original" Lovers
【2000.06.12.】


 
編集盤CDから、「オリジナル盤もどき」をでっちあげるための曲順プログラムを紹介します。
いろんなソースが混ぜ合わされた編集盤から、混ぜ合わされる前のソースを取り出してみようというわけです。
オリジナル盤が簡単に安く手に入るのなら、それに越したことはないのですが、なかなかそういうわけにはいきません。
まずは、できるところから、曲順だけでも、それなりに。


第3回 スワン・ダイヴの“デビュー”アルバム

[概略]
1枚のアルバムが世界各国どこででも同じ仕様で発売されることは、いまではあたりまえのようになっています。
「日本盤のみボーナストラック入り」ということはあるし、カバーデザインが変更されることもたまにあります。
でも、基本的にはほとんど同じ形で発売されるように思います。
かつては、ちがいました。英米でそれなりの人気が出てからでないと、日本盤は発売されませんでした。
その日本盤にしても、その時点での最新ヒット曲を含んでいなければなりませんでした。
したがって、往々にして、その時点でのベスト盤のようなものが「本邦デビューアルバム」になったのです。
このことは我が国の特殊事情ではありません。60年代のイギリス人バンドがアメリカで出したアルバムは、ほとんどアメリカ独自編集でした。
ときには、本国でまだ発表されていない曲が先に出てしまうことすらあったようです。

今回の材料であるアメリカ・ナッシュビルを拠点に活動している素敵なポップデュオ、スワン・ダイヴは、そうした例の変わり種です。
彼らは、アメリカで活動しているアメリカ人なのに、本国での本格的なデビューアルバムが、「その時点でのベストアルバム」になってしまったのだ。
今回は、実は編集盤である本国での“デビュー”アルバムをでっちあげようというわけです。いつもと逆の番外編というべきか。

スワン・ダイヴは、音楽ジャーナリストとして活動しているビル・ディメインと、数々のセッションで歌っているモリー・フェルダーの二人。
「レコード店のセルジオ・メンデス・コーナーの棚の前で出会った」という微笑ましいエピソードが伝えられています。
1993年にデュオとしての活動を開始し、現在に至っています。

経緯はわからないのですが、おそらく半分はプロモーション目的で作られた自主制作CDが、日本ではメジャーを通して発売されました。
好評を受けて、さらに、2枚のCDが作られたのですが、それらは日本でしか発売されませんでした。
3月にアメリカで発売された「デビューアルバム」は、それらの3枚のCDから選曲された編集盤というわけです。
発売元は、地元ナッシュビルのコンパスレコード http://www.compassrecords.com/
エディ・リーダーやクライヴ・グレッグソン、ブー・ヒュワディーン、ヘイミッシュ・スチュワートなどイギリスの渋いところも出していて、面白い。

3枚目のCDが発売されたとき、レコード店で無料ミニコンサートを開いた彼らを見ました。
とても気さくな兄ちゃん&姉ちゃんで、演奏も二人だけなのに、練られたアレンジで、しっかりと聞かせてくれるものでした。
本国で出ていないらしいことを知って、残念に思っていたので、この「デビューアルバム」の発売を喜んでいます。売れたらいいなと思います。

元になったCDを3枚とも持っているわたしは、売れたらいいなと言いつつ、買いません(ごめんね、ビル&モリー)。
せめて、「デビューアルバム」通りの曲順で聞きながら、彼らのアメリカ本格デビューを祝いたいと思います。
まさか、バージョンがちがうというようなことはないやろなという一抹の不安を抱きつつ。
(カバーデザインがちょっと良いので、アナログ盤が安く出ていたら、買ってしまうかもしれません。)

[メニュー]
“デビュー”アルバム "SWAN DIVE" (Compass)、2000年3月14日発売
 

[材料]
Swan Dive "YOU'RE BEAUTIFUL" (Private press, no number)、1996年発売
        ※日本盤は、Sony/Tristar SRCS 8319(1997年5月21日発売)
Swan Dive "WINTERGREEN" (Sony/Tristar SRCS 8462)、1997年10月22日発売
Swan Dive "CIRCLE" (V2 Japan V2CI 0013)、1998年9月19日発売
 

[手順]

元になっているCDは、A・B・Cで表します。
A → "YOU'RE BEAUTIFUL"
B → "WINTERGREEN"
C → "CIRCLE"

"SWAN DIVE" (Compass #4285)
cd-program: A3-C2-C3-C4-C5-C6-A7-C7-B1-C9-C11-C10-B2

1. The Day I Went Home
2. Better To Fly
3. Goodbye September
4. Circle
5. Ordinary Day
6. Rome Will Fall
7. Charade
8. And She Dreams
9. Groovy Tuesday
10. Moodswinging
11. Sweet Enemy
12. Luckiest Girl In The World
13. Heart Of Glass
ファーストアルバム "YOU'RE BEAUTIFUL" から2曲、ミニアルバム "WINTERGREEN"から2曲、残りが "CIRCLE" からという構成。
最新アルバムを基本にしながら、そこに含まれていない感じの曲を、他のアルバムから選んだといったところでしょうか。
ブロンディのカバー、"Heart Of Glass" は、ボーナストラックという位置づけのような気がする。
でも、"The Day I Went Home" から始まるこの始まり方は、ちょっと地味とちゃうかなぁ(いい曲なんやけどね。お節介ですが)。
6曲目の "Rome Will Fall" が終わったらB面にひっくり返す、という具合に、このままアナログ盤にしても、いいかんじです。

クリス・レインボウという人が、ベスト盤の選曲の偏りについて、新しくデビューアルバムを作ろうとしたと答えていたことが思い出されます。
やり直しができるなら、いちばん良いと思う曲を選んで出したいという気持ちは、なんとなくわかります。
でも、本国のファンのひとは、通常のルートでは、ここから漏れた曲は手に入れにくいわけで、きっと悔しがっているにちがいない。
なんで日本でだけいろいろ出てんねん!と。そんなふうに思うと、勝手に恐縮してしまうのでした。
 
 
※材料の内訳



"YOU'RE BEAUTIFUL" cdlp (Private press, no number)、1996年発売
1. Free
2. Blueprint
3. The Day That I Went Home
4. Little Crown
5. Mary Margaret's Tears
6. Broken Compass
7. Charade
8. Beautiful Excuse
9. Somebody Else's Sky
10. Even If I Wanted To
11. Benny's Grave
12. Move The Stars
"WINTERGREEN" を聞いたあとで、ファーストアルバムも聞いてみようと思っていたところで見つけたアメリカ盤。カバーデザインは日本盤とちがっています。
レコード会社名もカタログ番号も記載されていませんが、連絡先は記されているので、プロモーション目的で作られた自主制作のように思われます。
ただ、地元ナッシュビルのコンテストでは、最優秀ポップアルバム部門にノミネートされたそうです。受賞は逃したようですが。
日本盤は、ソニーから発売されていて、解説もついているので、そのあたりの経緯に触れているかもしれませんが、未読です。
プロデュースは、1995年のアルバム "GILT-FLAKE"で知られるブラッド・ジョーンズが担当しています。有名なひとらしいです。
わたしは、名前しか知らなかったので、「あのブラッド・ジョーンズがプロデュース」と言われても、きょとんとするしかなかったのですが。
"SWAN DIVE" に採られた "Charade" など、浮遊感のある作風が横溢しています。"Broken Compass" は、スチュワート/ガスキンに近い(好きなもんで)。
バカラック・ボックスの解説なども執筆しているビルさんですが、既存の引き出しを持っているだけでなく、曲を活かす術を知ってはるように思います。
※日本盤は、Sony/Tristar SRCS 8319(1997年5月21日発売)



"WINTERGREEN" cdep (Sony/Tristar SRCS 8462)、1997年10月22日発売
1. Groovy Tuesday
2. Heart Of Glass
3. In The Land Of Make Believe
4. Words
5. I Know Myself Too Well
6. You Lose
7. Santa, Can't You Bring Me A Man
8. We Wish You A Merry Christmas
クリスマスシーズンにあわせて発売されたミニアルバム。わたしは、このアルバムで初めて、スワン・ダイヴを聞きました。
ペダルスチールが切ない "You Lose"、バカラック作品をフィリーソウル的に解釈した "In The Land Of Make Believe" が気に入っています。
"SWAN DIVE" に採用された2曲は、正直なところ、「日本向け」っぽくて、やり過ぎやなぁと思っていました。
"Words" は、オラみたいやなと思ったら、作ったときに念頭に置いていた曲が同じなのだった。彼らがはじめて共作した曲も入っている。
・・・というようなことが、当時の販促チラシに、本人たちと長門芳郎氏の解説として掲載されていました。
でも、CDに添付されたブックレットにはそれらは載っておらず、代わりにミュージシャンやカリスマ店員(?)による宣伝コピーもどきのコメントがずらり。
解説がなくても楽しめるけど、わたしだったら、カリスマ店員のコメントより、本人談のほうがずっとずっとうれしい。逆にすべきだったと思う。
本作も引き続き、ブラッド・ジョーンズがプロデュースしています。



"CIRCLE" cd single (V2 Japan V2CI 0011)、1998年9月9日発売
1. Circle
2. Runaway
3. Miss Outer Space
アルバム "CIRCLE" に少しだけ先行して発売されたシングル。タイトルトラックはアルバムと同一テイク、それ以外はアルバムには未収録です。
"Runaway" はアルバムと同じ布陣によるものなので、アルバムのアウトテイクかもしれません。
"Miss Outer Space" はビル・ロイドとのトリオによる演奏で、プロデュースもロイド氏。
タイトルトラックは "SWAN DIVE" に採用されているけど、アルバムにも入っているので、材料にあげていません。



"CIRCLE" cdlp (V2 Japan V2CI 0013)、1998年9月19日発売
1. Breezeway
2. Better To Fly
3. Goodbye September
4. Circle
5. Ordinary Day
6. Rome Will Fall
7. And She Dreams
8. Home Away From Home
9. Moodswinging
10. Luckiest Girl In The World
11. Sweet Enemy
12. Starfish
13. Circle (The High Llamas Remix)
V2レコードの日本支社に移籍してからの初めてのアルバム。プロデュースは、今回もブラッド・ジョーンズです。
アコースティックで優しい響きの可憐な作品(2, 3, 7, 10, 11など)とポップスの王道をゆくゴージャスな作品(1, 5、6, 12など)が、違和感なく並ぶ力作。
町のはずれの古い映画館で、ロマンティックな映画をみているような、そんな気分になります。
わたしの趣味の範囲でスチュワート/ガスキンを連想してしまう "Starfish" が、デビューアルバムの選にもれたのは、ちょっと残念。
最後に「日本盤のみのボーナストラック」として(日本盤しか出てないのだけど)、日本でだけ同じレーベルのハイ・ラマズによるリミックスが入っています。
このアルバムのプロモーションで来阪したスワン・ダイヴの店頭無料ミニコンサートを見た翌日、ハイ・ラマズのライヴ会場で二人をお見かけしました。
「きのう、レコード店に見に行ったんですよ」と声をかけたら、「おー、変わった名前のひとですね」と覚えててくれました。きのうのきょうやったからね。
サインをいただいたときに、ファーストネームを告げると、モリーさんが「変わってるけど、素敵なお名前ですね」と言うてくれはったのでした。
そんなわけで、いただいたサインでは、わたしのファースト・ネームが「!」と波下線付きで、2回も連呼されてます。
今作のライナーノートは、リード・ヘイスティングという人のセッション・レポートのようなエッセイのみで、潔いです。

 

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(c) 2000 Kijima, Hebon-shiki