ワイヤーは、1977年にデビューし、1980年からの活動休止を経て、1985年の再開以降、断続的に活動を続けているイギリスのバンドです。
ロンドン・パンク最盛期に登場しましたが、当初から、紋切型を避ける醒めた姿勢を持っていました。
パンク以後の、スタイルにとらわれない自由な表現が試みられた「ポストパンク」期の先駆的な存在だったと思います。
このページでは、最初の4年間に残した発掘音源(デモ録音、ライヴ録音、ラジオ放送用セッションなど)を整理してみます。
レアトラック集 "BEHIND THE CURTAIN" 発売時に、コピー誌として作成した「ヘボン式」第3号(1995年11月20日発行)を元に、大幅に改訂しました。
もともと、"BEHIND THE CURTAIN" のクレジットへの疑問から作成したものでしたが、今回、まとめ直す過程で、Web上で新たに資料を見つけました。
ワイヤーの評伝 "WIRE... EVERYBODY LOVES A HISTORY"(SAF Publishing、1991年)の著者、ケヴィン・S・エデン氏による
"WIRE 1977-79" です。
マイク・ソーンらが参加する "The Stereo Society" のページに掲載されたこの記事は、疑問を解消するとともに、多くのエピソードを伝えてくれています。
改訂は、"TURNS AND STROKES"(1998年発売)について追加するだけにするつもりでしたが、この文章から得た情報も加えることにしました。
クレジットやCDのライナーにない情報の多くは、下記のページに掲載されたケヴィン・S・エデン氏の
"WIRE 1977-79" に負うものであることをお断りしておきます。
▼The Stereo Society
http://www.stereosociety.com/
※"Home" > "Artists" > "Wire" > "To Wire 1977-79, by Kevin Eden"
[参考資料]
・Kevin S. Eden "WIRE: EVERYBODY LOVES A HISTORY" (SAF Publishing,
1991)
・George Gimarc "PUNK DIARY 1970-1979" (St. Martin's Press, 1994)
・Tony Bacon "LONDON LIVE" (Miller Freeman Books, 1999)
・Kevin Eden "Wire 1977-79" (Stereo Society (web), ????)
・きじまこう 「Wire: BEHIND THE CURTAIN」 (「ヘボン式」第3号、1995年11月20日)
発掘音源のレコーディングデータを整理するにあたり、この時期のワイヤーの活動について、簡単にふりかえってみます。
1976年8月
● コリン・ニューマン、ブルース・ギルバート、ジョージ・ジル、グレアム・ルイス、ロバート・ゴートゥベッドの5人で、ワイヤーとして活動を開始。 1977年2月
1977年4月
1977年7月
1977年9月
1977年11月
1978年2月
1978年6月
1978年9月
1979年1月
1979年7月
1979年9月
1979年10月
1980年2月
1981年7月
1981年9月
1983年3月
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1. Lowdown
2. 12XU
Tracks 4-5 of omnibus live lp "THE ROXY, LONDON WC2 (Jan-Apr 77)" (Harvest SHSP 4069), July 1977
Tracks 1-2 of German compilation lp "AND HERE IT IS... AGAIN... WIRE" (Sneaky Pete Recs/EMI Electrola 334882), February 1985
Track 1 ("12XU" only) of compilation lp "ON RETURNING (1977-1979)" (EMI SHSP 4127), July 19893. Mary Is A Dyke (Gilbert/Gill/Gotobet/Lewis/Newman)
4. Too True
5. Just Don't Care
6. TV
7. New York City
8. After Midnight (J.J. Cale)
Tracks 1-6 of lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978" (EMI CDGO 2066), 1995
Tracks 32-37 of cd (Japanese edition) "PINK FLAG" (Toshiba EMI TOCP 8726), October 25, 1995
「ロキシー」は、コベント・ガーデン地区ニールストリートに、1976年12月にオープンしたライヴハウスです。ワイヤーは、1977年2月24日(1月説もあります)に、ジャムの前座として、「ロキシー」で初めて演奏していますが、当時の店側の評価は、「際立った個性がない」というものだったそうです。 ジョージ・ジルが、自分のバンド、ベアーズを結成するために2月末に脱退したことにより、コリン・ニューマン、ブルース・ギルバート、グレアム・ルイス、ロバート・ゴートゥベッドの4人は、それまでとはちがった方向性をもった曲を作りはじめます。この新しいレパートリーが認められ、1977年4月1日と2日にわたって「ロキシー」で行われたパンク・フェスティバルに出演することになります。4人になってからの最初のライヴでもあります。
このとき、ワイヤーは、「ロキシー」に出演しているパンクバンドを録音して、"LIVE AT C.B.G.B." のようなオムニバスアルバムを作ろうとしていたEMIのプロデューサー、マイク・ソーンと初めて出会っています。
2日間の出演で、ワイヤーが演奏したのは、17曲。このうち、"PINK FLAG" に収録されることになるレパートリー、"Lowdown" と "12XU" の2曲が、オムニバスアルバム "THE ROXY, LONDON WC2" に収録されています。
さらに、1995年発売のレアトラック集 "BEHIND THE CURATIN" で、未発表曲の6曲があきらかになっています。この他に演奏されたのは、"The Commercial"、"Strange"、"Brazil"、"It's So Obvious"、"Three Girl Rhumba"、"Straight Line"、"Feeling Called Love"、"Mr. Suit"、"Glad All Over"。カバー曲の "Glad All Over" をのぞき、"PINK FLAG" 収録曲です。"Mary Is A Dyke"、"TV"、"After Midnight"(J.J.ケイルのカバー)は、活動初期からのレパートリーで、1976年8月に、親交のあったモーターズのニック・ガーヴェイ(スネイクスとして、1977年1月に出したシングル "Teenage Head" には、ゴートゥベッドが参加している)のスタジオを借りて録音したデモテープにも収録されているらしい。
このデモテープは未発表のままですが、"PINK FLAG" に収められた "It's Obvious"、"Feeling Called Love" の他、"Prove Myself"、"Bad Night At The Lion"、"Outside The Law"、"Gimme Your Love"、"Midnight Train"、"I'm Lost"、"Johnny Brown"、 "Bitch"、"Roadrunner" といった曲が収められているそうです。"THE ROXY, LONDON WC2 (Jan-Apr 77)" (Harvest SHSP 4069) (1977年7月発売)
SIDE 1
Slaughtert And The Dogs
1. Runaway
2. Boston Babies
The Unwanted
3. Freedom
Wire
4. Lowdown
5. 12XU
The Adverts
6. Bored TeenagersSIDE 2
Johnny Moped
7. Hard Loving Man
Eater
8. Don't Need It
9. 15
X-Ray Spex
10. Oh Bondage! Up Yours!
Buzzcocks
11. Breakdown
12. Love Battery
1. Pink Flag
Track 7 of lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978" (EMI CDGO 2066), 1995
Track 38 of cd (Japanese edition) "PINK FLAG" (Toshiba EMI TOCP 8726), October 25, 1995
1977年4月の「ロキシー」での演奏に惹かれたEMIのマイク・ソーンは、オムニバスアルバム "THE ROXY, LONDON WC2 (Jan-Apr 77)" のための打ち合わせの席で、ワイヤーに、EMIとの契約を打診、デモレコーディングをセッティングします。 契約のためのデモレコーディングは、1977年5月4日に行われました。この日、録音された "The Commercial"、"Mr. Suit"、"Pink Flag" の3曲の中から、"Pink Flag" が、1995年のデモ録音集 "BEHIND THE CURTAIN" に収録されています。
"BEHIND THE CURTAIN" には、1977年4月4日録音と記されています。契約日やアルバム制作時期から判断して、おそらく契約のためのデモ録音であろうとは予想していましたが、3日後の録音という記載には疑問を感じていませんでした。ワイヤーとマイク・ソーンが、4月1日に初めて出会ったことは知りませんでしたので、既に契約の打診はあったのだと考えていたからです。4月1日に初めて出会ったのだとすれば、ケヴィン・S・エデン氏の "Wire 1977-79" にあるように、1977年5月4日が順当な日付であるように思われます。デモレコーディングは、5月25日と8月12日にも行われ、"Reuters"、"Different To Me"、"Ex-Lion Tamer"、"Mannequin"、"Champs"、"Start To Move"、"106 Beats That"、"Fragile"、"Surgeon's Girl"、"Field Day For The Sundays" が録音されたらしい。いずれも、"PINK FLAG" に収録されることになる曲です。これらは、契約前のものですが、ファーストアルバムの制作をにらんでのものだったのではないかと推測しています。
デモが認められ、ワイヤーは、1977年9月9日に、EMIと契約します。
EMIは、当初、まずはシングル盤の制作を要請してきたそうですが、バンドの意向により、「飽きてしまわないうちに」その時点でのレパートリーをアルバム化することになります。1977年9月から10月にかけてアルバムのための正式なレコーディングが行われ、デビューアルバム "PINK FLAG" が1977年11月に発売されました。アルバムにわずかに先行して、シングル盤 "Mannequin" が発売されていますが、収録されているのは、いずれもアルバム収録曲です。このアルバムは、当時、日本で発売されませんでしたが、NHK-FMで渋谷陽一氏が担当していた番組「ヤング・ジョッキー」で紹介されたのを聞きました。渋谷氏は、一風変わった知性的なパンクバンドということで紹介しようとされたようですが、「ピンク・フロイドを出しているハーヴェスト・レコードから、ピンク・フラッグというバンドがデビューしました」と、バンド名とアルバムタイトルをまちがえて、紹介していました。情報がなかったことを伝える失敗ですが、日本で発売される予定もない新しいバンドのレコードを、音だけ聞いて紹介しようとしたことを示しているとも言えます。ワイヤーを聞く機会を作ってくれたことに、感謝しています。
私事になりますが、実のところ、当時、新しい音として話題になっていたロンドンパンクのほとんどに対して、サイケデリックロック/プログレッシヴロック少年だったわたしは、「かったるく」感じていました。パンクで「すごい」、「面白い」と思ったのは、ワイヤーが初めてでした。「ハーヴェストだからかなぁ」と若干自嘲気味に思いましたが、正直な感想でした。1曲目の "Reuters" のイントロが、また、ピンク・フロイドのデビューアルバム "THE PIPER AT THE GATES OF DAWN"(1967年8月発売)の1曲目 "Astronomy Domine" のイントロを思わせるものだったことも面白い(ワイヤー自身は、比較されるまで、ピンク・フロイドの "THE PIPER AT THE GATES OF DAWN" を聞いたことがなかったと、セカンドアルバム発表時のインタビューで語ってましたが)。
(セックス・ピストルズが「すごい」と思ったのは、解散後、ツトム・ヤマシタの「GO」プロジェクトをレポートしたNHK総合テレビの番組で、ジョニー・ロットンが身体を痙攣させて歌っている映像を見てから、です。あの番組、「NHKアーカイブス」で再放送してくれへんかなぁ。)"Mannequin / Feeling Called Love / 12XU" (Harvest HAR 5144) (1977年11月発売)
SIDE A
1. MannequinSIDE B
2. Feeling Called Love
3. 12XU"PINK FLAG" (Harvest SHSP 4069) (1977年11月発売)
SIDE 1
1. Reuters
2. Field Day For The Sunday
3. Three Girl Rhumba
4. Ex-Lion Tamer
5. Lowdown
6. Start To Move
7. Brazil
8. It's So Obvious
9. Surgeon's Girl
10. Pink FlagSIDE 2
11. The Commercial
12. Straight Line
13. 106 Beats That
14. Mr. Suit
15. Strange
16. Fragile
17. Mannequin
18. Different To Me
19. Champs
20. Feeling Called Love
21. 12XU
1. Love Ain't Polite
2. Oh No Not So
3. It's The Motive
4. Practice Makes Perfect
5. Sand In My Joints
6. Stablemate
7. I Feel Mysterious Today
8. Underwater Experiences
Tracks 8-15 of lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978" (EMI CDGO 2066), 1995
Tracks 24-31 of cd (Japanese edition) "PINK FLAG" (Toshiba EMI TOCP 8726), October 25, 1995
"PINK FLAG" 発売の翌月に行われた次のアルバムのためのデモ録音です。 "BEHIND THE CURTAIN" には、1977年5月14日録音と記されています。しかし、この記述には発売当初から疑問がありました。素朴な考えかもしれませんが、セカンドアルバムに収録された曲が3曲("Practice Makes Perfect"、"Sand In My Joints"、"I Feel Mysterious Today")も含まれていることから、セカンドアルバムの前に録音されたものと考えるのが順当と考えたからです。とりわけ、"Practice Makes Perfect" は、「パンク以後」への分岐点を明確に示した作品であり、"PINK FLAG" 制作の半年前に曲として完成していながら、発表を遅らせたとは考えにくい。また、ケヴィン・S・エデン氏の評伝 "EVERYBODY LOVES A HISTORY" には、"Love Ain't Polite" や "Stablemate" が「ピンク・フラッグの息子」であるとのコリン・ニューマンの発言も引かれています。新しく作ったが、"PINK FLAG" と同じようなものなので、没にしたということだと思います。
"I Feel Mysterious Today" が、"PINK FLAG" 収録の "Reuters" と同時期に作られたものであったり、やはり同時期に作られた "Kidony Bingos" が 1988年になって初めてレコード化されたりといったこともあるので、1977年5月14日録音の可能性もまったくなかったわけではなかったのですが、1978年のまちがいではないかと疑っていました。
ケヴィン・S・エデン氏の "Wire 1977-79" には、これらの曲を含むデモ録音が、1977年12月14日に行われたことが記されています。それがこれだと断定することはわたしにはできませんが、そのように考えたほうが順当であるように思われます。"Oh No Not So"、"It's The Motive" は、"Love Ain't Polite" や "Stablemate" と同じく、セカンドアルバムには採用されなかった曲。"Underwater Experiences" は、この時点ではお蔵入りになっていますが、ライヴでは演奏されていたようで、かなり変貌してしまったバージョンを、ライヴアルバム "DOCUMENT AND EYEWITNESS" (1981年7月発売)で聞くことができます。この曲の場合は、「ピンク・フラッグの息子」だったからではなく、新しい方向性を持っているものの、作品として固まっていなかったということではないかと思います。
日本盤CDでは、1977年5月14日という記述にもとづいて、"PINK FLAG" に追加されています。内容的には、"CHAIRS MISSING" に収録したほうがよかったように思います。
ケヴィン・S・エデン氏の "Wire 1977-79" によれば、この8曲のほかに、セカンドアルバムに収録された "I Am The Fly"、"French Film Blurred"、"Too Late"、"Heartbeat" や1978年1月のBBC出演時に演奏した未発表曲 "Culture Vultures" が、1977年12月14日に録音されています。
セカンドアルバムにも収録されている "I Am The Fly" は、1978年2月に、先にシングルとして発売されています(B面は "PINK FLAG" 収録の "Ex-Lion Tamer")。未確認ですが、アルバムと同じバージョンでしょうか。別バージョンだという話は聞いたことがないのですが。
"I Am The Fly / Ex-Lion Tamer" (Harvest HAR 5151) (1978年2月発売)
SIDE A
1. I Am The FlySIDE B
2. Ex-Lion Tamer
1. Practice Makes Perfect
2. I Am The Fly
3. Culture Vulture
4. 106 Beats That
Tracks 1-4 of ep "THE PEEL SESSION (18.1.78)" (Strange Fruit SFPS 041), December 1987
Tracks 1-4 of lp "THE PEEL SESSIONS ALBUM" (Strange Fruit SFRCD 108), January 1990
ベテラン、新人を問わず、「旬」の音を、番組用のオリジナル録音で放送することで知られているBBCの名物ラジオ番組「ジョン・ピール・ショウ」に初めて出演したときの録音です。放送は、1978年1月31日。2月に発売される "I Am The Fly" を演奏していて、プロモーションの目的は一応果たしていますが、話題(だったはず)のデビューアルバムからは、"106 Beats That" の1曲のみ、あとの2曲は新曲というヘソ曲がりなことをしています。
当時、BBCラジオを聞いていた(ライヴに行く機会がなかった)ワイヤーのファンは、"Practice Makes Perfect" や "I Am The Fly" を聞いて、度肝を抜かれたのとちゃうかな、と勝手な想像をしています。"Culture Vulture" は、"Practice Makes Perfect" と同様、1977年12月14日の "CHAIRS MISSING" のためのデモ録音で演奏されているようですが、それは発掘されていません。いまのところ、このBBC録音でのみ、耳にすることができます。
この録音は、ジョン・ピール・セッション発掘シリーズの一枚として、1987年に発売されました。当初は、「1セッションで、アナログEP1枚」という発売形態がえらくかっこよく思えたものです。1990年には、3回の出演をすべて網羅したCDが発売されています。"THE PEEL SESSION (18.1.78" (Strange Fruit SFPS 041) (1987年12月発売)
SIDE A
1. Practice Makes Perfect
2. I Am The FlySIDE B
3. Culture Vulture
4. 106 Beats That
1. Dot Dash
2. Options R
3. From The Nursery
4. Finistaire
5. No Romans
6. Another The Letter
Tracks 16-21 of lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978" (EMI CDGO 2066), 1995
Tracks 19-24 of cd (Japanese edition) "CHAIRS MISSING" (Toshiba EMI TOCP 8727), October 25, 1995
"BEHIND THE CURTAIN" のライナーには、セカンドアルバム "CHAIRS MISSING" のためのデモ録音が26曲あることが記されています。1977年12月14日の録音(13曲、そのうち8曲を発掘)に続いて、2回目のデモ録音が、1978年4月14日に行われています。残りは、13曲ということになります。その中から、6曲が発掘されています。 "Dot Dash" と "Options R" は、"CHAIRS MISSING" に先行して、シングル盤用に選曲されました。セカンドアルバムには収録されていません。シングル盤として発売された録音は、"PINK FLAG" のCD(1993年のデジタルリマスター版、1995年の日本盤はこれを元にしています)に、ボーナストラックとして追加収録されています。
(1987年に発売された "PINK FLAG" のCDには、何故か、"Options R" だけが追加収録されていました。)"From The Nursery"、"Another The Letter" は、"CHAIRS MISSING" 収録曲。アルバムでは、マイク・ソーンによるきらきらしたキーボードが印象的な "Another The Letter" は、のちに「ドリル」と名付けられるワイヤーの特徴的なリズムがはっきりと聞き取れるものになっています。"Finistaire" は、アルバム収録曲 "Marooned" の初期バージョンです(ケヴィン・S・エデン氏の "Wire 1977-79" に "Mercy" の初期バージョンとあるのは、誤記。弘法も筆のあやまりか)。
"No Romans" は、没になった曲です。ケヴィン・S・エデン氏の "Wire 1977-79" によれば、この日に録音されたのは、ほかに、1977年12月14日に録音したものをさらに手直ししたらしい "French Film Blurred"、"Marooned"、"Outdoor Miner"、"Being Sucked In Again"、"Men 2nd" のセカンドアルバム収録曲5曲に、サードアルバム "154" に収録されることになる "Indirect Enquiries"、そして、"Chairs Missing" という曲。"Chairs Missing" は、アルバムタイトルですが、そこには入っていません。まったくの未発表曲なのか、タイトルが変更されて発表されているのか、果たして。別タイトルでセカンドアルバムに収録されているとしたら、あとは "Used To" しか残っていないのですが・・・。
アルバム発売後、もっとも親しみやすいメロディを持つ "Outdoor Miner" は、レコード会社の要請でシングルとして発売されることになります。ところが、この曲は、わずか、1分44秒。シングルとして発売するには、もう少し長くないと・・・、という訳で、間奏部分を水増しし、キーボードで華やかさを演出したシングルバージョンで、1979年1月に発売されています(B面は、"CHAIRS MISSING" から "Practice Makes Perfect")。このバージョンは、1989年発売のベスト盤 "ON RETURNING (1977-1979)"に収録されたのち、"CHAIRS MISSING" の1993年デジタルリマスター版CDに、ボーナストラックとして追加されました。
"Dot Dash / Options R" (Harvest HAR 5161) (1978年7月発売)
SIDE A
1. Dot DashSIDE B
2. Options R"CHAIRS MISSING" (Harvest SHSP 4093) (1978年9月発売)
SIDE 1
1. Practice Makes Perfect
2. French Film Blurred
3. Another The Letter
4. Men 2nd
5. Marooned
6. Sand In My Joints
7. Being Sucked In Again
8. HeartbeatSIDE 2
9. Mercy
10. Outdoor Miner
11. I Am The Fly
12. I Feel Mysterious Today
13. From The Nursery
14. Used To
15. Too Late"Outdoor Miner / Practive Makes Perfect" (Harvest HAR 5172) (1979年1月発売)
SIDE A
1. Outdoor Miner (single version)SIDE B
8. Practive Makes Perfect
1. The Other Window
2. Mutual Friend
3. On Returning
4. Indirect Enquiries
Tracks 5-8 of lp "THE PEEL SESSIONS ALBUM" (Strange Fruit SFRCD 108), January 1990
BBCのラジオ番組「ジョン・ピール・ショウ」への2回目の出演。放送は、1978年10月3日。発売されたばかりのアルバム "CHAIRS MISSING" のプロモーションにうってつけのタイミングですが、ヘソ曲がりで天邪鬼なワイヤーは、まったくの新曲ばかりを演奏。レコード会社の困惑と怒りが、目に見えるようです。 "CHAIRS MISSING" のためのデモ録音で既に演奏されていたらしい "Indirect Enquiries" を含め、全曲が、翌年発売の "154" に収録されます。ただし、アレンジはかなりちがっており、「チェアーズ・ミッシングの息子」とでも呼びたいような、ソリッドでありながら軽快でポップな印象です。
"The Other Window"、"Mutual Friend"、"On Returning" は、"BEHIND THE CURTAIN" で発表された "154" のためのデモ録音には含まれていませんので、あわせて聞くと、"154" の初期形を想像することができるかもしれません。
1990年に発売されたジョン・ピール・セッションを集めたCDに、4曲とも収録されています。
1. 40 Versions
2. Blessed State
3. A Touching Display
4. Once Is Enough
5. Stepping Off Too Quick
6. Indirect Inquiries
7. Map Ref. 41N 93W
8. A Question Of Degree
9. Two People In A Room
10. Former Airline
Tracks 22-31 of lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978" (EMI CDGO 2066), 1995
Tracks 25-28 of cd (Japanese edition) "CHAIRS MISSING" (Toshiba EMI TOCP 8727), October 25, 1995
Tracks 19-24 of cd (Japanese edition) "154" (Toshiba EMI TOCP 8728), October 25, 1995
1979年9月発売のサードアルバム "154" のためのデモ録音です。未発表曲の "Stepping Off Too Quick"(海賊盤では、"Not About To Die" として知られていたらしい)、先行シングルとして発売された "A Question Of Degree"、"Former Airline" をのぞく、7曲が、"154" に収められた曲です。 先行シングルとして発売された "A Question Of Degree" と "Former Airline" は、アルバム "154" には収録されていません。シングル盤として発売された録音は、"CHAIRS MISSING" のCD(1993年のデジタルリマスター版、1995年の日本盤はこれを元にしています)に、ボーナストラックとして追加収録されています。
(1987年に発売された "CHAIRS MISSING" のCDにも追加収録されていました。)ロバート・ゴートゥベッドが、自分の手帳に記していたその時点までのライヴ回数をタイトルにしたとされているアルバム "154" には、初回盤20,000枚に、メンバーのソロ録音を収録した4曲入りの7インチEPが付録としてついていました。ワイヤーから、付録EPの企画を打診されたレコード会社は、3週間スタジオを提供しますが、ここで録音したもので、EPに収録されたのは、ゴートゥベッドの "Song I" のみ。
ニューマンは、ゴートゥベッド、デズモンド・シモンズの協力で、ソロアルバムのためのデモテープを制作し(1980年10月発売の最初のソロアルバム "A-Z" のCDに追加収録されたデモ録音2曲はこのときのものかもしれません)、EPには、自宅で録音した「まったくの冗談」を提供しています。ゴートゥベッドの "Song I" は、ニューマンのデモテープ制作のついでに録音したものらしい。ルイスは、ラジオ番組のコラージュを元にしたもの。ギルバートは、提供されたスタジオで録音した "Long Lost Life" を没にし、代わりにやはり自宅で録音したエレクトリックノイズを、EPに提供しました。ナンギなひとたちです。
このEPの4曲は、"154" のCD(1987年版および1993年のデジタルリマスター版)に追加収録されています。ちなみに、ギルバートが没にした "Long Lost Life" は、ルイス&ギルバートが1981年10月に発売した "DOME 2" に収録されました。アルバム発売後の1979年11月、"Map Ref. 41N 93W" がシングル盤として発売されます。B面に収録されたアルバム未収録曲 "Go Ahead" は、マイク・ソーン抜きで制作された、初のセルフプロデュース作品です。"Go Ahead" は、1987年版CDでは "CHAIRS MISSING" に、1993年のデジタルリマスター版では "154" に、ボーナストラックとして収録されています。
ワイヤーは、続いて、"Go Ahead" と同時に録音した "Our Swimmer" と "Midnight Bahnhof Cafe" をシングル盤として発売しようとしますが、EMIはそれらを発売することを拒否。結局、1980年2月に、EMIとの契約が終了、バンドとしての活動も、1980年2月29日のロンドン「エレクトリック・ボールルーム」でのライヴを最後に、休止状態に入ることになります。EMIに拒否された "Our Swimmer" と "Midnight Bahnhof Cafe" は、1981年9月に、ラフトレードから発売されています(2曲とも、"DOCUMENT AND EYEWITNESS" の1991年発売のCD に、追加)。
"A Question Of Degree / Former Airline" (Harvest HAR 5187) (1979年7月発売)
SIDE A
1. A Question Of DegreeSIDE B
2. Former Airline"154" (Harvest SHSP 4105) (1979年9月発売)
SIDE 1
1. I Should Have Known Better
2. Two People In A Room
3. The 15th
4. The Other Window
5. Single K.O.
6. A Touching Display
7. On ReturningSIDE 2
8. A Mutual Friend
9. Blessed State
10. Once Is Enough
11. Map Ref. 41N 93W
12. Indirect Enquiries
13. 40 VersionsLimited free e.p. (Harvest PSR 444) *Contained with initial 20,000 copies. SIDE A
Robert Gotobed
1. Song I
Colin Newman
2. Get Down (Part I & II)SIDE B
Graham Lewis
3. Let's Panic Later
Bruce Gilbert
4. Small Electric Piece"Map Ref. 41N 93W / Go Ahead" (Harvest HAR 5192) (1979年10月発売)
SIDE A
1. Map Ref. 41N 93WSIDE B
2. Go Ahead"Our Swimmer / Midnight Bahnhof Cafe" (Rough Trade RTO 79) (1981年9月発売)
SIDE A
1. Our SwimmerSIDE B
2. Midnight Bahnhof Cafe"BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978" (EMI CDGO 2066) (1995年発売)
1. Mary Is A Dyke
2. Too True
3. Just Don't Care
4. TV
5. New York City
6. After Midnight
7. Pink Flag8. Love Ain't Polite
9. Oh No Not So
10. It's The Motive
11. Practice Makes Perfect
12. Sand In My Joints
13. Stablemate
14. I Feel Mysterious Today
15. Underwater Experiences
16. Dot Dash
17. Options R
18. From The Nursery
19. Finistaire
20. No Romans
21. Another The Letter22. 40 Versions
23. Blessed State
24. A Touching Display
25. Once Is Enough
26. Stepping Off Too Quick
27. Indirect Inquiries
28. Map Ref. 41N 93W
29. A Question Of Degree
30. Two People In A Room
31. Former Airline
1. Heartbeat
Track 8 of "DOCUMENT AND EYEWITNESS" Disc 2 (12 inch EP) (Rough Trade ROUGH 29), 1981
活動休止後に発売された2枚組のライヴアルバム "DOCUMENT AND EYEWITNESS" に収録されたライヴ録音です。ロキシー・ミュージックの前座としてのツアーの一環だったらしい。
"Heartbeat" は、セカンドアルバム "CHAIRS MISSING" の収録曲です。
1. Go Ahead
2. Ally In Exile
3. Relationship
4. Underwater Experiences
5. Witness To The Fact
6. 2 People In A Room
7. Our Swimmer
Track 1-7 of "DOCUMENT AND EYEWITNESS" Disc 2 (12 inch EP) (Rough Trade ROUGH 29), 19818. Safe
9. Lorries
Track 1-2 of "TURNS AND STROKES" (Wire Mail Order WMO 4CD), 1996
活動休止後に発売されたライヴアルバム "DOCUMENT AND EYEWITNESS" は、33 1/3回転のLPと45回転のEPを組み合わせた変則的な2枚組でした。ロンドン、レスタースクエアにある「ノートルダム・ホール」で収録された7曲は、45回転EPのほうに収められています。
1979年9月に発売される "154" からの "2 People In A Room"、10月に発売されるシングルのB面 "Go Ahead"、同時期に録音されながら発売が遅れた "Our Swimmer" を初めとして、演奏当日は未発表だった曲ばかりです。"Underwater Experiences" は、セカンドアルバム "CHAIRS MISSING" のためのデモ録音に含まれていた曲ですが、発表されたものとしては、このライヴアルバムが初登場になります。
1996年に発売されたレアトラック集 "TURNS AND STROKES" に、同じ日のライヴから2曲が収録されています。"Safe" と "Lorries" は、どちらも、コリン・ニューマンが1982年1月に発表したソロアルバム "NOT TO" に収録されている曲です。
なお、"TURNS AND STROKES" を発売したワイヤー関係専門のレーベル Wire Mail Order は、2001年11月30日をもって、業務を停止し、"TURNS AND STROKES" を含むリリース作品は廃盤となっています。
1. Crazy About Love
Side A of ep "CRAZY ABOUT LOVE" (Rough Trade RTT 123), March 1983
Track 9 of lp "THE PEEL SESSIONS ALBUM" (Strange Fruit SFRCD 108), January 1990
天邪鬼なワイヤーの真骨頂とも言うべき演奏が、1979年9月18日の「ジョン・ピール・ショウ」で放送された "Crazy About Love" です。 「ジョン・ピール・ショウ」と言えば、発売前のレコードに収録される曲をアピールする絶好の機会だとされています。放送日の9月18日は、サードアルバム "154" 発売日の直前でした。とすれば、"154" 収録曲を4曲ばかり演奏するのが賢明です。「だから」、ワイヤーが用意したのは、新譜には含まれていない、まったくの新曲でした。
さらに、ワイヤーと言えば、21曲を収めたデビューアルバム "PINK FLAG" で明らかなように、「短い曲」を演奏するバンドだとされていました。「だから」、その新曲は、持ち時間いっぱいの、15分30秒の「長い曲」でした。
またもや、レコード会社の困惑と怒りが、目に見えるようです。この「配管」についての長い歌は、1979年11月のジャネット・コクラン・シアターや1980年2月のエレクトリック・ボールルームでのライヴで示されたコンセプチュアル・パフォーマンスと同じ種類の演奏だと思われます。
"Crazy About Love" は、1983年3月に、12インチシングルとして、発売されました。B面には、当時、EMIに発売を拒否されたためお蔵入りになった "Our Swimmer" の「速い」バージョンである "Second Length" と、やはり "Our Swimmer" を解体した "Catapult 30" の2曲が収められました。既に各自のソロ活動に入っていた1980年4月〜5月に録音されたものです。
"Crazy About Love" は、その後、ジョン・ピール・セッションを集めたCDに収録されました。B面の2曲は、1996年に発売されたレアトラック集 "TURNS AND STROKES" に収録されています。赤の背景に、緑の十字をあしらったこのCDのカバーデザインは、"Crazy About Love" のシングルのカバーデザインを流用したものです。"Crazy About Love / Second Length (Our Swimmer) / Catapult 30" (Rough Trade RTT 123) (1983年3月発売)
SIDE A
1. Crazy About LoveSIDE B
2. Second Length (Our Swimmer)
3. Catapult 30"THE PEEL SESSIONS ALBUM" (Strange Fruit SFRCD 108), (1990年1月発売)
1. Practice Makes Perfect
2. I Am The Fly
3. Culture Vulture
4. 106 Beats That5. The Other Window
6. Mutual Friend
7. On Returning
8. Indirect Enquiries9. Crazy About Love
1. A Panamanian Craze?
Track 3 of "TURNS AND STROKES" (Wire Mail Order WMO 4CD), 1996
1979年11月9日〜12日の4日間、ロンドンの小さな劇場「ジャネット・コクラン・シアター」で行われた "PEOPLE IN A ROOM" は、ロックバンドのライヴというよりも、コンセプチュアルなパフォーマンスショウといったほうが相応しいものだったようです。
アートスクールの協力を得て実施されたショウは、次の7部構成になっていました。1 Audienceバンドとしてのワイヤーの演奏が行われた6部の「Wire」以外は、各メンバーによる独立したパフォーマンスが行われました。
2 Tableau (Bruce Gilbert)
3 A Panamanian Craze? (Graham Lewis)
4 An Unlikely Occurence (Colin Newman)
5 "The Decorator" (Robert Gotobed)
6 Wire
7 Audienceタイトルから判断するに、1996年に発売されたレアトラック集 "TURNS AND STROKES" に収録された "A Panamanian Craze?" は、グレアム・ルイスのパフォーマンスのために用意されたもののようです。「ロック・マガジン」30号(1980年3月1日)に掲載された羽田明子氏によるロンドンレポート「FRONTLINE IN LONDON」によれば、ハイウェイを走る車から撮影された景色をスクリーンに映写し、照明と組み合わせて見せるというもので、バックには「ラジオの放送が流れる」とあります。ここに収められた断片的な言葉が散りばめられたインストゥルメンタル曲が、使われたのかどうかは不明です。
この "Crazy About Love" と同傾向の演奏は、聞くかぎりでは、グレアム・ルイスのソロではなく、ワイヤーのメンバーが参加しているように思います。羽田氏の同レポートによれば、1部と7部の「Audience」は、入場時と退場時の観客の姿をスクリーンに映写したものとのこと。ブルース・ギルバートの「Tableau」では、ギルバートがコップに注がれた水を観察しながら飲み干すという行為を繰り返す。ニューマンの「An Unlikely Occurence」では、15人のギタリストがぞろぞろとあらわれて、同じ音を鳴らしながら、歩き回る。この中には、モノクローム・セットのレスター・スクエアがいたそうです。ゴートゥベッドの 「"The Decorator"」は、ゴートゥベッド自身によるアクション・ペインティング。
(羽田氏のレポートにある、各部のタイトルについては、ケヴィン・S・エデン氏の "EVERYBODY LOVES A HISTORY" に掲載された当日のプログラムをあわせて参照し、修正しています。)
1. Remove For Improvement
2. The Spare One
3. Over My Head
Tracks 4-6 of "TURNS AND STROKES" (Wire Mail Order WMO 4CD), 1996
ジャネット・コクラン・シアターでの "PEOPLE IN A ROOM" の第6部「Wire」での演奏です(1979年11月10日のもの)。1996年に発売されたレアトラック集 "TURNS AND STROKES" で初めてリリースされたものですが、観客のひとりがカセットテレコで録音したものが元になっているようで、音質はよくありませんが、記事だけでしか知ることができなかった、伝説のショウの一部を、わずかなりともうかがうことができて、うれしい。 収録された "Remove For Improvement" は、 は、コリン・ニューマンが1982年1月に発表したソロアルバム "NOT TO" に収録されている曲です。"The Spare One" と "Over My Head" は、未発表のままでした。
当日は、これらの他に、BBCの「ジョン・ピール・ショウ」で披露した "Crazy About Love"、サードアルバム "154" 収録曲の "Two People In A Room"、"A Blessed State"、"On Returning"、「ノートルダム・ホール」での演奏が発掘されている "Underwater Experiences"、"Ally In Exile"、"Lorries"、"Our Swimmer" が演奏されたそうです。
1. 5/10
2. 12XU (fragment)
3. Underwater Experiences
4. Everythings Going To Be Nice
5. Piano Tuner (Keep Strumming Those Guitars)
6. We Meet Under Tables
7. ZEGK HOQP
8. Eastern Standard
9. Instrumental (Thrown Bottles)
10. Eels Sang Lino
11. Revealing Trade Secrets
12. And Then... / Coda
Tracks 1-12 of "DOCUMENT AND EYEWITNESS" Disc 1 (Rough Trade ROUGH 29), 198113. 12XU
14. Inventory
15. Ritual View
16. Part Of Our History
Tracks 7-10 of "TURNS AND STROKES" (Wire Mail Order WMO 4CD), 1996
活動休止前の最後のライヴとなった1980年2月29日(うるう年だったのか)の演奏を記録したものです。2枚組ライヴアルバム "DOCUMENT AND EYEWITNESS" の33 1/3回転のLPのほうに収められています。ユニークなのは、このLP盤の目的が演奏を聞かせることにはなく、この日の出来事を記録として伝えることにある、ということです。具体的にはどういうことかというと、ところどころに、後日録音された会話がはさみこまれていたりするのです。ブツっと唐突に、あるいは演奏に被って。 この日の演奏も、ジャネット・コクラン・シアターでのショウと同様、コンセプチュアル・パフォーマンスの色合いが濃いものだったようで、各曲には、その様子についてのメモが添えられています。例えば、"ZEGK HOQP" は、前座をつとめたドイツのバンド、D.A.F.のメンバーを含む、12人のパーカッション奏者が、新聞紙をかぶって、演奏したものだとか。
"12XU"、"Underwater Experiences" をのぞき、この最後のライヴのために用意された新曲ばかりです。ライヴアルバムの謝辞には、スウェル・マップスのリチャード・アールとエピック・サウンドトラックスの名があります。どのように関わったのか興味深いところです。
1996年に発売されたレアトラック集 "TURNS AND STROKES" で、4曲が追加されました。"12XU" は、"DOCUMENT AND EYEWITNESS" にも収録されていますが、始まった途端に「会話」がはさみこまれ、その後は間奏に飛び、さらに突然、エンディングになるという、断片での収録でした。
"Inventory" は、コリン・ニューマンの最初のソロアルバム "A-Z"(1980年10月発売) に収録された曲。"We Meet Under Tables" は、同じくニューマンが1982年1月に発表した3枚目のアルバム "NOT TO" で再演されています。
"And Then..." は、ブルース・ギルバートとグレアム・ルイスのデュオ、ドームのアルバム "DOME"(1980年7月発売)で、"Ritual View" は同じくドームの "DOME 2"(1981年10月発売)で再演されています。
"DOCUMENT AND EYEWITNESS"(Rough Trade ROUGH 29) (1981年7月発売)
Electric Ballroom, February 29, 1980 SIDE 1
1. Mannequin
1. 5/10
2. 12XU (fragment)
3. Underwater Experiences
4. Everythings Going To Be Nice
5. Piano Tuner
(Keep Strumming Those Guitars)
6. We Meet Under TablesSIDE 2
7. ZEGK HOQP
8. Eastern Standard
9. Instrumental (Thrown Bottles)
10. Eels Sang Lino
11. Revealing Trade Secrets
12. And Then...
13. CodaThe Notre Dame Hall, July 19, 1979 SIDE 1
1. Go Ahead
2. Ally In Exile
3. Relationship
4. Underwater ExperiencesSIDE 2
5. Witness To The Fact
6. 2 People In A Room
7. Our Swimmer
8. Heartbeat"TURNS AND STROKES" (Wire Mail Order WMO 4CD) (1996年発売)
1. Safe
2. Lorries
3. A Panamanian Craze?
4. Remove For Improvement
5. The Spare One
6. Over My Head7. 12XU
8. Inventory
9. Ritual View
10. Part Of Our History
11. Second Length (Our Swimmer)
12. Catapult 30
[蛇足 ボーナストラック再考]
オリジナルアルバムのCDは、イギリスでは、1987年に発売されたのち、1993年にデジタルリマスタリングしたものが発売されています。
1993年版では、ボーナストラックの選曲も改訂され、公式に発売されたものはすべて網羅されましたが、振り分けかたには、少し疑問があります。
アルバムとそれ以外の録音を、いっしょに収録することに無理はつきものですが、できれば、時期の近いものがいいと思います。
(余談ですが、1987年版CD "CHAIRS MISSING" には音が縒(よ)れたようなミスがありました。CDを買い始めて間もない頃で、泣きそうになりました。)
1995年に日本で発売されたCDは、1993年版を元に、レアトラック集 "BEHIND
THE CURTAIN" 収録曲を振り分けて追加収録したものです。
ただし、既に記したように、"BEHIND THE CURTAIN" での録音日の誤記を信用した結果、不自然な振り分けになってしまいました。
デモやアウトテイクといった発掘音源は、新曲のように楽しむことも可能ですが、基本的には参考資料だと思います。
とくにボーナストラックという形で追加される場合は、まずは決定稿を聞き、気が向けば、未定稿や異稿を聞くという聞き方が想定できます。
ワイヤーの発掘音源を、「できれば、いっしょに聞きたい同時期のアルバム」ごとに並べてみました。
収録時間は考慮していません。
"PINK FLAG"
[Recorded live at the Roxy, London on April 1, 1977]
1. Lowdown
2. 12XU
3. Mary Is A Dyke (Gilbert/Gill/Gotobet/Lewis/Newman)
4. Too True
5. Just Don't Care
6. TV
7. New York City
8. After Midnight (J.J. Cale)[Demo recorded on May 4, 1977]
9. Pink FlagTracks 1-2: taken from omnibus live lp "THE ROXY, LONDON WC2 (Jan-Apr 77)", 1977
Tracks 3-9: taken from lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978", 1995
"CHAIRS MISSING"
[Singles]
1. Dot Dash
2. Options R (Harvest HAR 5161)
3. Outdoor Miner (single version) (Harvest HAR 5172)[THE JOHN PEEL SHOW" - Recorded on January 18, 1978]
4. Practice Makes Perfect
5. I Am The Fly
6. Culture Vulture
7. 106 Beats That[Demo recorded on December 14, 1977]
8. Love Ain't Polite
9. Oh No Not So
10. It's The Motive
11. Practice Makes Perfect
12. Sand In My Joints
13. Stablemate
14. I Feel Mysterious Today
15. Underwater Experiences[Demo recorded on April 14, 1978]
16. Dot Dash
17. Options R
18. From The Nursery
19. Finistaire
20. No Romans
21. Another The LetterTracks 1-2: taken from the remastered CD version of "PINK FLAG", 1993
Track 3: taken from the remastered CD version of "CHAIRS MISSING", 1993
Tracks 4-7: taken from lp "THE PEEL SESSIONS ALBUM", 1990
Tracks 8-21: taken from lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978", 1995
"154"
[Singles]
1. A Question Of Degree
2. Former Airline
3. Go Ahead
4. Our Swimmer
5. Midnight Bahnhof Cafe
6. Second Length (Our Swimmer)
7. Catapult 30["THE JOHN PEEL SHOW" - Recorded on September 20, 1978]
8. The Other Window
9. Mutual Friend
10. On Returning
11. Indirect Enquiries[Demo recorded on December 11, 1978]
12. 40 Versions
13. Blessed State
14. A Touching Display
15. Once Is Enough
16. Stepping Off Too Quick
17. Indirect Inquiries
18. Map Ref. 41N 93W
19. A Question Of Degree
20. Two People In A Room
21. Former Airline[Free EP contained with "154" intial 20,000 copies]
22. Robert Gotobed: Song I
23. Colin Newman: Get Down (Part I & II)
24. Graham Lewis: Let's Panic Later
25. Bruce Gilbert: Small Electric PieceTracks 1-2: taken from the remastered CD version of "CHAIRS MISSING", 1993
Tracks 3: taken from the remastered CD version of "154", 1993
Tracks 4-5: taken from CD version of "DOCUMENT AND EYEWITNESS", 1991
Tracks 6-7: taken from the lp "TURNS AND STROKES", 1996
Tracks 8-11: taken from the lp "THE PEEL SESSIONS ALBUM", 1990
Tracks 12-21: taken from the lp "BEHIND THE CURTAIN: EARLY VERSIONS 1977 & 1978", 1995
Tracks 3: taken from the remastered CD version of "154", 1993
"DOCUMENT AND EYEWITNESS Disc 2: NOTRE DAME HALL"
[Recorded live at the Notre Dame Hall, London on July 19, 1979]
1. Safe
2. LorriesTrack 1-2: taken from the lp "TURNS AND STROKES", 1996
"DOCUMENT AND EYEWITNESS Disc 1: ELECTRIC BALLROOM"
[Recorded live at the Electric Ballroom, London on February 29, 1980]
1. 12XU
2. Inventory
3. Ritual View
4. Part Of Our History[The Janet Cochrane Theatre "PEOPLE IN A ROOM"/ rehearsal recorded on circa November 1979]
5. A Panamanian Craze?[The Janet Cochrane Theatre "PEOPLE IN A ROOM"/ part 6 "Wire", recorded on November 1979]
6. Remove For Improvement
7. The Spare One
8. Over My Head["THE JOHN PEEL SHOW" - Recorded on September 11, 1979]
9. Crazy About LoveTracks 1-8: taken from the lp "TURNS AND STROKES", 1996。
Track 9: taken from the lp "THE PEEL SESSIONS ALBUM", 1990
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