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ロバート・ワイアットよもやま話
TWO OR THREE THINGS I KNOW ABOUT ROBERT WYATT
【2000.05.30.】【2005.12.04.追記】 追加・修正内容については、末尾をご覧ください。

ロバート・ワイアット氏については、マイケル・キングの『ロング・ムーブメンツ』(1994年、邦訳1997年)という本があります。
発言と活動記録と雑誌記事を、日付順にまとめた、とても詳しい年代記です。
ワイアット氏のこれまでの音楽活動について知りたいことは、おおむね、そこで知ることができます。
目次も索引もないのが珠に傷なので、勝手に作ってみよう!という壮大な計画もあるにはあるのですが、自信がない。
代わりと言うてはなんですが、ワイアット氏にまつわる、些細なあれこれをまとめてみました。
 
 
『BBCラジオ1 ライヴ・イン・コンサート/マッチング・モウル編』正誤表
「1974年9月8日 ドゥルーリィ・レインでのコンサート」CD化祈願
『フロットサム・ジェットサム』の内容変更
ふたつの『ア・ショート・ブレイク』
投書欄/ 『ジ・エンド・オブ・アン・イアー』再発は、竹村延和氏のおかげか?

   
『BBCラジオ1 ライヴ・イン・コンサート/マッチング・モウル編』 正誤表

BBC(英國放送協会)で放送されたコンサートの模様を収めたCDで、30分足らずと短いながら、充実した演奏が聞ける好盤です。
ところが、CD上の区切りと曲名の綴りにまちがいがあり、通しでは問題はないものの、飛ばして聴くと軽いとまどいがおこります。
(飛ばして聴くな、という声が聞こえてきそうです。甘受いたします。)
もともと切れ目なく続けて演奏されているため、区切りはわかりにくい。
曲名は、演奏者が当時、放送局側に伝えた仮タイトルのままなのでしょう。
誰が悪いというわけではないのです。
ただもう、無用の混乱を避けるために、正誤表を作ってみました。

Matching Mole "BBC RADIO 1 LIVE IN CONCERT" ( Windsong WINCD063) 1994年発売
Track No.
1
Intant Pussy  [5:50] Instant Pussy  [3:20]
Lithing And Gracing (Righteous Rhumba)  [2:30]
2
Litheing And Graceing  [4:49] Marchides  [4:49]
3
Marchides  [6:49] Marchides (承前) [6:49]
4
Part Of The Dance  [6:32] Part Of The Dance  [6:32]
5
Brandy As In Benge  [1:17] Part Of The Dance (承前)  [0:27]
Ending of "Brandy As In Benj" [0:25]
※拍手 15秒

ファースト『そっくりモグラ』収録の"Instant Pussy" と次の "Lithing And Gracing"を、ひとまとめにしたのがまちがいの始まりです。
"Lithing And Gracing"は、セカンド『そっくりモグラの毛語録』収録の"Righteous Rhumba" の原題。
CDの編者は、 "Lithing And Gracing"が"Righteous Rhumba"のことだと気がつかなかったのかもしれない。
"Litheing And Graceing"は、綴りまちがい(マイケル・キングの『ロング・ムーブメンツ』ではそっと訂正してある。優しい)。
"lithing" は、形容詞 lithe を動詞的に使った語と思われます。
なお、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースがカバーしていますが、こちらも綴りに関して、微妙です。
初出時に、"Lything And Gracing" と記されたためか、CD化の際に、"Lying And Gracing" とタイプミスされてしまいました。不運。

最初のまちがいに引きずられて、『毛語録』収録の "Marchides" を、強引に"Lithing And Gracing"としてしまったのが二つ目のまちがい。
この結果、 "Marchides"を途中で区切って、後半のみを "Marchides" とするはめになっています。
まちがいが、まちがいを呼ぶ。詳しい人にたずねてみればよかったのに。

『そっくりモグラ』収録の "Part Of The Dance" で仕切りなおしたのも束の間、最後に大ボケをかましてしまう。
曲目表には"Brandy As In Benj"とあるけど、実際には、エンディングとして、最後の部分を付け足しているだけ。
ひっかけ問題みたいなものです。どこかで区切らなあかん、そう考えて、区切ったら、間違えてしまったのだ。
5曲目の最初の27秒は"Part Of The Dance"の続き、強いて区切るとすれば、残りが"Brandy As In Benj"となる。
でも、エンディングのフレーズを流用しているだけで、1曲の体裁をなしていないので、区切らなくてよいと思う。
"Benge"は、綴りまちがい(マイケル・キングの『ロング・ムーブメンツ』ではそっと訂正してある。優しい)。

即興的な要素が強いと、ある曲のモチーフをもとに演奏しているうちに、別の曲ができてしまうということがあるようです。
 "Part Of The Dance"と"Brandy As In Benj"も、そのような関係かもしれません(憶測です)。 
この例でよく知られているのが、ポリスの "Reggatta De Blanc"。"Can't Stand Losing You" の間奏から生まれたというものです。
デビュー当時、レパートリーが少なかった彼らが時間かせぎのために間奏を引き延ばしているうちにできたのだとか。

さて、区切りなおすとすれば、次のようになります。再発売のときには、ご一考たまわりたく。

1. Instant Pussy  [3:20]
2. Lithing And Gracing (Righteous Rhumba)  [2:30]
3. Marchides  [11:38]
4. Part Of The Dance (including "Brandy As In Benj")  [7:49]
 


【注釈】

●そっくりモグラ
わたしは衒学的邦題主義者ではないのですが、マッチング・モウルを「そっくりモグラ」と訳すのは、気に入っています。
ジャケットに掲載されている、鉢合わせしているモグラのイラストにぴったりです。
本当は、ワイアット氏の古巣、ソフト・マシーンのフランス語訳 machine molle を英語でソラミミしたものなので、深い意味はない(と思う)のですが。

 

 
「1974年9月8日 ドゥルーリィ・レインでのコンサート」CD化祈願

わたしは、海賊盤を買わないようにしています。これは、倫理や法律の問題よりも、自制のためです。
キリがないし、当たり外れも大きい。そこまで手を回すと、首が回らなくなってしまう。
そんなわたしが、つかんでしまった数少ない海賊盤のひとつが、"LAS VEGAS FANDANGO"(Archives Recordings ARC 002)。
事故で下半身不随になってしまったロバート・ワイアットのカムバックコンサートを収めたものです。

これをつかんでしまったのには、理由があります。
見かけたのが、れっきとした正規盤のみを扱うヴァージン・メガストアだったこと。
そして、ヴァージン・レコードから発売された2枚組のベスト盤に、このコンサートの録音から1曲入っていたこと。
ひょっとしたら、ベスト盤収録のものと同等のクォリティの録音が聞けるかもしれない、と期待してしまったのです(確信犯なんやけど)。
結果は当然の報いと言うべきか、海賊盤以外の何者でもない粗悪な録音でありました。
楽曲使用料を払えば、録音については問わないイタリアの法律を利用した、いわゆるハーフ・オフィシャル盤です。
このタイトルは、ワイアット関係の海賊盤としては有名らしいけど、そっちの世界には疎く、知りませんでした。

ワイアットの当時の状況を振りかえってみます。
前年6月の転落事故から復帰し、1974年2月からソロアルバムの制作に入ります。
4月〜6月には、ハット・フィールド・アンド・ザ・ノース、ケヴィン・エアーズといった旧友たちのライヴに参加しています。
7月にアルバム "ROCK BOTTOM"発売。つづいて、モンキーズのヒット曲をカバーしたシングル "I'm A Believer"を9月に発売。
そんな復帰後の活動のメインイベントが、9月8日のコンサートでした。
このコンサートの2日後、9月10日には、BBCのラジオ番組のための録音を行っており、それは、のちにEPとして発売されています。

リチャード・ブランソンの奸計(※1)によって呼び集められたのは、以下の面々。
・ローリー・アラン (drum)
・デイヴ・スチュワート (keyboards)
・ヒュー・ホッパー (bass)
・フレッド・フリス (guitar, violin)
・モンゲジ・フェザ (trumpet)
・ゲイリー・ウィンドー (sax, clarinet)
とくに、ワイアット氏自身が「俺の夢のリズム・セクション」と呼んでいる ホッパー/アラン/スチュワートが、要になっています。
ゲストというかんじなのが、
・ジュリー・ティペッツ (vocal)
・マイク・オールドフィールド (guitar)
・ニック・メイスン (drums)
そして、オープニングアクトも務めたらしい、
・アイヴァー・カトラー (voice)。

『ロング・ムーブメンツ』には、当日のプログラムに掲載された演奏予定曲しか載っていません。
演奏曲目を、海賊盤をたよりに誌上再録して、今後の正規録音の完全版発掘を祈念したいと思います。
 

1. Dedicated To You, But You Weren't Listening
フリーなヴォーカル・パフォーマンス。早口。

2. Memories
シングル盤"I'm A Believer"のまずはB面。フレッド・フリスのヴァイオリンをフィーチャー。

3. Sea Song
4. A Last Straw
5. Little Red Riding Hood Hit The Road
この3曲は、アルバムの順番通り。5曲目では、モンゲジ・フェザのトランペットが炸裂。

6. Alifie
7. Alifib
アルバムとは、順序が逆になっています。
ゲイリー・ウィンドーのサックスをフィーチャーした " Alifie" では、朗読のようなヴォーカルパートはなし。
そのまま、即興演奏をはさんで、"Alfib" につなげます。[2005.12.04.訂正]

8. God Song
ジュリー・ティペッツが登場し、マッチング・モウルの曲を歌います。
デイヴ・スチュワートのキーボードソロが、カンタベリーらしさを醸し出しています。

9. Behind The Eyes (For A Friend, R)
ジュリー・ティペッツがワイアットに捧げた曲。ワイアット風の歌い方をしています。
のちに、ジュリー・ティペッツのアルバム "SUNSET GLOW"(1975年) に収められます。
"SUNSET GLOW" は、最近CD化されたものを聞くことができました。
この曲以外でも、管楽器の即興演奏を思わせるようなヴォーカル・パフォーマンスが、マッチング・モウルを連想させます。

10. (unidentified)
ワイアットとジュリー・ティペッツのスキャット、フェザのトランペット、ウィンドーのサックスの即興的なかけあい。

11. Instant Pussy
これも即興的なヴォーカルを聞かせる曲。
ワイアットとジュリー・ティペッツにもう一人、テナーヴォイスが絡んでくるのだけど、一体、誰だ?

12. Signed Curtain
ピアノだけだったオリジナルバージョンに比べて、バンド演奏によるきらきらしたバージョンになっています。
これが、なんというか、かなりの感動もの。
リードギターは、マイク・オールドフィールド。
スチュワートのエレピとホッパーのベースのコンビネーションが紡ぐ細かいニュアンスもええかんじです。

13. Calyx
ハットフィールド・アンド・ザ・ノースのデビューアルバムに収められている曲。
ワイアットは、まだ入院中の1973年10月に外出して、この曲の録音にスキャットで参加しました。
ここでは、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースのコンサートで披露するために新たに付けられた歌詞(※2)を聞くことができます。
この曲のみ、ベスト盤 "GOING BACK A BIT" で登場し、ボックスセット "EP's" に再録されています(※3)

14. Little Red Robin Hood Hit The Road
前半はマイク・オールドフィールドのギター、後半はアイヴァー・カトラーの語りをフィーチャーした"ROCK BOTTOM"の最終曲。
派手に叩きまくっているのは、デイヴ・スチュワートに4/7拍子が叩けていないとチクられたニック・メイスンか?。

15. I'm A Believer
シングル盤のA面。おそらく全員参加による、大盛り上がり大会。


[2005.12.04. 追記]
「ドゥルーリィ・レインでのコンサート」の正式なライヴ盤が、2005年10月に発売されました。

"ROBERT WYATT & FRIENDS IN CONCERT: THEATRE ROYAL DRURY LANE, Sunday 8th September 1974"
UK: Rykodisc/Hannibal HNCD 1507
JPN: Video Arts VACK-1299

1. Introduction by John Peel
2. Dedicated To You But You Weren't Listening
3. Memories
     Stewart/Allan/Hopper/Frith
4. Sea Song 
5. A Last Straw
     Stewart/Allan/Hopper
6. Little Red Riding Hood Hit The Road
     Stewart/Allan/Hopper/Feza/Frith
7. Alfie
     Stewart/Allan/Hopper/Windo/Oldfield
8. Alfib
     Stewart/Allan/Hopper/Oldfield
9. Mind Of A Child
     Julie Tippetts
10. Instand Pussy
     Stewart/Allan/Hopper/Tippetts/Mason
11. Signed Curtain
     Stewart/Mason/Hopper/Oldfield/Allan
12. Calyx
     Stewart/Allan/Hopper
13. Little Red Robin Hood Hit The Road
     Stewart/Allan/Hopper/Mason/Oldfield/Cutler
14. I'm A Believer
     Stewart/Allan/Hopper/Mason/Frith/Oldfield/Tippetts/Windo/Feza


この録音については、"Calyx" が発掘されたときに、いちど驚き、また感謝しています。なので、改めてというのがなんだかやりにくい(照れる)ですが、このときの演奏がきちんとした録音で残されていて、ほんとうによかったと思います。
日本では『ライヴ1974』 (Video Arts VACK-1283) として、2004年9月発売が告知されたものの、本国Rykodiscからの正式告知もなく、延期。あきらめかけていた頃に、再び発売予告がありました。

この間には、当日の司会をつとめたジョン・ピールが亡くなっています。
発売されたCDに掲載されたワイアットさん自身のライナーノートには、出演者でやはり故人のモンゲジ・フェザ、ギャリー・ウィンドーとともに、ジョン・ピールへの追悼が綴られています。
もともと予定されていた編集にもあったかもしれませんが、発売されたCDには冒頭にラジオ番組で聞けたのとは少しちがった雰囲気の語りで観客の爆笑を誘うピール氏の様子が記録されています。
いちど延期された理由はわかりませんが、改めて発売された背景には追悼の意向があったのではと思わせるところがあります。

ジュリー・ティペッツが歌う "God Song"、ワイアットに捧げられた "Behind The Eyes" の収録は見送られ、代わりに、"Behind The Eyes" と同様、"SUNSET GLOW" に収められている歌 "Mind Of A Child" が収録されました。ジュリー・ティペッツは、未入手の海賊盤によれば、当日、もう1曲歌っているようです。また、"Instant Pussy" の前に演奏された即興演奏も割愛されていますが、ワイアット自身のライナーノート(イギリス盤と日本盤では異なる文章が掲載されている)によれば、ティペッツ登場以降の後半は完全なテープが残っていないが、これでコンサートの全貌は伝わると思うとのこと。

日本盤CDには、冒頭のジョン・ピールの司会を含め、曲間の語りが書き起こされ、翻訳されていて、この和やかな空気に包まれたコンサートを味わうのに一役買っています。"I'm A Believer" はやはりアンコール曲として用意されていたようですが、いちどひっこむことで「きみたちに余計な気遣いをさせる必要はないだろう」(下半身不随のため)と、本編終了後、そのままアンコールに入ったことがすっと伝わりました。
また、海賊盤ではフェイドアウトされていましたが、このCDでは、"I'm A Believer" の最後にパレード風の曲が付け加えられて、お祭り騒ぎのような楽しい雰囲気で締めくくられるところもしっかり収録されています。最後に付け加えられているのは、スパイク・ジョーンズの "Der Fuehrer's Face"(2005年12月3日放送のラジオ番組、NHK-FM「ウィークエンド・サンシャイン」でのピーター・バラカン氏の教示による)。ヒトラーをおちょくった曲というところがワイアットさんらしい。

各曲ごとに、参加メンバーが記されています。これも、フェザやウィンドーを始めとする出演メンバーへの感謝のあらわれのように思えます。
これによれば、"Instant Pussy" で絡んでくるテナーヴォイスはニック・メイスンか?(またもクエッチョンマーク付き)。

"ROCK BOTTOM" の広告に登場したユーモラスなコラージュ写真を使ったシンプルなCDパッケージデザインはフィル・スミーによるもの。開くと、この日のコンサート告知ポスターに使われたメンバー全員が車椅子に乗っている写真が掲載されていて、ワイアットさんらしいユーモアを感じます。


【注釈】

(※1)
マイケル・キングの本によれば、ヴァージン社長(当時)のリチャード・ブランソンは、ワイアットとバンドのメンバー両方に嘘をついて、口説いたのだそうです。
バンドのメンバーにはワイアットが君にやってほしいと言っていると伝え、ワイアットには他の連中が是非コンサートをやってほしいと言っていると伝えたのだとか。
でも、なんだか、まだ素朴なかんじがするほほえましいエピソードです。

(※2)
この歌詞は、マイケル・キングの本に掲載されています。1974年5月10日の項を参照。

(※3)
ベスト盤 "GOING BACK A BIT" は、オリジナル盤ではつながっていた曲を無理から離したりして編集がめちゃくちゃな上に、記述にまちがいが多い。
ボックスセット "EP's" は、決定版のふりをしながら、中途半端な気がする。文句を言い出したら、きりがないけど。うーん。
 

 
『フロットサム・ジェットサム』の内容変更

ロバート・ワイアットの珍しい録音を集めたアルバム "FLOTSAM JETSAM" は、予告された内容と少し違う内容になっていました。
予告内容は、マイケル・キングの本の巻末に出ていますが、日本側の発売元にも伝えられており、その内容で既に告知されていました。
キングの本の邦訳版では、 "FLOTSAM JETSAM" の予告は削除されているため、予告内容を転載し、変更点を記しておきます。
 
 
予告 発売されたもの
1. Robert Wyatt & Jimi Hendrix - "Slow Walkin' Talk" 1. Robert Wyatt - "Slow Walkin' Talk"
2. Robert Wyatt - "Moon In June" 2. Robert Wyatt - "Moon In June"
3. Symbiosis (featuring Gary Windo) - "Standfast" 3. Symbiosis - "Standfast"
4. Dave MacCrae Quartet - "No 'Alf Measures" 4. Matching Mole - "No 'Alf Measures"
5. Robert Wyatt - "God Song / Fol Del Rol" 5. Robert Wyatt - "God Song / Fol Del Rol"
6. Lol Coxhill - "Apricot Jam" 6. Lol Coxhill - "Soprano Derivitavo / Apricot Jam"
7. Slapp Happy & Friends - "A Little Something" 7. Slapp Happy & Friends - "A Little Something"
8. Henry Cow And Robert Wyatt - "We Did It Again" (deleted)
9. Gary Windo - "Now Is The Time" 8. Gary Windo - "Now Is The Time"
10. General Strike - "N'out Doin'" 9. Unity / Hanwell Band & Robert Wyatt- "N'out Doin'"
(added)
10. Robert Wyatt - "Born Again Cretin"
11. Robert Wyatt - "Speechless / Billie's Bounce" 11. Robert Wyatt - "Billie's Bounce"
12. Epic Soundtracks - "Jelly, Babies" (deleted)
(added)
12. Robert Wyatt - "Locomotive"
(added)
13. Robert Wyatt - "War Without Blood"
13. Robert Wyatt - "Oban Tancat" 14. Robert Wyatt - "Oban Tancat 1"
14. Claustrophobia - "Tu  Traicon" 15. Claustrophobia - "Tu  Traicon"
16. Robert Wyatt - "Oban Tancat 2"
15. The Happy End - "Turn Things Upside Down" 17. The Happy End - "Turn Things Upside Down"
(added)
18. Robert Wyatt - The Wind Of Change"


"Slow Walkin' Talk"は、ワイルド・フラワーズ時代からのレパートリーで、のちにワイアットのソロアルバム "RUTH IS STRANGER THAN RICHARD" に、"Soup Song" として改作されて収録されている。このCDでのクレジットを見るまで、作者のHopper は、ずっとヒュー・ホッパーのことだと思っていた。お兄さんのブライアン・ホッパーのことなのだった。
ジミ・ヘンドリックスのファンクラブが作ったCDで発表された録音らしいけど、曲はワイルド・フラワーズのものだし、ヘンドリックスはベース担当のあくまでもお手伝いということで、ワイアットの単独名義になったのだろう。

シンバイオシスは、ゲイリー・ウィンドーとモンゲジ・フェザを中心とするバンド。予告にあった featuring Gary Windo が削られたのは、双頭バンドであることを考慮してのことか。ここに収められた "Standfast" は、ウィンドー自身の回顧録CD "HIS MASTER'S BONES"(1996年発売、編集は生前にウィンドー自身によって行われていたようだ)に収録予定だったが、このCDに譲られたらしい。代わりに、同じ日のセッションから、ウィンドーとフェザのデュオによる "NTU" が "HIS MASTER'S BONES"に収められている。なお、"Standfast" は、後述の "STEAM RADIO TAPES" のために再録音されたらしいけど、未発表のままになっている。
フェザは1975年12月14日に、ウィンドーは1992年7月25日にこの世を去っている。

マッチング・モウルのBBCセッションが、予告で何故デイヴ・マックレイ・カルテット名義になっていたのかは不明。"No 'Alf Measures"は、ワイルド・フラワーズ時代のケヴィン・エアーズ作品が元になっているらしいけど、ワイルド・フラワーズの演奏は、発掘されているだろうか。ブライアン・ホッパー編集の初期録音集 "CANTURBURRIED SOUND" シリーズの後半をまだ手にしていないので、ひょっとしたら入っているかもしれないけれど、未確認である。

ゲイリー・ウィンドーの "Now Is The Time" は、未発表のアルバム "STEAM RADIO TAPES" のために録音された曲だけど、回顧録CD "HIS MASTER'S BONES"にも収録された。ただし、タイトルは、"Is This The Time?"  に変更されている。
"STEAM RADIO TAPES" のための曲があと2曲、"HIS MASTER'S BONES"に収められているが、それらにはワイアットは参加していない。

ロル・コックスヒルの"Apricot Jam"は、レディ・ジューンのアルバム "LINGUISTIC LEPROSY" のためのセッションで録音されたものだけど、そこに収録されなかったので、コックスヒルが自身のアルバム(片面はスティーヴ・ミラーという変則アルバム) "THE STORY SO FAR.../...OH, REALLY?" に収録した。そのときのタイトルが "Soprano Derivitavo"
このミラー/コックスヒルのアルバムは持っていないので、"Apricot Jam" という表記がどこかにあったのかどうかは確認できていない。

ワイアットがゲスト参加したヘンリー・カウの1975年5月のコンサートの録音は、のちにライヴアルバム "HENRY COW CONCERTS" に収録される。たぶん、パリでの演奏も録音されていたのにちがいない。そこから、即興的に演奏したというソフト・マシーンの曲 "We Did It Again" が、このCDに収録される予定だった。削除された理由はわからない。 "We Did It Again" は、キンクスの "You Really Got Me"(ワイルド・フラワーズ時代にカバーしていた) のリフレインだけを拡大したような曲なので、コンサートでは盛り上がっても、取り出してみると、単調に聞こえたのかもしれない。でも、聞いてみたかった。(他に、「マディ・マウス組曲」をやっているらしい。録音もあるはず。聞きたい。)

ゼネラル・ストライキ・プロジェクトは、制作が頓挫した企画の名称。労働組合運動における歴史的な事件にスポットをあてたオリジナル曲集になるはずだったらしい。ハンウェル・バンドは、"N'out Doin'" の演奏グループに付けられた名称。正確には、ハンウェル・ブラス・バンドとなっているけれど、メンバーには管楽器がひとりもいないのであった。ユニティと付いている理由は、不明。
『ロング・ムーヴメンツ』邦訳版では、General Strike を「ジェネラル・ストライク」と表記しているけど、日本語にするなら、「ゼネラル・ストライキ」と書きたいところ。

エピック・サウンドトラックスの最初のソロシングル "POPULAR CLASSICAL"(1981年)のA面として発表された "Jerry, Babies" の収録が見送られたのは、エピックが許可しなかったからだろうか。ワイアットが参加していないB面の2曲は、スウェル・マップスのCDと、エピック自身のレアトラック集の二度、CD化されているというのに、A面のこの曲は、いまだにCD化されていない。
しかし、この曲は、少なくとも、二回、再録音されている。嫌いな曲なのではなく、逆に思い入れが強いのかもしれない。
なのに、収録が見送られたのは、何故だろう。出来に納得していなかったのだろうか。

2曲が削除された代わりに、予告になかった曲が4曲追加された。

"Born Again Cretin" は、もともと予定されていた "Billie's Bounce" と同じ1981年のラジオ番組用の録音より、追加された。 チャーリー・パーカーの曲だという "Billie's Bounce" が、予告で"Speechless / Billie's Bounce"と題されていた訳は、ジャズに不案内なこともあり、わからない。『ロング・ムーヴメンツ』にある「オリジナル録音は、1975年」というのは、正しいのだろうか。なんだか、もっと古くからあるようなのだけど・・・。

"War Without Blood" は、"Biko" や "Te Recuerdo Amanda" といっしょに、1984年のEP "WORK IN PROGRESS" のために録音されたものの、収録されなかった曲。あの5曲といっしょに聞くとよいかもしれない。

セロニアス・モンクのカバー "Locomotive" は、1980年代初めに自宅で録音されたとあり、『ロング・ムーヴメンツ』でも触れられていなかったもの。1998年に発表されたドキュメンタリー・フィルム "LITTLE RED ROBIN HOOD" の冒頭で、列車の映像に重ねられていて、印象的だった。

"The Wind Of Change" は、元スペシャルズのジェリー・ダマーズと共に録音した曲で、ダマーズ色が濃いスカである。
以前に、"THE ANIMAL FILM" のサントラ盤にボーナストラックとして追加されていたけれど、とても場違いなかんじがしていた。穿った見方をすると、"THE ANIMAL FILM" と切り離すために、このCDに収録したのではないか。ただ、ここに入れても、異色であることにかわりはない。
この前に、ワーキング・ウィークの "Venceremos (We Will Win)" を配置すれば、多少、浮いた感じは抑えられたように思うのだが。
レアな(=手に入りにくい)録音を集めるという主旨なら、代わりにラスト・ナイチンゲイル名義の "Moments Of Delight" でも良かったのに!"The Wind Of Change" は悪い曲ではないのだけれど、なんと言うか、どうも、他の曲と並べると収まりがよくないと言うか浮いてしまう。。こういうのこそ、"EP's"  に入れれば良かったのに、とひたすらないものねだりをしながら、この項を終わる。
 

 
ふたつの『ア・ショート・ブレイク』

1992年の5曲入りミニアルバム『ア・ショート・ブレイク』は、“なんだかよくわからない”一枚です。
まるでリハーサルをそのままのような、ラフな演奏とざわついた録音。収められている曲自体、あまり練られておらず、スケッチというかんじがする(最後に収められている "Unmasked" のみ、1988年に発表されたクリス&コージーとの共作の再演)。ワイアット自身のライナーもあるにはあるのだけれど、正直言って、発表する必要があったのかどうか疑問でした。
しかし、もっとも謎なのは、『ア・ショート・ブレイク』には2種類あって、微妙にちがっている、ということ。
しかも、なぜちがっているのか、理由がわからない種類のちがいなのだ。

ひとつは、通常のプラケース入りだけど、24ページのブックレットといっしょに、紙の箱に収められている。
もうひとつは、通常のプラケースのみ。前者を箱入り盤、後者を通常盤と呼んで、区別することにする。
マイケル・キングの『ロング・ムーブメンツ』邦訳版の巻末ディスコグラフィーによれば、箱入り盤のほうが最初に出たらしい。
異なる点は、二つある。

(1) 通常盤の "Tubab" は、箱入り盤になかったイントロが付け加えられている。

イントロが付け加えられている、といっても、テープの途切れが露骨にわかる雑な編集なので、ワイアット氏自身の指示によって、わざわざ作り直したとは思えない。


(2) 通常盤で使われている写真は、箱入り盤よりも鮮明になっている。また、文字の書体がちがう。

印刷会社を変えたのだろうか。写真の仕上がりだけでなく、書体も通常盤のほうがスマートなものになっている。もしかしたら、最初に頼んだ印刷会社が良くなくて、デザイナーの意図通りではなかったのかもしれない。それを、そのまま売ってしまうところがヴォイスプリントやなぁと思う(憶測やけどね)。


ところで、2種類とも買っているという酔狂について言い訳しておくと、最初に、通常盤を買ったあとで、箱入り盤をちょっと安く見つけて、迷った末に、買い直したのだ。通常盤は処分するつもりだった。
印刷の仕上がりのちがいにはすぐに気が付いたので、姑息なことに、通常盤と箱入り盤の中身を入れ替えて、印刷の悪い元々の箱入り盤を処分しようと考えていた。ところが、処分する前に、箱入り盤を聞いて、 "Tubab" のちがいに気付いてしまったのだ。
二種類の『ア・ショート・ブレイク』は、いまも両方、手元にある。
 

 
投書欄/『ジ・エンド・オブ・アン・イアー』再発は、竹村延和氏のおかげか?
 
1999年の秋頃の話。なにげなく、某大手レコード店の棚を見ていたら、ロバート・ワイアットの処女作『ジ・エンド・オブ・アン・イアー』(1971年)のCDが、目立つところに置いてあった。このアルバムは、数年前にいちどCD化されていたのだけど、廉価盤シリーズの一枚としてアメリカで再発されたらしかった。
目立つところに置いてあるのは、店としてプッシュしてくれているわけだから、うれしくなって、店の推薦文を読んでみた。
一読したわたしは、憤懣やるかたない、というよりも、無力感におそわれてしまった。
主旨は、こうです。
  • 竹村延和の愛聴盤として知られる幻の名盤が、遂にCD化された。
  • 今回CD化されたのは、竹村延和が推薦していたからにちがいない。
  • 竹村延和ファンはマスト(必ず買うべきもの、の意らしい)。
  • 他愛のない浮かれた宣伝文句なのだけど、内容の誤りと、その誤りを生んだ妙な特権意識が気になった。
    誤りは、簡単。さっきも書いたように、「遂にCD化」されたものではないし、竹村延和氏が推薦していたから発売されたのでもない。
    また、80年代半ばまで、アナログ盤の新品が(カットアウト等で)出回っており、「幻」の作品でもなかった。
    この推薦文を書いたひとは、竹村氏を通じて、このワイアット作品を知ったのかもしれない。それはいい。
    しかし、竹村氏を信奉するあまり、「この作品(の良さ)を知る者は、竹村氏以外にはいなかった」と考え、その思い込みにもとづいて、発言するのは無思慮に過ぎる。竹村氏が推薦しなければ、このようなフリージャズまがいのわけのわからんマイナーなアルバムは忘れられたままであったろうという偏見がある。幻の名盤だと言いながら、貶めているのである。
    竹村ファンならこの作品の良さが理解できる、いや、竹村ファン以外には理解できないだろう、というような驕りすら感じる。
    こんな書き方をされたのでは、名前を引き合いに出された竹村さんだって、迷惑だろうと思う。
    ワイアットの作品は、竹村延和のファンであることを証明したり補強するために作られた「踏み絵アイテム」ではないのだから。

    この店では、以前にもワイアットの現時点での最新作 "SHLEEP" に、「藤原ヒロシはこのアルバムを当店でお買いになりました」という訳のわからない推薦文?を付けていた実績がある(「誰だよ、藤原ヒロシってのはよぉ」と知っていたとしても毒づきたくなるではないか。と言っても、名前しか知らんけど)。
    腹が立ったので、実力行使に及ぶことにした。推薦文を書いた当人に誤りを認めさせ、責任者を呼び出し・・・・・たわけではない。
    そんなこと、小心者のわたしにできるわけはない。
    カードに書かれた推薦文の「遂にCD化」の「遂に」に線を引き、「6年ぶりに」とこっそり訂正させてもらっただけだ。
    思い当たるレコード店店員殿、犯人はわたしです。 

    【2005.12.04.】 "ROBERT WYATT & FRIENDS IN CONCERT: THEATRE ROYAL DRURY LANE, Sunday 8th September 1974" 発売に際して、追記と訂正。
     
     





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