▼年表とディスコグラフィ
1977-1982
▼バージョンちがい ▼復刻にあたっての要望 ▼"Skank Bloc Bologna" 収録のオムニバス ▼豪華メンバーの謎 ▼スクリッティ・ポリッティの哲学? |
ソングス・トゥ・リメンバー |
初めてスクリッティ・ポリッティを聞いたのは、FM大阪での芹沢のえさんの番組で、曲は
"Hegemony" でした。
興奮しました。ドラムはダブ(レゲエ)っぽいし、ひっかくようなギターとぐねりそうなベースには、性急さとクールな感触が同居してた。
そして、グリーンの今と変わらない声。自ら認めていたように、ロバート・ワイアットやリチャード・シンクレアと同じ息づかいがあった。
"Hegemony" が入ったシングル盤「2回目のピール・セッション」を、間もなく、しかも中古盤で、見つけてしまった。
当時は、イギリス盤は割高で、しかもシングル盤ともなると、そこここに入荷するというものではなかった。
ほとんど、入手不可能とあきらめていたので、むちゃくちゃうれしかった。
ジャケットは印刷ではなく、モノクロコピー。BBCからの出演依頼の詳細、経費の明細が記されています。
わたしが「ピール・セッション」なるものを知ったのは、このシングル盤が最初です。
「ピール・セッション」は、目利きとして知られるイギリスのDJ、ジョン・ピールのラジオ番組用に録音された演奏のこと。
貴重な録音の宝庫なのだ。
それ以前にも、ベスト盤等に「別バージョン」として収められているのを耳にしていたのだけれど、ピールの名は意識していなかった。
経費の明細や、スタジオ、印刷所の連絡先や価格表の掲載は、St. パンクラスからの3枚に共通している。
パンクのD.I.Y.精神に触発されたというから、これだけあったら、レコードが出せる、ということを示したかったのだと思う。
1980年5月の「ロック・マガジン」31号は、ラフ・トレード・レコード特集でした。
イギリスのどこかの雑誌から(無断で?)翻訳したらしい、スクリッティ・ポリッティに関するインタビュー記事も掲載されている。
初期のライヴの様子や、メディアに対する慎重さなどを、そのレポートからうかがうことができる。
ロバート・ワイアット云々という話は、その記事にあったもの。まさか、翌年、ワイアット本人がゲスト参加するとは思わなかった。
芹沢さんがコーディネイトして、ジャパン・レコード(現・徳間ジャパン)からラフ・トレード作品が配給されることになった。
その第一回配給で発売された日本独自編集のオムニバス『クリア・カット』に入って、やっと聞けたのが、"Skank
Bloc Bologna"。
しびれました。ライナーには、ジェフ・トラヴィス(ラフ・トレード代表)の「イギリス的な音」という評が引用されている。
「三人共、年中、名字を変更させる」ともあって、かっこよいなと思った。のちに出たアルバムには、名前のみ記されていた。
ロバート・ワイアットがキーボードで参加したソフトなレゲエ調の "The Sweetest
Girl" での再登場は、最初、あまり良いとは思わなかった。
ひっかくようなギターも、変幻自在を思わせたリズムもなくなってしまい、淡々としたリズムマシンだけがやけに印象的だったから。
いま聞くと、いい曲だし、当時のワイアット作品の雰囲気もうまく取り込んでいると思うのだけれど(のちに、マッドネスがカバーしている)。
ワイアット氏は、当時のインタビューで、この共演について、次のように話している。
彼らの目指しているものが今ひとつよくわからないから、グループに参加するつもりはない。当時、日本盤のシングルも出ました。B面は、"4 'A SIDES'" 収録の "Confidence"に差し替えられていました。
ただ、彼らの音楽に対する姿勢が常にたいへん真面目でひたむきである事は僕にもよくわかる。
その点では大いに共鳴するよ。
(「フールズ・メイト」19号、1981年12月、インタビュアー・塩田秀夫/北村昌士)
スタイルを一新し、(線は細いけど)アイズリー・ブラザーズを思わせる "Faithless"
で再再登場したときは、ドキドキしてしまった。
それまでのスタイルは置いといて、これはこれで良いと思いました。グリーンの声とメロディ感覚さえあれば、OKなのだ。
ジャケットデザインは、コピーの貼り雑ぜから、タバコや香水のパッケージを模したすっきりしたものに変わった。
パンクからポップアートへと言うべきか。音のほうも、これ以降、ファンクやレゲエを模したものになっていきます。
"The Sweetest Girl" 以降のシングル曲に、3曲の新曲を加えて、アルバム
"SONGS TO REMEMBER" が出たのが、1982年の夏。
アルバム発表後、ワイアット氏をゲストに迎えたライヴなども計画していたらしいけど実現せず、再び活動休止へ。
次に(まったく予想できなかったサウンドとともに)姿をあらわすのは、これから一年半ほど後のことになります。
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[参考] ※文中で触れているもの以外
George Gimarc "PUNK DIARY 1970-1979" (St. Martin's Griffin),1994
Geroge Gimarc "POST PUNK DIARY 1980-1982" (St. Martin's Griffin), 1997
Michael King "WRONG MOVEMENTS: A ROBERT WYATT HISTORY" (SAF Publishing),1994
Ken Garner "IN SESSION TONIGHT: THE COMPLETE RADIO 1 RECORDINGS" (BBC
Books), 1993
年表とディスコグラフィ 1977-1982 |
Late 1977 | PERSONNEL リーズのアートスクール学生、グリーンが、パンクのDIY精神に刺激を受け、スクリッティ・ポリッティを結成。 |
Green (vocal, guitar) |
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1978.09.? | リーズからロンドンに引っ越す。 |
1978.?. | PERSONNEL サイモンが脱退する。 |
Green (vocal, guitar) |
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1978.11.18. | RELEASE "SKANK BLOC BOLOGNA" (St. Pancras SCRIT1), 7" ep |
1. Skank Bloc Bologna |
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1978.11.18. | LIVE London, Acklam Hall (w/Red Crayola, Tourists, Cabaret Voltaire, Prag Veg) |
1978.12.05. | RADIO SESSION BBC "JOHN PEEL" (transmission : 1978.12.13) |
1. The Humours Of Spitalfields |
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1979.03.21. | LIVE London, Moonlight Club (w/The Raincoats) |
1979.03.30. | LIVE London, Acklam Hall (w/Red Crayola, Essential Logic) |
1979.03.31. | LIVE Manchester, The Factory (w/Red Crayola, Essential Logic) |
1979.04.03. | LIVE Birmingham, Festival Rooms (w/Red Crayola, Essential Logic) |
1979.04.05. | LIVE London, Action Space (w/Red Crayola, Essential Logic) |
1979.05.11. | LIVE London, Africa Centre (w/Prag Vec, The The) |
1979.06.20. | RADIO SESSION BBC "JOHN PEEL" (transmission: 1979.7.4.) |
1. Messthetics |
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1979.07.06. | LIVE London, Hitching College (w/Acme Sewage) |
1979.08.31. | LIVE London, Electric Ballroom (w/Joy Division, The Monochrome Set, A Certain Ratio) |
1979.11.09. | RELEASE "4 'A SIDES'" (St. Pancras/Rough Trade SCRIT2/RT027), 12" ep |
1. Bibbly o Tek |
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1979.11.26. | LIVE London, Notre Dame Hall (w/Essential Logic, Delta 5, Door & The Window) |
1979.12.01. | LIVE London, Eric's (w/The Pop Group) |
1979.12.21. | LIVE London, Electric Ballroom (w/Teardrop Explodes, Echo & The Bunnymen, The Expelaires) |
1979.12.29. | RELEASE "2ND PEEL SESSION" (St. Pancras/Rough Trade SCRIT2/RT034), 7" ep |
1. Messthetics |
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1980.02.01. | LIVE Liverpool, Eric's (w/Gang Of Four) |
1980.02.07. | LIVE London, Electric Ballroom (w/Gang Of Four, The Raincoats, Ralph & Ponytales) |
1980 | グリーンが病に倒れ、故郷のウェールズ・カーディフで、9ヶ月間、療養生活を送る。 |
late 1980 | PERSONNEL 活動再開。Mgotseを加える。ドラムからドラム・マシンに変える。 |
Green (vocal, guitar) |
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1981.04. | RELEASE "NME: C81" omnibus cassette |
1. The "Sweetest Girl" |
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1981.08.04. | RELEASE "THE SWEETEST GIRL" (Rough Trade Germany 6005 140) 7" single |
1. The "Sweetest Girl" |
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1981.10.19. | RELEASE "THE SWEETEST GIRL" (Rough Trade RT091), 7"/12" single |
7" |
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1981.?. | 「政治的な理由」からニールが脱退。Mgotseも脱退する。 |
1982.?. | PERSONNEL 6人のメンバーを加え、再編成。 |
Green (vocal, guitar) |
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1982.04.13. | RELEASE "FAITHLESS" (Rough Trade RT101), 7"/12" single |
7" |
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1982.04.25. | RELEASE "NME: JIVE WIRE" omnibus cassette |
1. Just In Time |
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1982.05.15. | RADIO SESSION BBC "JOHN PEEL" (transmission: 1982.5.24.) |
1. Asylums In Jerusalem |
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1982.07.12. | RELEASE "ASYLUMS IN JERUSALEM" (Rough Trade RT111), 7"/12" single |
7" |
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1982.?. | PERSONNEL キーボードがマケヴォイからベイツに交代。ベイツは、アルバムのレコーディングには参加していない模様。 |
Green (vocal, guitar) |
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1982.07.15. | RADIO SESSION BBC "THE EVENING SHOW (DAVID JENSEN)" (transmission: 1982.8.2.) |
1. Asylums In Jerusalem |
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1982.09.03. | RELEASE "SONGS TO REMEMBER" (Rough Trade ROUGH20), 12" lp |
1. Asylums In Jerusalem |
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2005.02.14. | RELEASE "EARLY" (Rough Trade), cd [2005.01.09.追記] |
["SKANK BLOC BOLOGNA" (St. Pancras SCRIT1)] |
バージョンちがい |
"SONGS TO REMEMBER"収録曲のシングルは、"Faithless" の12"バージョンしか持っていないので、聞き比べができません。
ここで書くことは、他のシングル等を、(安く)見つけたときの心の準備みたいなものです。
また、バージョン番号は、録音順とは限りません。整理のための便宜的なものです。
バージョンちがいの内容については、イギリスのファンページ http://www.figure4.co.uk/scritti/ をあわせて参考にしました。
The "Sweetest Girl"
Version 1: イギリスの音楽雑誌N.M.E.が頒布したカセット "C81" に収録。Lions After Slumber
Version 2: ドイツ発売のシングルに収録。再録音したらしい。
Version 3: イギリス発売のシングルに収録。Version 2をリミックスしたのだとか。
Version 4: 12インチシングルに収録。Version 3と同じか?
Version 5: アルバムに収録。Version 1〜3のうちのどれか?
Version 1: 7インチシングルに収録。サックスソロなし?Faithless
Version 2: 12インチシングルに収録。サックスソロあり?
Version 3: アルバムに収録。サックスソロあり。Version 2と同じ?
Version 1: 12インチシングルA面に収録。extended version。Asylums In Jerusalem
Version 2: 7インチシングルA面に収録。Version 1の前半らしい。
Version 3: 7インチシングルB面に収録。Version 1の後半らしい。
Version 4: アルバムに収録。Version 2と同じ?
Version 5: 12インチシングルB面に収録。extended versionのインスト版で、歌の代わりにサックスが入っている。
7インチシングル、12インチシングル、アルバムとも、同一バージョンらしい。Jacques Derrida
Version 1: 12インチシングルに収録。extended version。A Slow Soul
Version 2: 7インチシングルに収録。Version 1を短くしたものらしい。
Version 3: アルバムに収録。これもVersion 1を短くしたものらしいのですが、Version 2とは長さとミックスがちがうそう。
Version 1: 12インチシングルに収録。Version 2とは、別バージョンで、よりゆっくりとした演奏らしい。
Version 2: アルバムに収録。
復刻にあたっての要望 |
去年の暮れに、彼らのファーストアルバム "SONGS TO REMEMBER" のCDが、ボーナストラック付きで復刻されるという話がありました。
CD版は持っていませんし、当時のシングルは買っていなかったので、大いに期待しました。
ところが、ポーナストラックは、アルバムと同時期のシングル曲ではなく、"4
'A SIDES'" と "2ND PEEL SESSION" の8曲だという。
この8曲は大好きなのだけど、アルバムの収録曲と録音時期が離れているし、スタイルもちがうので、がっかりしてしまった。
結局、延期延期で、いまだに出ていないのだけど、発売中止でもええわ、とさえ思っています。
せっかくの復刻なのだから、中途半端なものにしてほしくない。
そんなわけで、勝手に、「筋の通った」復刻バージョンを、考えてみました。
(a) EARLY SINGLES (incl. 2nd PEEL SESSION) + 1st PEEL SESSION
トリオでのポスト・パンク期は、1枚でまとめて聞きたい。できれば、幻の「1回目のピール・セッション」もあわせて。
Ellsbeth Blackthorneさんによれば、"5.12.78" は、"28.8.78"と同じ曲だそうです。また、"Doubt
Beat" は少し歌詞がちがうらしい。
[参考]Webページ「Ellsbeth's Wicked Tea Party」 http://pages.prodigy.net/eblackthorne/ellsbeth.htm
(このページには、聞き取りによる初期作品の歌詞が掲載されています。苦労が偲ばれます。)
[2005.01.09.追記] 3枚のシングルと"The 'Sweetest Girl'"AB面を収録した編集盤
"EARLY" が2005年2月14日に発売されることになりました。祝。
(b) "SONGS TO REMEMBER" + "Just In Time"
[2005.01.09.追記]"Just In Time" は未聴なのでわかりませんが、のちに発表された曲の別タイトルの可能性もあります。
(c) VERSIONS
12インチバージョンは長いものが多いので、(ほぼ)重複とみなしてよいものを省いても、余白には収まりそうにない。
しょうがないので、別バージョン集として、分けることを提案します。初回限定の付録でもよいです。よいですって言われても。
1. The "Sweetest Girl" -Version 1: "C81" version(d) 3rd & 4th PEEL SESSIONS
2. The "Sweetest Girl" -Version 2: German single re-recorded version/alternate mix
3. Lions After Slumber -Version 1: Single version
4. Faithless -Version 1: 12" version
5. Faithless -Version 5: 12" version (instrumental)
6. Jacques Derrida -Version 1: Extended version
7. A Slow Soul -Version 1: 12" slower version
"Skank Bloc Bologna" 収録のオムニバス |
ラフ・トレード・ジャパンが最初と最後に出したオムニバスアルバムに、"Skank
Bloc Bologna" が選曲されている。
実は、"Skank Bloc Bologna"は、ラフ・トレードから出たものではない(配給は、ラフ・トレードが担当)。
去年の暮れに企画されたファーストアルバムの復刻CDへの収録が見送られているのも、そのことが理由だと思う。
にもかかわらず、入っている。担当者の思い入れが強かったのかもしれない。
担当者の思い入れに敬意を表して(スクリッティ・ポリッティを教えてくれた感謝も込めて)、全曲紹介します。
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CLEAR CUT
(Rough Trade/Japan RTL-5) LP
1981年2月1日発売
Side A: | |
1. JOSEF K | Kind Of Funny |
2. THE FALL | City Hobgoblins |
3. ORANGE JUICE | Simply Thrilled Honey |
4. THE GIST | This Is Love |
5. GIRLS AT OUR BEST | Politics |
6. RED CRAYOLA | Born In Flames |
7. THE RAINCOATS | In Love |
Side B: | |
8. DELTA 5 | You |
9. THIS HEAT | Health And Efficiency (edit) |
10. ESSENTIAL LOGIC | Music Is a Better Noise |
11. SCRITTI POLITTI | Skank Bloc Bologna |
12. ROBERT WYATT | At Last I Am Free |
*Concept by Noe Selizawa and Akira Uji
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CLEAR CUT FINAL
(Rough Trade/Tokuma Japan 32JC-206) CDLP
1986年10月25日発売
1. RED GUITARS | Remote Control |
2. ORANGE JUICE | Simply Thrilled Honey |
3. WEEKEND | The View From Her Room |
4. JAZZATEERS | Sixteen Reasons |
5. STRAWBERRY SWITCHBLADE | Trees And Flowers |
6. AZTEC CAMERA | Orchid Girl |
7. THE GO-BETWEENS | Cattle & Cane |
8. VIC GODARD & THE SUBWAY SECT | Ambition |
9. EASTERHOUSE | Inspiration |
10. THE WOODENTOPS | Travelling Man |
11. THE DREAM SYNDICATE | Tell Me When It's Over |
12. SUSANNA HOFFS | I'll Keep It With Mine |
13. MICRODISNEY | Birthday Girl |
14. THE MONOCHROME SET | Alphaville |
15. SCRITTI POLITTI | Skank Bloc Bologna |
16. THE SLITS | Man Next Door |
17. VIRGIN PRUNES | Pegan Love Song |
18. THE POP GROUP | We Are All Prostitutes |
19. ROBERT WYATT | The Age Of Self |
20. THE SMITHS | Stretch Out And Wait |
豪華メンバーの謎 |
あとで知ったのだけど、「メイ」とクレジットされていたコーラスのお姉さんは、メイ・マッケンナさんといいます。
コントラ・バンドに在籍するなどフォーク界で長く活動しており、ソロアルバムも何枚か出している女性シンガーです。
それにしても、なぜ、活動休止から復帰したばかりなのに、実力のあるメンバーを新しく雇ったり、レコードを出したりできるのだ?
このことは、現在も続く、スクリッティ・ポリッティの謎めいた部分です。
ちなみに、メイさんを含むコーラスの3人は、オレンジジュースやスピアー・オブ・デスティニーにも、揃って参加しています。
オレンジ・ジュースにキーボードの人が、スピアー・オプ・デスティニーにトランペットの人が参加しているのも見逃せない。
1991年に Jo Cang というベーシストがアリスタからアルバムを出しているけど、果たして、「彼」なのだろうか。
ラジオ・セッションにだけ参加しているジャンゴ・ベイツは、のちにビル・ブルッフォード・アースワークスに入っている。
グリーンとトム以外は、スクリッティ・ポリッティのメンバーと言うよりも、セッション参加と言うべきなのかもしれない。
トム(モーリィ)は、この後、ソロになったという話を読んだ記憶がありますが、未見・未聴です。
[2005.01.09.追記]
トム・モーリィは、1985年にVirginのサブレーベル Zarjazz からソロシングル
"WHO BROKE THAT LOVE?" (JAZZ 6) を出しています。
カリブ海の音楽を思わせるラテン調のさわやかポップです(B面には少しダブっぽい仕上げの同曲
Dawn mix を収録)。
※このページを読んでくださったY.Mさんのご好意で聴くことができました。ありがとうございます。3年間も更新できず、すみません。
「謎」と題したら、本文はそれを解き明かすものと決まっているのに、そのまんまやがな。申し訳ない。
スクリッティ・ポリッティの哲学? |
「ジャック・デリダ」だの「トラクテイタス(=ウィトゲンシュタインの論理哲学論考)」だのと歌っていたために、妙なとこで話題になった。
だいたい、グループ名からして、グラムシかなにかの本から採っているのだ。「知」を見るのが好きなひとが喜ぶのも無理はない。
有名なのが、浅田彰氏の論文「不幸な道化としての近代人の肖像」(「現代思想」1983年2月号)。
かのベストセラー『構造と力』(勁草書房、1983年9月)には、「クラインの壷からリゾームへ」と題して収められているものです。
近代の「累積的差異化プロセス」は、なんでも取り込んでしまう。そうした運動とは異質のデリダ等の思想ですら例外ではない。
そうした「商品化」の例として、スクリッティ・ポリッティが引き合いに出されていて、洒落なのだろうけど、引用注まで付けられていた。
エルドン(当時浅田氏がツールにしていたドゥルーズの講義テープを演奏に混ぜていた)を持ち出すよりは、かっこよかったかもしれない。
「形式と内容についての問題は基本的に迷宮的なものだ」などと題したインタビュー記事もあった(「フールズメイト」1985年2月号)。
確かにグリーンは、哲学書が好きでよく読んでいるらしい。インタビューでも、ハイデッガーやバルトの名をあげている。
でも、哲学的な問題を、歌っているわけではない。
一連の「哲学的」な曲にしても、「場違いな感じ」を出すために、自分の手近にあった言葉を放り込んだだけのように思う。
インタビュー記事を読んでも、伝わってくるのは、グリーンのポップ・ミュージックに対する信頼です。
情熱をかきたてるもの、別の道を暗示すもの、変化をうながすもの、共同体の絆になり得るもの等々。
しかも、そうした分析についてすら、「分析は分析であって、音楽をやる上では何も考えたくない」と言っているのだ。
記事のタイトルにするなら、こちらのほうがふさわしいと思う。
【2005.01.09.】 初期シングル曲を集めた編集盤 "EARLY" 発売に寄せて、予告されている曲目を掲載。
(c) 2000, 2005 Kijima, Hebon-shiki