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2024年9月8日〜2024年9月14日


9月8日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2024年9月8日】
 戦争と圧政と侮蔑についてあまり書かないのは、知人・友人には、それらが見過ごせない問題であること、わたしがそのように考えていることが「言うまでもない」と思っているからだけど、そんなわたしが言えることが実効性のある提言ではないという無力感もある。おかしさを伝えても、事態は止まない。だから言わなくていい、伝える必要はないということではなく、他のひとたちによって、より実効性のあるはずのことがたくさん語られている、それらは知人・友人はみな知っているし、そこに付け加えることはないということです。
 これは、SNSの影響、です。Tipsとして、言葉が流通することをずっと畏れてきたけれど、One of Tipsを流すことが嫌になった。

 戦争と圧政と侮蔑について話さないのに、兵庫県知事の不祥事について、あれこれ思ってしまうのは、厄除けに近い。さっさと終わらせてほしい。通報を知ったときに、真っ先に「犯人さがし」をした、というだけで既にアウトなのに、自らの失言の非すら認めないことがまかり通っていることが精神衛生上よくない。「やったのはおまえか」「誰だよ、チクったのは」「誰でもいい、やったのかやってないのか」なんて、小学校の教師と児童のやりとりではないか。通報者の処分の前に、やったかどうかの調査をしなかったことも既に明らかになっている。いいオトナが、そんなコントみたいな悪辣なことをやってしまえるのが恐ろしい。

 木曜日の母のデイ日。キム・ソンス監督『ソウルの春』を見に行った。例によって、つなわたりだったけれど、それはともかく、1979年の全斗煥(当時は漢字で表記し、ゼントカンと音読みしていた)によるクーデターを描いた映画。軍事独裁政権の大統領が暗殺され、新政府が発足したが、すぐに全斗煥がクーデターを起こし、大統領になって、軍事独裁を続行した、というのが当時の受け取りで、新政府に対して「ソウルの春」と呼ばれる民主化への期待が起こっていたことは知らなかった。それと、そのクーデターの際、丁々発止の攻防戦があったことも知らなかった。攻防戦が映画のみどころであり、史実とちがうドラマティックな演出もあるらしいけれど、大筋は史実という。
 全斗煥をモデルにした首謀者のクーデターの動機は、自分たちの軍事政権下での旨味が失われることの阻止でしかない。しょうもない。でも、そのために、軍内の私的組織の力をフルに使って、自分たちへの処分無効の既成事実化を図る。クーデター阻止の動きに対しては、責任を取りたくない上層部につけこんで、言ったもん勝ちを繰り返す。史実とは言え、狡猾な連中の勝利で終わるのは後味がわるいけれど、動機がしょうもないだけに、余計に無力感に襲われてしまった。

 動機がしょうもないものでなければいいのか、と言えば、そんなことはない、のだが、しょうもない動機による権力濫用には、心が蝕まれる。

 母のデイ日、火曜日と土曜日は、イベントなし。少しだけ遠くのショッピングモールに行ったり、図書館に行ったり。その代り、金曜日の午後、書店に寄りたいからと、長めの外出をした。近所に、買い物ついでに寄れる書店がないのが、どうにも精神衛生によくない気はする。金曜日の午後は、居住市の中心部まで自転車で行き、小さなタワレコの片隅に置かれていた「intoxicate」#171を入手したのち、書店で「SPECTATOR」Vol. 53「1976サブカルチャー大爆発」を買った。1976年のエポックメイキングな出来事のひとつとして、「ロックマガジン」とパンクの伝来が取り上げられていて、「フォーエバーレコード」の東瀬戸さんが、「阿木譲アーカイヴ」資料の検証とともに、自身の回想を交えて、ドキュメンタリーを書かれている。「ロックマガジン」同様、数年後に影響を受けた「別冊宝島」も取り上げられている。『宇宙戦艦ヤマト』再評価に端を発するアニメブームについては横目で見ていた。オカルトも同様。特集のほかでは、裸のラリーズについてのページがあるけど、まだ読んでいない。

 母は、少し元気を取り戻して、呼ぶ前にキッチンに起きてきたり、居間まで来るようになったけれど、不安が動機になっている場合もあって、よしあし。今週は何度か、夜、部屋に引き揚げたあと、起き出してきた。不安をなだめて、部屋に戻ってもらったら、そのとき、Gが出現して、おおあわてということもあった。Gに対するセンサーは母のほうが鋭い。なんとか捕獲して、外で放したけれど、実は数日前から目撃しては取り逃がして、母が起きているときに出てきたら困るなと思っていたのでした。でも、そのG追跡の過程で、母が失っていて、「忘れてきて、そのまま盗られたかもしれない」と考えていたものが見つかったということもあった。おおがかりな掃除もしたいけれど、まだ暑くて、とりかかる気力が起きない。涼しくなったらやろうと思っていることがどんどん増えている。できるのか。
 月曜日の通院以外は、平常どおり、と思えるのは、「やること」が変わらないからか。亡くなった伯母や伯父、実家の話など、不安から出てくる物語はいろいろあるのに。

 今週の通販物。●青山陽一『Quarter Century of Odrelism (1990-2015)』。2015年発売のベスト盤で、発売当時は、メトロトロン期のベストも、徳間ジャパン期のベストもあるし、ボーナスディスクに収められた新曲はシングルで買ったので、見送っていた。改めて買ったのは、2024年8月31日の青山さんのツイートで、「昨日これのDISC2(当時セルフカバーを新録したもの)を珍しく車で聴いたんすけど、改めて千ヶ崎学b、伊藤隆博k、中原由貴drのBM'sの噛み合い方すごいわ。あと自分もまだギリ全開で歌えてる時期。もう多分再現不可ゆえ、未聴の方には聴いてほしいす。」とあったことから。新録には、大好きな「Million Miles Long Hair」も含まれていたし。検討のために、青山さんのディスコグラフィを見てみようとしてわかったのは、公式サイトはAmazonへのリンクだし、Discogsも不十分という寂しい状況。自分でやるのは荷が重いけど、誰かー。●藤本和也さん発行の「漫画雑誌 鳩」第一号を千鳥橋「シカク」から。藤本さんのツイートで「シカク」にあることを知ったけれど、店だと目移り必至だけど、いまは目移りしている時間の余裕がないので、諦めて、通販させてもらった次第。合わせて、ツイートで見かけて気になっていたイラストレーター中村一般さんの冊子「HEAVEN」、空想と地図の企画室「空想と地図」Vol.1を購入。

 今週の視聴。●「ネガポジラジオ配信ライブ【赤ちょうちん】」#206、ゲストは永江孝志さん。●NHK『100分de名著』は、変化球で、アーサー・ウェイリー訳『源氏物語』。●『ザ50回転ズのロックンロール予備校2』「初めての名盤シリーズ」、Phil Specter『BACK TO MONO (1958-1969)』。先週土曜日のB面(Record Number One, Side B)編と今週土曜日のC面(Record Number Two, Side A)を、先週に続いて、配信のプレイリストで、と思ったのだけど、C面のダーレン・ラヴ "Chapel Of Love" がApple Musicにない。手元の1992年版ベストには入ってる。Apple Musicにある2011年版ベストは、当時、曲が増えてるけど、1992年版に好きな曲は全部入ってるからいいや、と見送ったのだけど、増えているのではなく、2曲抜いて、4曲加えたものだった。Spotifyに、1992年版と同じ選曲のものがあったので、C面はSpotifyで組んだ。●日曜日、BSフジ『京都・磔磔 酒蔵ライブハウスの50周年』。50周年記念ライヴのハイライトをまとめたものだった。colloidが、中村佳穂さんのゲストとしてちらっと映っていた。●水曜日、lakeと児玉奈央の4曲入りEP『last summer』(compare notes)がBandcampにあったので聞いた。2024年9月25日リリースとあるものの、盤についての情報がないのだけど、あれこれ検索していたら、去年の秋にアナログ盤が出る予定だった、みたい。どうもそのときには出なかったようなのだけど、それがいよいよ出るらしい。最初、last summerを去年の夏にリリースされていたのか、知らなかったと勘違いし、タイトルだと気付いたのだけど、享年の秋のリリース予定は知らなかったのだから、勘違いとも言い切れない。●やはり水曜日、優河『Love Deluxe』を配信で。タイトル曲の動画を見て、同姓同名の別人かと思ったくらいのダンスミュージックでびっくりした。どうなっているのかという興味もあって、まるまる聞き通してしまったけれど、その直後に、母の不安をなだめる必要があり、余韻が吹き飛んでしまった。●『ホールドオーバーズ』のサントラを改めて聞いていて、ええかんじの劇伴の作曲者、マーク・オートン Mark Orton が、Tin Hat Trioのひとであることを知った。気付いていなかった。節穴だ。●略すのであれば『望郷』とだけ書くべきだと思うのだけど、度胸がない。『サンダカン八番娼館 望郷』をBS松竹東急で放映していたので、見た。当人に隠したまま研究のための取材をしてしまっていたことを打ち明け、詫びる場面でいつも一緒に泣いてしまうのだけど、今回改めて見てみて、おサキさん(田中絹代)の泣きかたに胸が詰まる思いがした。不安になった母の泣きかたに似ていて。泣くことを忘れてしまったひとの泣きかたのように思えて。●ドラマはずっと見ているもの以外では、先週から『Shrinkシュリンク 精神科医ヨワイ』は見ています。

 南陀楼綾繁さんの投稿て、RYUTistの活動休止を知る。南陀楼さんを通じて知り、アイドルというありかたは苦手だけれど、いい曲があるので、何枚か買った。「いい曲」で評価すると、アイドルへの嗜好を曲云々で偽装している「楽曲派」と揶揄するということもアイドル界隈であるらしいのだけど…んなこと知るかい。

 坪田保くんの投稿で、川崎ゆきおさんの訃報を知った。大好きな作家。なんとも言えない。自身のやりかたで、(ぶさいくでも)、ひとりでやり続けたひとなので、最期を助けてくれたひとがいたのか、気になってしまった。作品はまだ読み返せない。代りといってはなんだけど、『はっぴいえんどかばあぼっくす』で、川崎さんがイラストをてがけた通称『ゆでめん』を聞いた。

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