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2020年10月11日〜2020年10月17日


10月11日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2020年10月11日】
 台風14号(CHAN-HOM、チャンホン)接近の金曜日。帰宅時には、雨はそれほどではなかったものの、風は強く、傘が折れそうだった。という訳で、自転車を倒しておいたのだけど、朝、起きたとき、テレビを点けても、通常仕様で、様子を見てから、雨戸を開けても、おとなしいかんじだった。自転車を倒しておいたのは、えらく大層なことになってしまった。結果的に、だけど。午前中には、小雨に。あれやこれやのいつもの用事も、やらないつもりだったのだけど、通常どおりに。
 届くはずのものがいくつか届かなくて、やきもきしている。連絡せんとあかんか…。一方で、水曜日に申し込んだものが、早くも金曜日に届いた、のだが、台風の影響による雨で、ずぶ濡れに。乾かしてから、開封。影響はなかったけれど。

 先週の金曜日の夜、NHK-BSで『ちゅらさん』総集編を放送していて、つい、見てしまって、録画しとくんだった、と思ったのだけど、月曜日、帰宅すると、BS12で本放送をやっていた。何故、いま、『ちゅらさん』。当時も好きで見てました。「ちゅら連」なんて、あるひとに呼ばれたりしたな。小浜島生まれの主人公の天真爛漫な行動を軸にしたものだけど、取り巻く周りのひとびとが必ずしも「暖かく」は見ていないところがよかった。純真だからよしとするのではなくて、そのことが及ぼす思いもよらない結果や波紋にきちんと直面する話になっていた。

 主人公の芯にある天真爛漫さの描写を支えていたのが、子供時代を描いた一週間だったのだけど、調べてみると、主人公を演じた 浦野未来さんはその後、俳優にならなかったようで、情報がなかった。主人公の子供時代の様子はとてもよかったので、大きくなってどんな役者になるか見てみたかった気もする。
 あと、主人公の父親を演じる堺正章さんの沖縄ことばが印象的だった。うまいのか合ってるのかはわからないのだけど、「であるよね」がキャッチフレーズのようになっていた。

 活発に動けず、見えにくく、聞こえにくい母の数少ない楽しみは、テレビ(爆音 with 字幕)とラジオなのだけど、このところ、面白いものがない、面白くないと言う。その上、嫌いなタレント、嫌いな種類の番組がいろいろあって、映るたびに(同じ)文句を聞かされるので、事前にわかっていれば、それらは避けるし、一緒に居るときは機嫌よく見られる番組にしたい。いまやってるドラマでは、NHK『天使にリクエストを』のくいつきがよかったので、昨日も見てみたのだけど、今回は途中で引き上げられてしまった。終盤になって、登場人物たちの過去をたどる話になり、現在と過去を行ったり来たりすることに、ついていけなくなったのだと思う。特に今回は、封印していた記憶に繰り返し立ち戻ることで、ようやく取り戻すという話だったので、余計に混乱してしまったかもしれない。毎回、依頼者に、(最後に)聞きたい曲を尋ねて、主人公たちが歌う場面があるのだけど、第3回の依頼者(塩見三省)のリクエストは「生活の柄」だった。エンドタイトルで、作者のクレジットがなかったのが気にはなっているけれど。

(母は気ぃよく見てるドラマでも、映るもの映るものから、自分の思い出や考えに話をつないでしまうので、気が抜けない。)

 NHKのドラマでは『一億円のさようなら』は、母が好きな上川隆也主演だし、サスペンスものなのでよさそうに思ったのだけど、これも現在と過去を行ったり来たりするので、あかんな、と思って、薦めていない。成り行きが気になるので、わたしは見ますが。そう言えば、『一億円のさようなら』の主人公は製薬会社勤めだった。今秋、3本目の製薬もの。

 ドラマと言えば、『親バカ青春白書』は楽しんで見てた。永野芽郁、新垣結衣という素っ頓狂な役が似合うコメディエンヌが素っ頓狂な役をやっていて。ひとによっては、頓珍漢に見えるかもしれないけれど、調子っぱずれと勘違いはちがうのだ。周囲と合っている、合わせていると思い込んでいるのが後者で、前者は端から合わせることを考えていない。
 音楽は、バカラックあたりの60年代コメディ映画のサントラ、の影響を受けた日本のホームドラマの音楽パロディのようなかんじで、あざといと言えば、あざといのだけど、ホームドラマの感じはよく出ていた。サントラ盤があればちょっと欲しいかも、と思って、定額制配信で探してみたら、あった。のだが、曲名がすごかった。

受験番号
落研
入学
課外活動
掲示板
アトリウム
食堂
ゼミゼミ
総務課
情報処理通信センター
コンパコンパ
事務局
大学生協
休講
サークル
シラバス
卒業論文
レポート
履修登録
合格発表
学生証
フィールドワーク
必修科目
第二外国語
文学部
教授
学士
カリキュラム
卒業
概論
以上、『親バカ青春白書』サントラに記載された曲名、でした。適当に当て嵌めたかんじがものすごい。メインテーマ曲のタイトルが「受験番号」て。ゼミゼミ、コンパコンパの連呼も謎です。

 また、めんどくさいことを、と思われると思いますが、ツイターで見かけたハッシュタグ「#過小評価されてると思う私的に最高な邦楽アルバム10選」による大喜利(10月3日にスッパマイクロパンチョップさんが提案したらしい)にはどうにも乗れなかった。フォローしているひとの中で、これに乗ったひとは、9月末で、運営団体の撤退により「室戸ドルフィンセンター」の所長を退任された松島玉三郎さんだけだったけど、松島さんが選んだものには、RIKAさん、マンナ、あがたさん、ザバダック人脈による宮澤賢治のアルバムが含まれており、マンナとあがたさんについてはどちらかと言えば光が当たっていない作品なので、いや、まあ、たしかにとなったのでした。

 何故乗れないかと言えば、自分がよいと思っているものについて、世間の評価が低いと言うことに、です。この手の話題になると、いつも、「どこの世間か」と思う。世間の評価は低いが、自分は高く評価していると言うことは、特に何も「価値」を「評」していないのに、何か言ったかのように振る舞うときの常套手段で、結局、自分かいっ、としか受け取れないから。

 それはともかく、まず、過大評価、過小評価は、評価に対する言葉です。何らかの評価があって、それに対して、その適正さを評して、過大、過小を言う。どのような評価がなされているのかがわからなければ、過大も過小も言えない。でも、「過小評価されていると思う作品」という場合に、前提となる評価が明らかにされる訳ではない。売れてないとか知られてないとか話題にならないといったことから、低い評価を想像して、それに対して異を唱えるという趣向だけど、それはつまり、定評が「ない」ということであり、とすれば、過大も過小もないのだ。結果として、知らないひとには評価もなにもない、あるところでは高く評価されている作品が、いきなり「過小評価されていると思う作品」とされてしまう。それはちょっと、と思う。過小評価されているかどうかは、定評を知らないので言えない、のだ。「#自分の周りでは推しているひとがいないけれど」なら乗れたかな。…ああ、めんどくさいやっちゃな。

10月12日(月)
[一回休み]
10月13日(火)
[一回休み]
10月14日(水)
[一回休み]
10月15日(木)
[一回休み]
10月16日(金) 【▼ぐりぐらメモ/2020年10月16日】
 体温は引き続き、朝いちばんは摂氏35度台で、おおむね半ば。日中はたまにしか計らないけれど、プラス1度。血圧は先週は連日130を越えていて、不安になったが、今週は120台。不安になったからとて、体調に変化がある訳でなし、気のつけようもないのだが。

 歌謡曲/ポップス作曲家、筒美京平さんの訃報。ヒットメーカーに徹したひとであり、曲がすべてのひとだったと思うし、クセや節で仕事をしていたひとではなかったので、自作するひとたちに抱く「期待」は持ちようがない。ただ、ただ、発表された曲がよかったかどうかで残るということでよいと思う。矛盾したことを言うようだけど、実際にヒットしたかどうかは別。ヒットすることを前提に作られたものであることが、筒美作品においては重要で、そのためのさまざまな工夫をしていた。そのうちのいくらかの工夫がよかった、とだけ。

 ただちに思い浮かぶのは、我が家では当時、弟のテーマ曲といってよかったいしだあゆみ「ブルーライトヨコハマ」であり、物心つく頃に、それまで坂本九が担っていたように思う叙情をもたらしてくれた堺正章「街の灯」「さらば恋人」であり、太田裕美のたくさんの歌です。
 確か「きんきんケロンパ歌謡曲」でデビュー曲を歌うところを見て以来、太田裕美の歌のファンだったけど、曲は、とりわけ「恋愛遊戯」が印象的だった。「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」のあと、やや寂しげな曲が続いたのちに、アルバムタイトルどおり、ひらがなの「こけてぃっしゅ」な様子を感じさせる、からっと晴れやかな曲が出てきて、心躍った。…言うたら、前半はアントニオ・カルロス・ジョビン "Desafinado" を下敷きにしているのだけど、当時は知らなかった。でも、先に聞いたのは「恋愛遊戯」やしなぁ、等々、ああだこうだ書こうとして、やめて、「好きな曲」とだけ書いたのだけど、楽天食堂の小川雅章さんのツイート「どこかで聞いたことある、というよりあそこで聞いた、って曲が多かったよねぇ」(2020年10月12日、21時25分)に膝を打った。知ったあとで聞き直しても、イントロから後半への展開まで、要素をちがうものに活かす手腕に、なんというか呆気にとられた。えっ、そっち、てなかんじで。

 定額制配信は、きっかけがあったら検索するというかんじなので、「いつの間にか」ということがよくあるのだけど、太田裕美さんの諸作も以前はあがっていなかったと思う。それが多くのオリジナルアルバムが聞けるようになっていた。早速、アルバム『こけてぃっしゅ』(当時、ラジオにゲスト出演されているのを散髪屋で髪を切ってもらいながら聞いた記憶がある。タイトルについて話されていた)を聞いた。それから、『シングルA面コレクション』を聞いたのだけど、「恋愛遊戯」のところで、おやっ、となった。ギターが大きくて、パーカッションやベースが抑えめ。シングルバージョンということなのだろうか、でも、シングルもこんなかんじではなかったと思う。検証のためにシングルやベスト盤CD『Golden J-Pop / The Best』を探すも、出てこず。うーん。(代わりに、以前知り合いが話題にしていて、探したものの出てこなかった鈴木さえ子「Happy End」シングルバージョン入りの試聴用CDが見つかった。探しものあるある。)

 火曜日の昼に、宅配便会社から携帯に、明日、配達予定のものがあるので、よければ時間指定をと連絡があった。指定の連絡もできるだけ早いほうがいいだろうとまっすぐ帰宅。翌日の19時から21時の間を指定した。遅くなるのは申し訳ないけれど、19時ならがんばったら帰れるので。
 で、水曜日、一応、夜に配達があることを母に告げて出た。そしたら、昼過ぎに「なんか来たよ」と母から連絡が。あ、それは言うてたのんとちがうわと返信。予定日から一週間以上過ぎているので、そろそろ連絡を入れようと思っていたものが届いたらしい。ともかく、急いで帰宅。18時50分、自宅着。間に合った、と思って、玄関を開けたら、荷物が二つ。あれ、もう来たのか。聞いたら、今来たところで、入れ違いだと云う。そ、そんな。

 昼に届いたのは、リチャード&リンダ・トンプソンの集大成ボックス8枚組 "HARD LUCK STORIES 1972-1982"。なかなか届かないうちに、再生やPCへの取り込みができない盤がある、との情報が回ってきて、さらにやきもきさせられていたのだけど、ともかく発送済みの連絡は来ていたので、あきらめて届くことを祈ってた。届いたことで少しだけほっとした。
 帰宅する少し前に届いたのは曽我部恵一さんの12インチシングル「永久ミント機関」。曽我部さんは、周囲に好きなひとが多いけれど、一回り下の世代のロックスターというかんじで、積極的には聞いていなかった。今回、シングルを買ったのは、ジャケ買いです。ジャケ買いを成り立たせるために、告知とほぼ同時に配信が始まったのだけど、聞かずに、注文を入れた。ジャケは、伊藤重夫『踊るミシン』の一場面を切り取ったものなのでした。
 注文を入れたあとで、聞いてしまったけれど。晴れやかに上気するかんじのダンサブルなポップスで、うちにはあまり無いタイプだけど、よかったのでよかった。どちらかと云えば、12インチには入らないShort versionばかり聞いていたのだけれど。

 木曜日、帰りに、思い立って、去年の夏まで仕事をしていた事業場まで歩いてみた。閉鎖が決まっているのだけれど、去年いっぱいは、ひとつひとつ取り壊されていくのを横目で見ながら、残っているひとたちとのやりとりのために行くことがあった。今年になってから、ウイルス感染防止対策で在宅勤務のひとも増えて、行くことがなくなった。残っていたひとたちも、10月末をめどに移動するという話を聞いて。もう6時(誰が耄碌爺じゃ)ともなると、日は落ちてしまって、よく見えなかったけれど、その建屋ひとつ残して、ほとんど無くなってしまって、向こう側の灯りが見えていた。駅から事業場の門まで約10分(建屋までさらに数分かかっていた)。途中にある喫茶店と沖縄料理店が閉店していた。沖縄料理店では、よく歓迎会や送別会をやったので、しんみりしてしまった。構内の売店のひとたちにもよくしてもらったので、建屋ごとなくなっているのを見たら、やっぱり寂しい気持ちになった。寂しい話が続く。

10月17日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2020年10月17日】
 リチャード&リンダ・トンプソン "HARD LUCK STORIES 1972-1982" は、6枚のオリジナルアルバムに、結成前のなれそめ期間の録音を集めた編集盤と75年と77年の未発表ライヴ録音を加えたもの。後半のアルバムはCDを持っていないし、あちこち散らばっている発掘録音などがまとまっているのがありがたい…という言い訳をしながら注文したのだけど、カバーデザインがよかったから、というのも大きい。
 ハードカバーの大判ブックレットは、アイドルの写真集かと思えるくらい、ふたりのアップの顔写真が多くて、照れる。電車の中で広げられない(邪魔という説もある)。歌詞と、発掘録音などの初出情報が無いのが少し残念。出典は、ライナーノートの中に書き込まれているのかもしれないけれど。という訳で、まとまっているのがありがたいと云いながら、あれやこれやを引っ張り出してくることになってしまった。

 1枚目 "SOMETIMES IT HAPPENS (1972-1973)" は、フェアポート・コンベンション周辺のメンツによるロックンロールカバーアルバム、ザ・バンチ The Bunch 名義の "ROCK ON"(1972) から。これも持ってない。4曲収められているうち、"Sweet Little Rock 'n' Roller" は別バージョンが今回初出、"Whe Will I Be Loved" はデモだけど、どうやら、リンダさんとヴォーカルを分け合っているサンディ・デニーのレアトラック集で発掘されたものらしい(もしかしたら、瞬殺で手に入れられなかったボックスセットが先かもしれない)。
 次に、リチャード・トンプソンのソロ、"HENRY THE HUMAN FLY" (1972)。CD持ってなかった、そう言えば。ここから2曲と、そのときの没曲 "Amazon Queen" が初出。ただ、この曲には、リンダさんは参加していない。
 続いて、リバプールの詩人で、ロジャー・マッグー、エイドリアン・ヘンリと共同で詩集を出したり、グリムズに参加したりしているブライアン・パテン Brian Patten(読みかた、表記は仮)の歌と詩の朗読のアルバム "VANISHING TRICK: Poems and Songs" セッションから3曲。うち1曲は、リンダさんの足跡を辿った発掘録音多めの編集盤 "DREAMS FLY AWAY: a history of Linda Thompson" で発掘された "Somethimes It Happens" の、レコードに収められたニール・イネス作のものとは異なるマイク・ウエストブルック作のメロディーが付いたデモ。ちなみに、残りの2曲もウェストブルック作曲だけど、どことなくトッド・ラングレンっぽいところもあって、とてもいい。このアルバムがCD復刻されていたことは知らなかった。ただ、リンダさんが歌っている曲は、ニール・イネス版 "Somethimes It Happens" を含め、裏 "DREAMS FLY AWAY" として企画されたリンダさんの編集盤 "GIVE ME A SAD SONG" で聞くことができる。

 ここでちょっと覚書。"Sometimes It Happens" のクレジットに混乱があるので整理。"DREAMS FLY AWAY" では、マイク・ウエストブルック作曲、ギターはリチャード・トンプソンとなっているのだけど、ボックスでは、リチャード・トンプソン作曲、ギターがマーティン・カーシーとなっている。発掘された「音源」は、マーティン・カーシー所蔵のアセテート盤であることは共通している。カーシーさんが所蔵していたことについては、"GIVE ME A SAD SONG" の解説に面白い記述があった。"VANISHING TRICK" のプロデューサー、マイク・ステインは、カーシーのギター伴奏によるリンダさんのデモを録音したことがあった。それで、リンダさんをヴォーカリストとして呼んだのだが、どうやら、リチャードさんがそれにくっついて来たらしい。ところが、ステイン氏にはリチャードさんのギターが面白くない。なんでちゃんとしたギタリストと一緒にやらないのか、と思って、カーシーさんになんとかしてもらおうとデモ録音が入ったアセテート盤を送ったということらしい。カーシー氏は、これでよいのではと参加を見送ったのだそう。ただ、ウェストブルック版が没になったということは、やはりプロデューサーとしては気に入らなかったのだろうと推測できる。この話の経緯から言っても、件の録音のギターはトンプソンであると思われ、"DREAMS FLY AWAY" の記載が正しいのではないかと思う。残りの2曲については、ボックスセットでは作曲者の記載がなく、それはちょっとどうかと思う。
 面白いのは、と面白がっていてはいけないのだけど、さらに問題が。今回、あれこれ調べていたら、ウイルコが "Sometimes It Happens" をカバーしていることを知った。"THE WHOLE LOVE" に入っているらしい…というのだけど、記憶にない。初回の2枚組CDを買ったのに。と思ったら、アナログ版にのみボーナストラックとして収録されていたらしい。知らんかったよ。で、でも、まあ、いまだとYoutubeで聞けてしまうので、聞きました。ニール・イネス版でした。なのだが、どうやら、作曲はウェストブルックということになっているらしいのだ。嗚呼。

 閑話休題。"SOMETIMES IT HAPPENS" には、1973年にリンジー・クーパーとのトリオで録音された "The World Is A Wonderful Place" と "Restless Boy" も収められている。前者を初めて聞いたときは驚いた。参加メンツがよいので買ったリチャード・トンプソンのカバー集 "THE WORLD IS A WONDERFUL PLACE: the songs of richard Tompson" を買ったら、リンダさんの声の歌が入っていたのだけど、確かめてみたら、その13曲目の曲名が書かれていなかった。演奏者情報にもない。どういうことや、と思ったら、謝辞の末尾でひっそりと謎が明かされていた。"to R.T., L.T., Lindsay Cooper & John Wood for recording out title song back in 1973."。リンジー・クーパーさんの初期録音でもあり、つながりにびっくりした。これは、リンダさんの友人のおそらく劇作家バーバラ・ゴードンが構想していたミュージカルのために作られたものということで、リンジーさんも演劇関係のつながりなのではないかと推測している。バーバラ・ゴードンさんのその後の活動が不明なので、推測でしかないけれど。この2曲は、"GIVE ME A SAD SONG" に収録され、その解説で経緯を知ったのだけど、ボックスセットの解説には、ゴードンさんの名前はない。
 "SOMETIMES IT HAPPENS" の最後は、デュオによる72年10月25日と73年1月のライヴ録音。初出は不明。2006年のCopyright表示がある。知らなかったリチャード・トンプソンのボックスセットからだろうか。

 Disc 2はデュオとしてのデビューアルバム "I WANT TO SEE THE BRIGHT LIGHT TONIGHT"(1973)。追加5曲のうち、"DREAMS FLY AWAY" に収録されていた "The Great Valerio" の75年3月16日、いわゆる「レインボウ最後の日」のライヴ録音を除く4曲が初出。セッションのアウトテイク("The End of the Rainbow" のリンダさんヴォーカル版と未発表曲 "Mother and Son")とデモ録音( "Down Where The Drunkads Roll"、"A Heart Needs A Home")。"A Heart Needs A Home" はこの時点では見送られていたのか。
 「レインボウシアター」閉館に際してイベントが行われたのかな、その録音は、ライヴアルバム "OVER THE RAINBOW (The Last Concert, Live!)" になっていて、リチャード・アンド・リンダ・トンプソンの演奏も入っている。ただ、その "Hokey Pokey" はボックスセットには収められていない。このアルバムは、大昔、「阪急32番街」の上階にあった巨大レコード店「Daiga」で見かけたことがある。のだが、当時は、ジョン・マーティンやケヴィン・コインは聞いていなくて、見送ってしまった。その日に買ったレコードは、どれも、いまも買えるし、定額制配信にすら入っているのだけど。そのときは、そのときで、それらも「聞きたかったけど、見かけなかった」のだから、しかたがない。1978年春から夏にかけての頃の話。

 Disc 3は、"HOKEY POKEY"。追加は2曲と少ない。1曲は、76年発売のリチャードさんのレアトラック集 "Richard Thompson (guitar, vocal): A Collection of Unreleased and Rare Material 1967-1976" に収められていた "A Heart Needs A Home" の別バージョン。もう1曲は、タイトル曲のテレビ番組 "Marc Time" 出演時の録音。うちにある最初の3枚のCDは、ハンニバル/ライコディスクから再発されたものだけど、2004年にはアイランドからもボーナストラック入りで再発された。それらは結局見送ったのだけど、"HOKEY POKEY" にはBBCセッションが3曲収められていた。それで、今回、検索してみたら、リチャード&リンダ・トンプソン時期を含むBBCセッションのボックスセットが出ていた。何故知らなかったのだろう。フェアポート・コンベンション、サンディ・デニーは買ったのに。
 2004年版のボーナストラックとして、ラウンドハウスでのライヴ録音が、1枚目に3曲、2枚目に1曲、3枚目に1曲収められているけれど、ボックスセットにはどれも入っていない。ちなみに、あとは、"(guitar, vocal)" に入っていたオックスフォード工科大学、クイーン・エリザベス・ホールでの75年の録音…て、あれっ、クイーン・エリザベス・ホールでの録音って、今回のボックスセットで全曲未発表と記されているDisc 5 "MADNESS OF LOVE (LIVE 1975 & 1977)" に含まれてるやん。詰めが甘い。
 
 Disc 4の "POUR DOWN LIKE SILVER" には、オックスフォード工科大学のライヴ録音から3曲が追加されている。このときの録音は、"(guitar, vocal)" に3曲収められているけれど、07年に"in Concert, November 1975"として一枚にまとめられた。3曲のうち、2曲は "(guitar, vocal)" から、残りの1曲は "in Concert, November 1975" からということになる。"(guitar, vocal)" 収録曲のうち、"Night Comes In" はボックスセットには未収録。それどころか、改めて、見ていたら、"in Concert, November 1975" にも、他の2曲は「"(guitar, vocal)" で発表済」とあるのに、"Night Comes In" には触れていない。聞き比べてみたら、演奏がちがう。どういうこと…と思ったら、"in Concert, November 1975" はオックスフォード工科大学だけでなく、75年11月に行われた3か所のライヴから構成されていた。ちゃんと読んでなかった…。
 Disc 4には、もう1曲、"Dimming Of The Day" のデモが今回の初出として収められています。

 ここで残念なお知らせ。不良盤情報が「確認のため、じっくり聞かせるためのデマ」だったらいいのにと思いながら、聞いていたのだけど、手元のものにもついに症状が。Disc 4の最後に収められている "Calvary Cross" の途中でエラーが出てしまった。うーん、面倒なことになったぞ。

 きょうは昨日の夜から続く雨の一日。外出の予定はとりやめ。

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2020 Kijima, Hebon-shiki