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2019年8月11日〜2019年8月17日


8月11日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2019年8月11日】
 金曜日は、間借り先は既に夏季休暇に入っているので、事務所の移転準備だけ。前日の時点で、担当業務の資料を保管しているロッカーの片付けが7割、自分の机まわりにはまったく手を付けていない状態だった。少し、休暇明けの準備もしつつ、仕分けと梱包。いつもなら、包んだ上で置いていくマグカップも持ち帰らなければならない。ついでに、机まわりを少しでも楽しくするためのなんやかんやも持ち帰る。積み残し作業があったら、休み中で出てきて、片付ければいいやという訳にも行かない。休みが明けたら、いきなり移転先だし、できるだけすみやかに仕事に取り掛かれるようにしたいとは思うものの、思ったとおりに行くかどうか。しかも、初日は、間借り先はまだ休暇中なのだ。

 土曜日、有給休暇をとって、夏季休暇に。午前中、墓参り。この猛暑でタクシーの時間指定ができず、弟一家とは別々にお参りすることになったけれど、昼に合流。戻って、姪のピアノ発表会の映像を見せてもらってから、京都に出た。

 京都・出町柳「トランスポップギャラリー」でのうらたじゅんさんの追悼展「なつあきふゆはる」に。16時からのお別れ会「夏のてっぺんで/うらたじゅんさんにまた会う」に参加するので、こころもち急いだけど、15時30分着。彩りのある風景を描いた絵を中心に、漫画やスケッチ、新聞記事やイラスト仕事など。風景を描いた絵十葉を収めたトランスポップギャラリー謹製(店内の活版印刷機で表紙を印刷、穴あけとリング通しは手作業とのこと)『うらたじゅん作品集』を購入。

 出町柳駅前の路地を入ったところにあるカフェ「かぜのね」でのお別れ会「夏のてっぺんで/うらたじゅんさんにまた会う」に。着いたら、ジギタリスのアルバムがかかっていた。劇団「ZIGI」の木村紫光さんと尾崎隆夫さんが主催。スピーチや式次第はなくて、あちこちで思い思いに飲んだり食べたりしながら、うらたさんのことを話したり、うらたさんを通じて知り合ったひとたちに近況を伝えたりしていた。写真のスライド上映も。最後の一か月に病床で書かれたメモに、ユズルさん(みんながユズル、ユズルと呼ぶので、ペンネームであることをいまのいままで知らなかった)が補足したものを読んで、泣いてしまった。せいいっぱい生きはった、という言葉しか思いつかない。
 天真爛漫とも思える行動力や関係を作っていく力にひっぱられたり、背中を押してもらったりしたことを、話すたびに思い返していた。でも、ちゃんと考えて、声をかけたり、紹介してくれていたのだと思う。それに応えきれてないこともまた思い返していた。

 うらたさんには、人間関係や仲間意識で書いていないことを何度となく褒められた。音楽について書いていても、演奏するひとではなく、聞いているひとに向かって書いている、そうしたところを読者は読んでいるので、それを忘れてはいけない、と。うらたさんと親しかったひとたちと話をしていても、書く姿勢について、確かめるところがあった。それって、考現学みたいなものではと言ってもらって、そうかもしれないと改めて思ったり。

 会場は、地元に近いということもあって、学校のときからの友人たち、演劇や音楽の仲間といったひとたちがほんとに思い思いに話をされていた。小耳にはさんで話を聞いていました。ふちがみとふなとによるうらたさんの自作曲「赤い実のなる木」の演奏や嶌村カズヲさんの演奏もありました。帰るときは、はちみつぱい『センチメンタル通り』が流れていた。うらたさんとは、あがた森魚さんのライヴの帰り道で知り合ったのだけど、いちばん好きなのははちみつぱいの『センチメンタル通り』で、洋楽ではブリジット・フォンテーヌの『ラジオのように』と話されていた。ニール・ヤングやドアーズのこと、ドノヴァンのコンサートに行った話も聞いた。いまでも、うらたさんに教えたら喜んでくれるのではと思うことがよくある。これよかったですよ、と伝えられたらいいのに。

8月12日(月)
[一回休み]
8月13日(火)
[一回休み]
8月14日(水) 【▼ぐりぐらメモ/2019年8月14日】
 月曜日、神戸に。遠出するときは、つい、ついでの用事をひっつけようと考えてしまうけれど、「サンテレビボックス席」展は14日からなのであった。他に寄るところは…とりあえず、最近、大きな書店に寄れていないので、頭にある本を覗きに、大手書店に。めあての本のひとつがある、にはあったのだが、その前に思いがけず、気になっているイラストレーターの作品集が出ているのを見つけてしまった。木内達朗さんの『木内達朗作品集』(玄光社)。コンピュータ上で版画風の作品を描くひとで、本の表紙やパッケージを多く手がけられている。気になって、調べてみたら、このひとの作品だったことが重なって。個展があればといっとき、ツイートをフォローしていたこともあるのだけど、なにか事情があったのか混迷状態になっていったので、読むのをやめて、それきりになっていた。店頭で見て知ったときは、教えてくれた恩義で、その店で買うようにしているので、ちょっと値の張るものだったけど、めあての本を見送って、買うことにした。

 まだ時間があったので、元町の「1003」に。ここでももうひとつの念頭本を期待したのだけど、それはなくて、でも、代わりに通販でとるべきかどうか迷っていた「しおやカルタ」があったので、ぐるっとチェックしたのち、買うことにしました。「1003」に「雲遊天下」がバックナンバー含めてありました。

 「space eauuu」に。18時開場だと思って、少し過ぎた頃に行ったら、既に始まっていた。映像と音を組み合わせた3組によるイベントで、出演は、長野雅貴+コヤマエイジ、Otomi Chie+heureux、CORONA。始まっていたのは、コヤマエイジさんのモノクロ化した静止映像のコラージュに、長野雅貴さんのノイズやギターを組み合わせた演奏。迷い込んだ路地裏で、耳を澄ませているような感覚。heureuxさん(ウルーになるのかな、読みかた。バチカさん)の幾何学的な模様をリアルタイムで変化させる映像とOtomi Chieさんのやわらかな電子音の組み合わせは、ぽやんぽやんしていて、起承転結のない散策のようでした。収束しないのがいいなといつも思います。CORONAは、山本雅史さんの電子音、eyekotanabeの液体を使ったライトショー、ナナン(Ananto Wicaksono)さんのワヤンのトリオ。伝統的な影絵の民話、神話のときとちがって、生々しい表現もあるストーリーが感じられた。液体による映像は、得体のしれない生物が潜んでいるようで、面白かった。三者三様で、楽しい企画でした。

 火曜日、暑くて、動けない。冷麺の出前をとった。夕方から出て、遠回りして、北浜に。「雲州堂」でのカーテンズ企画「火曜ラボラトリー」を聞きに。毎年来られているのだけど、今年は、前に冬支度の安田さんからよかったと聞いていた4人編成での来阪と聞いて、dodoを聞きたくて。カーテンズは、尾崎珈琲さんソロによる「夏なんです」でスタート。エンディングでは、田中陽介さんのソロでスタート、と各々のソロとデュオの違いを聞いてもらおうという趣向でした。田中さんがソロで演奏した「エンド」という曲が青木孝明さんを思わせる遠心力があって、よかった。デュオでの演奏も、きらきらしていて、特にエンディングでのコーラスが映える「カラーコンタクト」がよかった。MIKA & No tengo hambreは、以前、何かのきっかけで聞いてみたことがある林ミカさんを中心とするピアノ&ヴォーカル、チェロ、ベース、サックスのカルテット。ピアノ&ヴォーカルとサックスの双頭バンドという印象で、そうすると、ヴォーカルが隠れがちになるような。歌を聞こうとして、注意が散漫になってしまった。チェロもあまり生きてなかった。サックスはマイク無しのほうがよかったかもしれない。
 4人編成dodo。ちょいちょい聞いてはいたものの、ぐっとくる一歩手前だったので、ナマ演奏を聞く機会を持たないでいたのだけど、よい機会だと思って。デュオに、ドラムスとキーボードが加わった形だけど、バンドのアンサンブルによるせめぎあいが、歌の中にある翳りや小さな喜びをうにょうにょと醸成していくかんじがして、わくわくさせられた。『4 to 3』の小川美潮さんや『LOCOMOTION』のsakanaをちょっと連想するところもありました。特にぐっときた歌は、まだ作品集に収められていないけれど、現在、4人編成による録音を進めているところとのことで、楽しみです。soundcloudにライヴやリハの録音がアップされていて、とりあえず聞けます。「大人になったうちだあやこさん」、「夏が暑いのは当たり前じゃ音頭」など楽しいです。

 水曜日、台風10号が近づく中、まだ行けそうなかんじだったので、すっかり忘れていた「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展を見に、京都・岡崎「細見美術館」に。本の原画をずらりと展示。『夜の木』の下書きが興味深かった。タラブックスという手作業の多い特異な工房の紹介としては、「奈良県立図書情報館」での「タラブックス展 インドのちいさな出版社とゆかいな本づくり」のほうが、ミスプリントの展示などあり、得るところが多かった。ビデオにその役割を任せたかんじ。

 京都は降ったり止んだり。降っていなくても、空気中に雨がちりばめられているのではと感じるときもあった。琵琶湖疎水などを眺めて…も涼しくはならないのだが、歩いて、荒神口に。森さんの店「moshimoshi」での「けはい とうめいロボの絵」展に。生まれてくる前のいきものたちのような眩い存在がいるかと思えば、快活な印象の、動きのある子どもたちもいる。ライヴのチラシなどで発表されたものが多いとのことだけど、続きが気になる物語をもった絵でした。展示されていない作品を含むポストカードを3枚買いました。ライヴもひさしく聞いてないなぁ。

 今出川まで歩いていくうちにやや雨が強くなってきたので、(暑さもあり)バスで浄土寺まで。「ホホホ座」に。気になっていた山川直人さんの『猫町』を。棚には一冊しかなかったけど、最後の一冊だった、のか。2009年に刊行されたものらしいけど、知らなかった竹田耕作・竹田啓作編著『京都繁華街の映画看板 タケマツ画房の仕事』(キャッスル・カンパニー)も購入。カラーページは貼り雑ぜっぽくごちゃごちゃしているのが少し見にくいけれど、それでも、写真の印刷がとてもきれい。JPEG画像を貼って、文字がデジにじみを起こしているものをよく目にする昨今では目が覚める思い。ついでに面白そうだし、気軽に読めそうと思い、高野秀行・清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』を。そして、買おうと思っていた本をまた見送るのでした。

 ここまで傘なしでなんとか来たけれど、「ホホホ座」を出る頃には強くなっていて、観念して、折りたたみ傘を取り出した。バスで四条河原町まで。

8月15日(木)
[一回休み]
8月16日(金)
[一回休み]
8月17日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2019年8月17日】
 木曜日は、午後に台風が接近するということで、午前中、台風対策を少しやってから、待機状態。台風を待っているようなかんじだけど、正確には過ぎるのを待っていたのだ。でも、関西にもっとも近づくと言われた15時を過ぎても、穏やかだった。雨が強くなってきたのは夕方近くになって。日本列島を通過したあとも風は強くなく、雨量だけを心配していたのだけど(居住市でも山間部は避難勧告が出ていた)、夜遅くになって、強い風が吹き荒れていることが、音でわかった。

 盆と戦争集結の日はとりあえず分けてほしいと思う。慰霊の日に亡霊を召還するようなことをしないでほしい。否定しがたいものに、異論あるものを上乗せしないでほしい。降伏受諾の告知を盆に行うことは意図したものではなかったかもしれないけれど、意図的なものではないかと疑ったひとは当時もいただろうし、ということは「受け取りよう」に落とし込むプロパガンダに使えることを思いついたひともいたのではないか。

 韓国の団体が設置を進めている少女像について、慰安婦像と呼んだのは否定の立場か否定に反対する立場か。運動を「象徴する」像だったはず。外務省は慰安婦像と呼ぶことにしているらしいけれど、否定する立場からだとすれば、あたかも少女が慰安婦にされたかのようにアピールするプロパガンダだとするのはマッチポンプになる。でも、推進する側にそのような意図がないとも言い切れない。日本大使館の前に設置することがそれを示している。でも。ニュートラルなものとして扱って、やり過ごすことができたのではないか。…というようなことを「考える」ことすら否定し、攻撃したのが、「あいちトリエンナーレ」表現の不自由展に火をかけるぞと通告した脅迫犯であり、それを応援した名古屋市長であり、大阪維新の会の連中。今回の「あいちトリエンナーレ」キューレーター、津田大介氏には特に関心はないし、応援の気持ちもないけれど、考えること、考える機会すら否定することにまず反対する。

 それにしても。恥とか言葉とか、これまで言動を「縛る」役割を担っていたものがことごとく役に立たなくなっていることを痛感する。恥や言葉に縛られることを消極的なものとして考えてきたけれど、積極的なありかたを求めることが恥や言葉の力を殺ぐことにつながっていた可能性を思うとつらい。

 金曜日。台風一過で、朝から晴れていた。宿題をやるつもりでいたけれど、進まず。

 きょうも京都へ。火曜日の北浜と同じく、遠回りして。交通費の節約と見慣れぬ風景の旅情とのんびり移動したいという気持ちから。ひさしぶりの場所。卒業以来という訳ではないけれど。学生のときによくミーティングに使っていた駅前の喫茶店は健在だった。生協や食堂があった学生会館は取り壊し工事中。講義ノートを売っていた書店は見当たらなかった。会場を確認してから、ぐるっとひとまわりして、帰りに利用するつもりの駅の場所を確認。地下から地上に出るエスカレーターで浴びる風の気持ちよいこと。そのまま降りて、無駄にもう一回乗ろうと思ったくらい。すぐ近くの公園を散策したり、「コーナン」で涼んだりしてから、会場へ。信号を渡ったら…というところで持っていたiPad miniを取り落とすという失敗を。ああ、また予定外の出費が。

 国道24号線沿いの「アニーズ・カフェ」に。「ねむたい目レコード presents サウンドピロー Vol.2」、出演は安藤明子さん、yojikとwanda。
 最初に安藤明子さん。曲をわずかしか知らないということもあるのだけど、毎回ちがった印象を受ける。きょうは次々と歌われたこともあり、曲によって声の表情に変化があることが見てとれて、こんな声で歌うひとだったっけと思う場面が多々あった。
 yojikとwandaは、『ナイトレイン』発売記念ツアーに行けなかったのだけど、きょうは、発売記念ではなく、この時、この場所に応じた「夜の集会」と言いたくなるような選曲と演奏でした。「短い邂逅」も演奏されたし、聞くたびに、胸がえぐられるような感覚になる「Loop」も歌われた。プロテスト精神が感じられる歌が多かったように感じた。
 10年前にこの組み合わせでライヴが行われたとのことで、アンコールの代わりに、その10周年記念の趣きで、三人での演奏がありました。かわるがわる歌われているのを聞いていると、それぞれがそれぞれに寄っていっているような感覚がした。フレージングのなせるところか。
 バンド編成での発売記念ツアーで発売された『yojikとwandaと元山ツトム』、後回しにしていて買いそびれていたファーストアルバム『DREAMLAND』を購入。

 しばらく通販をしていなかったのだけど、アクセス結果に基づいて、関係ないニュースページやブログを見ていても表示される広告にひっかかり、ひさしぶりにあれこれ発注してしまった。京都行きの前に、コンビニで引き取り。きょう届いたのは、ジミー・クリフ Jimmy Cliff の初期ベスト "HARDER ROAD TO TRAVEL; THE COLLECTION"。"KING OF KINGS 1960-1969" と "WONDERFUL WORLD, BEAUTIFUL PEOPLE 1969 - 1972" からなる2枚組。改めて聞いてみようと思ったきっかけは、ニルヴァーナ Nirvana のアイランド期アンソロジーで、彼らがジミー・クリフに曲を提供していたことを知って。当時、バックバンドにも参加していたらしいのだけど、聞いてみたら、レゲエでもなんでもないまったくのポップスで、びっくりりしてしまって、逆に興味が出てしまった。いくつか聞いた中には "The Harder They Come" の初期バージョンもあった。
 そのあたりが入った編集盤で、れっきとしたと言っていいのかどうか微妙ではあるけれどTrojan/Islandを引き継いでいるUniversalからの発売であるということで、これを選んだ。原盤の番号も記してある、と思って眺めていたら、ニルヴァーナ提供曲 "Waterfall" の作者がジミー・クリフになっていた。ひとつあやしくなると、他の曲についても、確認しとかなあかんからなぁ。うーん。

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2019 Kijima, Hebon-shiki