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2018年5月20日〜2018年5月26日


5月20日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月20日】
 明け方、妙な夢を見た。遠くの町から、夜遅くに、小さな男の子を連れて、列車で帰途についている。途中でその子の姿が見えなくなり、不安な気持ちで探し回る、というもの。男の子は「預かっている」ので甥ということになるのだが、実際に居るのは姪で、甥はいない。

 午後から、元町方面へ。前にたどりつけなかった店や気になっている店など用事もいくつかあったので、今日はこちらに。ハシゴの案もないではなかったけど、強行も避けた。前にたどりつけなかった店はちゃんとあった。確かに付近で建て替えをしているビルもあったけど、そこはちゃんとあった。いくつか候補を見て、いったん持ち帰り。

 ハシゴを検討しながら、そこへの出店を考慮してなくて、閉まっていたところもあったけど、名前をよく見かける「汎芽舎」には行けた。ローウェスト・ノートのシングルは…CDを買ってなかったら買ってた。他にも気になるものはあったのだけど、セーブがかかって、動画で聞いて気になったカニコーセン(ユニット名だと思うので、「さん」は付けない)の『ラ2020』を買った。カニコーセンのひとのような写真をあしらった12インチがあったので、アナログ盤があるのかと思ったら、関係のない海外のひとの作品だった。

 行くつもりでいて閉まっていたところもあるので、少し時間が空いてしまった。このままでは中古盤や古本を掘りに行ってしまうという危惧があったので、珍しく元町駅近くの喫茶店で過ごすことにした。のだが、そろそろ時間だと思って歩き始めたら、「ちんき堂」の看板が目に入り、油断してしまった。ひさしぶりだからちょっとだけ覗いていこう、となったら、ほとんどぎりぎりまで居ることに。一冊だけ。リチャード・ニューマン著 "THE MAKING OF MIKE OLDFIELD'S TUBULAR BELLS"。1993年発売。トム・ニューマンとサイモン・ヘイワースへの取材を含む初期マナースタジオでの制作ドキュメンタリー。先日読んだ『英国レコーディング・スタジオのすべて』の縁のような気もして。マナースタジオのパンフレットの縮小版が綴じ込みで付いている。

 「space eauuu(スペースオー)」に。musika-nt、otomi chie、2o2、白丸たくト。電子音の3組に、急遽、弾き語りのひとが加わったかたち。musika-nt氏は、低音のリズムをキープしつつ、アラームを変調させた音が見え隠れする中、霧というか煙というかに包まれていく心地。アラーム音のせいか、列車のイメージを浮かべてました。ひさしぶりに、otomi chieさんの演奏を聞こうと思って来たのでした。今回は電子音のみ。ざわざわした音の中に、まるみのある、ふわっとした音が含まれていて、それが徐々に姿を現す。テクノとちがう電子音ものは、持続が特徴になるのだけど、どのように持続させるか、何を持続させるかで印象が変わる。シンプルなものから混沌としていくものが多い中で、混沌からシンプルなものに向かっていくかんじがよかった。2o2氏は横に倒したギターを音の発生源として変調を加える。フレッド・フリスのギターソロを思わせるけど、ギターの音のきらきらしたかんじをカットしつつ、(フリスのように)それを孤立させない。どこかでゆるんで、ギターの柔和な音を聞かせてくれてもよかったような気がしなくもないけれど、ストイックでした。白丸たくト氏は、自意識を隠さない若さを感じたけど、隠さないからか、演奏そのものに衒いはなかった。このところ取り組んでいるという詩人の作品(詩)に曲を付けるシリーズは、言葉を自分の言葉とするのではなく、距離をもって映像化しているようなところがあって面白かった。『つぶらなりけりかのひとみ』を購入。

5月21日(月)  
5月22日(火)  
5月23日(水)  
5月24日(木) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月24日】
 休みの日に音楽を聞きに出かけると、そこで食事することも多いので、休みでない仕事日はできるだけ家で食事をとることにしている。帰りが遅くなると翌日に支障が出るということもあるし、そもそもそんなに裕福ではない、という訳で仕事日はおとなしく家に帰っています。今週は、鍼灸院もあり。作業も予定どおり、進まないだろうなと思っていた件は進まなかったし、そのおかげで、そろそろ来るのではないかと思っていた件が来て、進めることができた。そろそろ来るのではと思っていたほうは、4か月ぶりくらいの作業で、細かいところでうっかりしてしまい、昨日は残業する破目に。

 火曜日。おとなしく、と言いながら、自宅最寄駅前のコンビニに寄って、通販物を引き取るとはどういう了見だ、という話ですが、引き取り。月曜日の昼に届いていたので、朝、引き取ることも考えたけど、やめて正解でした。箱がでかい。12インチのアナログ盤はでかい箱で来るということを毎回忘れる。

 届いたのは、アクサク・マブールの2枚目 "UN PEU DE L'AME DES BANDITS" の去年秋に発売された復刻LP。愛読している「編集工房スワロウデイル」で知った。オリジナル盤を持っている(し、CD化されたものも持っている)のだけど、未発表ライヴ録音集 "BEFORE AND AFTER BANDITS (DOCUMENTS 1977-1980, 2015)" と回顧録を掲載した24ページのブックレットが付いている、値段もCDの通常価格と変わらないということから思い切って。ライヴ録音集に、LPが付いている…つもりで。

 持ってるオリジナル盤は、ジャケの一部が剥ぎ取られている。「見ちゃダメ」と犬の目を塞いでいる全裸の女性の視線の先に、やはり全裸と思しき男性の下半身がある、というパット・アンドレア Pat Andrea 氏の絵で、その「見ちゃダメ」な部分が剥ぎ取られているのである。買ったときは、そのことに気付かなかった。そういう絵だということも知らなかったから。どの段階で削られたのだろう。店で削ったとは思えないから、税関で、なのだろうか。その場で削りとってやっと輸入できた、のだろうか。日本盤が出ていたことは知らなかったのだけど、その部分はトリミングされていたらしい。今回のLPは無修正です。表記は aqsakからaksakに修正されてますが。

 帰宅すると、関西のどこかに入荷するのが待ち切れず、「タコシェ」から取り寄せた「黒のマガジン」第3号(特集 水木しげるとアメコミの世界)が届いていた。一緒に、商品一覧を見ていて、面白そうだと思ったミニコミ「少女廣告」創刊號と第三號も。第二號がCM音楽特集だったようなのだけど、それは売り切れていた。残念。
 「黒のマガジン」は、漫画家の藤本和也さんが作っている雑誌で、前号で面白かった、足立守正さんとの水木しげる作品モチーフの元ネタ話の続き。楽しみにしてました。夏にはさらに続きが出るらしい。藤本さんの新作と炭子部山貝十さんの漫画も載っている。

 「タコシェ」の商品一覧を見ていると、前にツイートで見かけた気になった新聞形式のミニコミ「いこい」があるのを見つけた。ただ、いちばん気になった「犬のジャケット名盤・珍盤111」が載っている第4号がない。そこで、はたと気付いた。「ポポタム」でも扱っているのではないか。と、見てみたら、ありました。第4号もある。ということで、まとめ買いすることにした。今日帰宅すると届いていた。テーマを決めて、いろいろ集めている。

 今週は、KBS京都「レコ室からこんにちは」の選曲担当がbikkeさんで、毎日帰りにradiko経由で聞いた。月曜日はMPBで、ミルトン・ナシメント、ミルトン・ナシメントとロー・ボルジェスのClube da Esquina、カエターノ&ガル。火曜日は映画音楽で、キャロル・ロール(『ハンカチのご用意を』より)、キャロル・ロール&ルイス・フューレイ(『ファンタスティカ』より)、ニック・バーカー&アラーナ(『エイミー』より)。水曜日はニューヨークパンクで、モダン・ラヴァーズ、テレビジョン、パティ・スミス・グループ。今日は、ニコ、ブリジット・フォンテーヌ、ソロウズ。最後のソロウズは、映画『イタリア式愛のテクニック』主題歌「君の顔に雨」。ラブジョイの最後のライヴで、日本語詞をつけて演奏していたエンニオ・モリコーネ作曲作品。ソロウズのイタリアで出たアルバムの復刻CDにボーナストラックとして追加されていて、聞いたことがあったのに、ラブジョイが演奏したときに気付かなかった。痛恨。いや、持ってるレコードに気付かないのは、一方的に恥ずかしくて。毎回、最後にラブジョイの「at home」。帰宅途中に聞くと、より、じんと来ます。

5月25日(金) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月25日】
 休みをとって、活動を本格的に再開したコルネッツの演奏を聞きに京都へ。定時退社では、どうしても開演の19時に間に合わないし、間に合わないのにはらはらするのもしんどいし、雨が降れば、最初の30分も諦めなければならない、ので。早めに出て、ひさしぶりにレンタルサイクルのカードを更新。晴れて良かった。この春は、休みのたびに雨が降っていたような気がする。先週、暖かな日に「春ってこんなかんじやったよなぁ、むかし」なんて思っていたのだけど、もう5月も終わりだ。もうすぐ梅雨入り。

 寄ったのは「誠光社」だけ。「トランスポップギャラリー」にも寄ってみたけど、ちょうど入れ替えだったのか閉まっているようだった。「誠光社」では、『早春』の劇場再上映にあわせたイエジー・スコリモフスキ特集の「シネマ・ヴァレリア」5号を購入。

 知らない間に堀川丸太町の交差点にできていた「イズミヤ」内の「モスバーガー」で一服してから、「拾得」に。最初に、スケッツ5(SCKETS 5)。スケッツ=助っ人ということで、 コルネッツの演奏にサポートで参加している川口義之さん、棚谷祐一さん、夏秋文尚さん、西村哲也さん、それに何故だか今回はコルネッツの演奏には参加されていなかった関島岳郎さんの5人で結成されたインストゥルメンタルユニット。棚谷さんが中心、かな。棚谷さん、川口さん、関島さんの曲をこのメンツでのアレンジで。そして、コルネッツのインストゥルメンタル曲「陽だまりの中の猫」を、コルネッツ長谷川さん参加でカバー。やはりコルネッツから池田さんが加わっての棚谷さん作品「1987」が壮大で、よかった。

 すぐにセッティングが始まって、コルネッツ。1曲目からアルバム未収録の「瞳の奥に」。ライヴで演奏されるとは何故か思っていなかった長谷川結子さんの「のびる影」が続く。ここで、じわんと。この後、どの曲でもいちいちじわんとくる事態に。「乳の実+」に収録された活動再開後の新曲「鳩」に続いて、1993年7月17日に心斎橋クラブクワトロで行われた「メトロトロンワークス#3」で演奏されたものの、その後、譜面や録音が残っておらず、幻の曲になっていたという「洗濯」と「養老院」の再演。感無量です。北田さんの曲についてのコメントも聞けた。「洗濯」は気に入っていた曲だったそう。「養老院」は、ダニエル・シュミットの映画『トスカの接吻』を見ようと思いながら見られないでいたので曲を作ってしまったそうで、難儀な音楽家たちが集う施設のことを北田さんが思い浮かべていたのに対して、小熊さんは老いても未来のある様子を思い浮かべられていたようで、そのあたりのギャップがバンドらしくていいなと思いながら聞いていたのでした。そして、そのやりとりが、とてもかわいらしい。

 もうひとつのCD収録新曲「倉庫」は、小熊さんの家がモチーフになっているそう。北田さんの詞のさりげない日常感への賛辞、謝辞が小熊さんから。コルネッツになる前に「Manda-la2」で演奏したという関島岳郎さんの曲に詞をつけた「公園の古い木」、キャット・スティーヴンス "Morning Has Broken" のモチーフになっていることでも知られている讃美歌に新たに詞を付けたハーモニー主体の曲は、コルネッツの4人だけでの演奏。北田さんの硬質な響きのアコースティックギター(パディ・マクアルーンを少し連想させるところもある)、ぽつりぽつりと降るように放たれる池田さんのピアノ、メロディの下支えではないフレーズとリズムを持った長谷川さんのベース、そして、小熊さんの声。バックグラウンドは異なるかもしれないし、それぞれがフィットする音楽は別にあるかもしれないけれど、それらが合わさってコルネッツの音楽になっている。ネオアコ方面に行かなかったポストパンクに近い感触があります。そのあたりを訊ねるインタビューがあればいいのだけど。

 後半は「長い塀」「何か心配ごとあるの」「恋人の犬を連れて」「鍵」と『乳の実』収録曲が続いた。どの曲も新たにアレンジされている。先に演奏された「倉庫」は、勝手に「何か心配ごとあるの」と対になっているように聞いていたので、聞けてうれしかった。「恋人の犬を連れて」は最後の歌われていない歌詞が歌われるのかはらはらしてしまった(歌われません)。最後に新曲の「ジャム」。

 「倉庫」を『乳の実+』で聞いたとき、現在のコルネッツの音を聞いたような気がして、それでやはりライヴも聞きたいと思った。4人で作り出している音楽だということが伝わってきたから。『乳の実』の素敵な曲たちを生み出したひとたちが、いま、また作り出そうとしていることがとてもうれしかった。

 ところで、実は、駅で財布を忘れて出てしまったことに気付いた。戻ろうかとも思ったけれど、給料日なので必要経費の引き出しのために通帳は持って出ていた。京都方面は定期券も関係ない。ということで、一日財布なしで過ごしました。

5月26日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月26日】
 今日まで、今日だけのイベントが各地で行われていて、思案して、夕方からの行先との方面の一致で、午後から、北加賀屋クリエイティブセンター(名村造船所跡地)での「KITAKAGAYA FLEA 2018 SPRING & ASIA BOOK MARKET」に。方面の一致と言っても、北大阪からだと、地下鉄を堺筋、御堂筋、四ツ橋と乗り継がねばならず、感覚的に下がって、上がって、また下がる、しかも中継点の「大国町駅」は細くて狭いフォームで異なる線がすれちがうという、戸惑いを避けられないコースで、毎回、慎重を期して、一本か二本どこかでやり過ごす。戻るときなんて、市内なのに結果として移動に一時間近くかかってしまってた。嗚呼。

 「KITAKAGAYA FLEA 2018 SPRING & ASIA BOOK MARKET」は、出版や作家を中心とする蚤の市。気にはなっていたものの、行くのは今回が初めて。名村造船所跡地に行くのも初めてで、そのことも、選択に影響している。それとアジアの出版社や書店が多数出店していることも。

 把握しきれないまま、2階にあがって、進んでいくと、すぐに安田謙一さんのブース「ダン・シャーリー」に遭遇。安田さんにはコレクターという印象がないのだけど、出品されているものを見ると、やっぱり、いろいろ持ってはるなーと思う。レコードも出されていて、ラジオドラマ集や越路吹雪の十吋など気になるものもあったけど、買ったのは雑誌が4冊。SFファンジン「PLANET X」の深海特集号(1998年)、オムニバス盤は愛聴しているものの結局出会わなかった「Strange Things are Happening」の1988年7/8月号、1989年4/5月号、1990年春号。NHKの古いグラフ雑誌とかあやしい実話雑誌もあったのだけど、実利に走ってしまった。実利?

 3階は「ASIA BOOK MARKET」。台湾の「BaconPress」(五花+日本にない漢字「監」の右上が…説明できない)のブースで、雑誌「BaconPress Topic」5号(2016年4月)、7号(2017年)を購入。表紙デザインが気になって手にとったのだけど、テーマに沿って歴史をたどる内容が面白そうだったので。どれにするか迷ったけど、禁止された歌についての5号と台風についての7号を選んだ。
 「BIG ISSUE」は日本でも出ているホームレス支援誌だけど、その台湾版のブースがあった。デザインは各国に任されているのか、デザインがとても洗練されている。これもいろいろ迷ったけれど、夜景写真の特集に惹かれて、2017年12月号を。表紙は女優の許[王+韋][ウかんむり+心+用] (Ann Hsu、ティファニー・シュー)。

 前述のように、再び乗り継いで、「北浜」で降りて、天満の「音凪」に。青山円さんの個展「きとひ」を見に、とその記念イベントである上野茂都+伴瀬朝彦デュオの演奏を聞きに。青山さんの色を構成した山の絵は、冬支度のライヴチラシなどで目にして、気になっていたので、楽しみにしてました。なんとかライヴのない日に見に行けないか画策してみたのだけど、行けそうな日は休みだったりライヴが入っていたりで最終日の今日に。いろんなものに描かれた大小さまざまな山は遠くにあるようで手の届きそうなかんじもする不思議な近さがあった。行けそうで行けない虹の麓ではなく、きっといつの間にかたどりついている場所。

 上野茂都さんの演奏を聞くのはひさしぶり。伴瀬朝彦さんのプロデュースによる『別天地』以後は初めてで、三味線ではなく、ギターを弾かれていたことに驚いた。伴瀬さんとのデュオといっても、基本的には、上野さんを伴瀬さんがサポートするかたちで、キーボード、ギターとコーラスを担当。『別天地』のポップな味わいそのままの演奏。情けなさも、叙情から、なんだか絶滅危惧種を愛でるようなかんじにシフトしてきているような。『別天地』収録曲のほか、古い曲や最近の曲も。じわじわとくるトークは健在でした。

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2018 Kijima, Hebon-shiki