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2018年5月13日〜2018年5月19日


5月13日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月13日】
 朝から雨。午前中に、買い出しと月一回のミッション、午後遅くから雨が止まないので、あきらめて、図書館と駅前のコンビニに。

 図書館には、ハワード・マッセイ『英国レコーディング・スタジオのすべて』を返却。副題どおり、60年代末から70年代にかけてのブリティッショロックの制作現場だった往年のスタジオを、スタッフの証言、ミュージシャンの逸話を交えて記録したもの。ミュージシャンでも、エンジニアでもないし、「音の良さ」を感嘆したり評価したりできるような環境でもないので、猫に小判やなぁと思っていたのだけど、図書館に入ったのを幸いと借りて読んでみたら、とても面白かった。録音するための苦労、試行錯誤が語られていて、これだけいろいろやってくれてるのだから、聞くときにおろそかにしたらあかんよなと改めて思わされて。例えば、モーガンスタジオのところで、ストリングスの録音の際に演奏家ひとりひとりにヘッドホンをつけるという試みを最初にやったと自負しているスタッフの話が紹介されている。1971年のことというから、ひょっとして、ボブ・グリムの録音のときか、なんて。レコードを聞きながら、その作品を録音したスタジオについてのページをめくりたいタイプの本だと思う。内容からしたら、「高い」ことはないです。
 さっき往年のと書いたように、ここに記録されているスタジオのほとんどが、いまはもうない。その顛末も記されていて、レコード会社やスタジオの栄枯盛衰、業界の変遷も背景に描かれていて、その点もよかった。

 ところで、Amazon.co.jpのこの本のページに掲載されたカスタマーレビューに酷いものがあった。低評価を付けているのだけど、理由はと言えば、ブリティッシュロックをええもんのように扱っているから、という。何故ブリティッシュロックをええもんのように扱うのがあかんかと言えば、自分としてはええとは思えないものについて、その当時若かったというだけのしょうもないおっさんに偉そうに語られたのが腹立つから…(もう一回読み直す気力がないので、一回読んでしもたときの受け取りです)というもので、このひとの目にはどうか計りかねるけど、読んだ限りではこの本では数々の録音について「これがわからないやつはダメ」というような姿勢はなくて、どちらかと言えば、とほほな風情を感じさせるという点で、目についたものへの八つ当たり、鬱憤晴らし、言いがかりだと思う。しょうもないおっさんに偉そうにされたことには同情するけど、それを一般化するのは幼い。政治話にも、その手のが多くて、うんざりする。そら、運動家や活動家は、生徒会の延長みたいなところもあるし、そういうのが好きなひとがやってる場合もあって、しょうもないひともおる。迷惑をかけられた、ということもあるだろう。でも、その経験を「元に」関係ないひとまで巻き込んで侮蔑することを肯定するのは、寒いです。

 図書館から、通勤で利用している最寄駅までは一駅分あるのだけど、しかたない。雨の中、とぼとぼと移動。何故に、明日も明後日も行く場所にあるコンビニにわざわざ雨の休みの日に行くのか、と言えば、諸々の支払いもあることはあるのだが、すみません、通販物の引き取りです。ウェブで見たサイモン・レイノルズさんが書いた電子音楽ロックについての記事で知ったカナダのバンド、シリンクス Syrinx の2枚のアルバム("SYRINX"、"LONG LOST RELATIVES")にレアトラック集を追加した "TUMBLERS FROM THE VAULT (1970-1972)"。見過ごしてた、というか、音を知らず、興味を持っていなかったジョン・ミルズ・コッケル(キーボード)、ダグ・プリングル(サキソフォン)、アラン・ウェルズ(パーカッション)のトリオ。記事にリンクしてあったサンプルを聞いたら、シンセサイザーから「出てしまった」音ではなく、それぞれの音にエフェクトをかけるなどしてトリートメントし、電子音に混ぜ込んだような音で、なおかつ、メロディはとてもロマンティックというのがよくて。繰り返し聞けそうだし、どういうひとたちかまったく知らなかったので、知りたいという気持ちもあって。…定額制配信にあるんやけどね。

5月14日(月)
[一回休み]
5月15日(火)
[一回休み]
5月16日(水)
[一回休み]
5月17日(木)
[一回休み]
5月18日(金)
[一回休み]
5月19日(土) ▼ぐりぐらメモ/2018年5月19日】
 午前中に居住市の中心部(自転車で約20分)に行く用事があり、ついでに書店に寄り、帰りに通勤最寄駅まで戻って(市の中心部の駅から二駅)、通販到着物を受け取り、一服して帰宅したら、もう外に出る意欲が湧かなかった。あとは片付けなど。

 書店では、片岡義男『珈琲が呼ぶ』をやっと見つけて購入。先週、スーパーで「CDが入りそう」という思いつきもあって買ったスティック状のブラックコーヒーお試しパックについて、手元にあったユン・ウーのCDを使って「縦が足らず、入らなかった(中身だけなら入る)」と、気楽なつぶやきを投稿してみた。書いてから気付いた。ユン・ウーではなくて、ペギー・リーの "BLACK COFFEEE" で撮るべきだったろう、と。そうしたら、直後に、渡部幻さんが引き取ってくださったのだと思っているのだけど、片岡さんの本に「ペギー・リーの「Black Coffee」についての愉快な文章」があることを書かれていた。先週は帰りにあちこちの書店に寄って探していたのだけど、見つけられないでいたのだ。
 まだぱらぱらとめくってみただけだけど、珈琲についての本ではなく、タイトルどおり、コーヒーがきっかけとなっている何かについてのエッセイ集ということらしく、音楽についての話も多い。少し読んでみただけで、片岡さんの面倒な、というよりも、面倒を厭わない記述に接して、楽しくなった。説明魔。そして、説明が単なる評価の前置きであることが多いのに比して、自分を高くも低くも評価しない。

 家に戻るのには遠回りになるのだが、それも(例によって知らない道を選んで)楽しみながら最寄駅まで戻り、駅前のコンビニで、『東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第八期終了作品集2014』を受け取った。タイトルどおりの2枚組DVDで、5本の作品を収録している。この中に、目下のアイドル、谷口蘭さんがほぼ主演といっていい五十嵐耕平監督『息を殺して』が含まれているので。他は、鶴岡彗子監督『あの電燈』、松井一生監督『ユメラク』、一見正隆監督『RIGHT HERE RIGHT NOW』、桝井大地監督『霧の中の分娩室』。
 『息を殺して』を再見。閉じ込められている訳ではなく、作業をしているようでもなく、大晦日の深夜に工場に残っているひとたちが映し出されている。事情はあるようだけど、説明はない。かといって、思わせぶりなのでもなく、何か得体の知れないものから逃れるように緩慢な刹那を続けているかんじなのが好ましく。

 コンビニ受け取りと言えば、水曜日、Lamp『彼女の時計』が届いた。火曜日15日発売だったので、帰りに前を通りがかったとき、ああ、ここにもう届いているのだろうな、と思っていたのだけど、到着は水曜日の朝7時だった。朝出がけに受け取った。「ソーダ水の想い出」を収録したCD-Rがおまけで付いている。エレクトリックベースが印象的で、プリファブ・スプラウトやスティーヴィー・ウィンウッドの80年代半ばの作品を少し連想した。

 朝、母が深夜に聞いた「ラジオ深夜便」の話をよくするのだけど、固有名を覚えていないことが多く、断片的に覚えていることを話すので、結果として、当人にはそのつもりはなくとも、クイズになってしまう。で、いつもはこっそり「ラジオ深夜便」のページを開いて、確認しながら相槌を打ったり答えたりしているのだけど、木曜日の朝は、パソコンも閉じて、出かける寸前だったので、「最初のレコードを作ったあと、みんな辞めてしもて、契約のためにひと集めたけどまた辞めて…」「物語みたいな題名で、長い曲やのに歌がちょっとしかなくて」「年寄りしか聞いてないのに、こんなんかけて聞くひとおるんか」という話から、「キング・クリムゾン?」と答えると、そうだという。聞くひとおるんか、ということだけど、当時の20代ももう70代やからなぁなどと言いつつ、言うても、"Epitaph" とか "I Talk To The Wind"(この曲は、母も好きなはずなのだが、聞かせたのがジャイルズ・ジャイルズ&フリップ版だったので、気がつかなかったのだろうか)とか "Moonchild" とかやろと思って、念のため、帰宅してから、曲目を確認してびっくり。なかなかにハードな選曲だった。

▼ラジオ深夜便 2018年5月17日(木)午前2時台
1. 21st Century Schizoid Man 
2. Cat Food
3. Cirkus
4. Sailor's Tale
5. Larks' Tongues In Aspic, Part Two
6. The Great Deceiver
7. Red

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2018 Kijima, Hebon-shiki