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2018年4月29日〜2018年5月5日


4月29日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2018年4月29日】
 迷ったまま日が過ぎていっていたということもあり、予定を入れていない日曜日だったのだけど、本町「HOPKEN」に、工藤夏海さんの作品集『世の中グラデーション』が入荷したとの報を見て、出かける気力が。この作品集はクラウドファンディングの呼びかけがされているのを見たのだけど、うっかりしていて、期日を逃してしまっていた。現在、yumboや人形劇団ポンコレラ(未見)で活動されている工藤さんの90年代あたりからの描画や立体、人形などさまざまな制作物が紹介されている。ベン・シャーンの影響があるという話になるほど、と思った。丸みのある線だけど、視線の先が読めない(読ませない)ところとか。他に、行楽猿のライヴ録音集『こんにゃく芋 -行楽の記録3-』もあったので、一緒に購入した。
 レジで、迷って、予約を入れるタイミングを逸していた「HOPKEN」での夜のライヴについて当日でもいけるか(席に余裕があるかどうか)訊ねてみたら、予約扱いにしますよとおっしゃってもらったので、ありがたくその場で予約を入れた。

 買いに行くというのは、外に出るよいきっかけだと思うけど、通販が浸透したことで、出る機会を失っている場合もあるかもしれない。

 堺筋から御堂筋、四ツ橋筋を歩いて越えて、なにわ筋西入ルの北堀江「喫茶アオツキ」まで。四つ橋筋にさしかかったとき、新規開店した「ベルリンブックス」のことを思い出したが、かなり北に「戻る」必要があったことに加えて、ウェブで確認すると、土曜日のみのオープンだったので、またの機会に。ということを書いておかないと、忘れる、んよなぁ。

 「喫茶アオツキ」、では、またもフレンチトーストを頼んでしまった。昼下がりにちょいとコバラを、でもせっかくだからという微妙な線で。インドネシア歌謡のシトンプル・シスターズ Tigadara Sitompul "RIANG"、レイモンド・スコット "MANHATTAN RESEARCH Inc."、小川美潮『ウレシイの素』を聞きながら。シトンプル・シスターズは、ギターをピックで短く鳴らして電子音風に聞かせるところに「宇宙人ピピ」の主題歌を連想した。
 「三ツ沢通信」犬年春号を購入。

 散財を恐れ、「マルかバツ」に寄るのはやめといた。やはり二、三日前に、心斎橋「OPA」への「HMV」再出店を知ったので、覗いてみることにした。レコ屋の日アイテムで気になっているものでもあれば、と。元ちとせ「君ヲ想フ」発売記念インストアライヴはすごかったなー(フロア全体が満員電車状態)などと感慨に耽りつつ(…は事実なのだけど、日記を見返してみたら、「ワダツミの木」発売から約二週間後の2002年2月22日のことだった)、ハンパないおっさん場違い感に耐えながら、エスカレーターで8階まであがったのですが…基本、書店でした。「HMV & BOOKS心斎橋」とはなっているけれど、書店としても、特に音楽関係に力が入っているということもなく、いまひとつ。「HMV &」というよりも、「アイドルショップ &」だった。レコ屋の日アイテムどころか、アナログ盤そのものが見当たらず。もういちど場違い感に耐える気力が起きません。

 書店成分を補うべく、「心斎橋アセンス」に。「LIXIL BOOKLET展示&ブックフェア」というのをやっていたので、覗いた。現在の「LIXILギャラリー」(旧INAXギャラリー)は、ハードルが高い場所にあるのでなかなか行けないのだが、その展示図録に掲載された写真や図版のパネル展示と図録、関連書籍、雑貨の販売。図録は、ギャラリーに行けば売ってるのかもしれないけれど、さっきとは別の意味で場違い感が甚だしく、この機会に買ってしまおうと。絞りに絞ったが、3冊。緊急財政出動してしまった。『建築のフィギュア プライベート・プロダクツ』(2004年6月)、『集落が育てる設計図 アフリカ・インドネシアの住まい』(2012年12月)、『中谷宇吉郎 森羅万象帖』(2013年3月)。

 ぼちぼち歩いて、堺筋本町に戻る。前に「HOPKEN」に行ったときに付近をぶらぶらしていて気になった「B Baker」で時間まで過ごした。再び「HOPKEN」に。あがって、ついまたレコード棚を見ていたら、初版がすぐに売り切れたらしいgoat『New Games/Rhythm & Sound』があった、ので、お客さんが続々来られる前にとあわててレジに。
 きょうは、yojikとwanda、かえるさん「yojikとかえるさんとwanda」。最初に、かえるさんこと細馬宏通さん。愚痴についての歌に始まり、こんなかんじでずっと続きます、と。盤化されていない曲、「異常気象」など澁谷浩次さんとの共作多め。「手毬歌」は、一人二役だった相手役としてyojikさんが参加。その場で少し打ち合わせをして、yojikさんも盤とはちがったかんじで歌われてました。『切符』からの「オリンピック」や「くまとジャケット」では、これらの作品が柴田聡子さんの歌へのアンサーソングとして作られたことを話されていました。三題噺を客席から募って、歌にしたり。
 yojikとwandaは「ワンルーム・ダンシン」でスタート。いちばん元気な曲を最初にやって、あとはどんどん下がっていきます、とかえるさんに呼応するようなことを。広いステージに、yojikさんのダンス心が鼓舞されて、動きが自在に。相互に、そして場に呼応して、その場でどんどん変えていくこと、変えても変わらぬ確固たるものがあることには楽しさと同時に、感嘆すべき怖さがある。歌も同じ。自在さが可能にしたいたずらっぽさがあります。

 yojikとwandaの曲で、図書館でブライアン・イーノが流れるという歌があったので、帰りは、図書館で流れているとうれしいイーノの曲をつい考えてながら。静かな曲は、物悲しい曲が多い。フラットな印象があるかもしれないけど、"MUSIC FOR AIRPORTS" ですら、物悲しい。あれこれ思い浮かべてみて、"Put A Straw Under Baby"、"APOLLO"、ジョン・ケイルとの共作 "WRONG WAY UP" あたりがいーのではないかという結論に。

4月30日(月)
[一回休み]
5月1日(火)
[一回休み]
5月2日(水)
[一回休み]
5月3日(木) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月3日】
 火曜日。連休恒例「間借りしている仕事場が休みなので有給休暇をとって合わせる」ツーデイズ第一日はこれまた恒例の近郊をゆるい目的でひたすらうろうろするシリーズ。きっかけは日曜日と同じく入荷情報。「のぞみにいちばん近い駅」水無瀬にある「長谷川書店」で、ウェブで見かけて気になっていた自主制作本を取り扱っているとの報を見て、外出する気に。休みの間に一度は寄ろうと思っていたのだけど、晴れている間にと。

 件の冊子は、ぬっきぃ×もりれい『テク×テク』。テクニカルライターとテクニカルイラストレーターの二人が、取扱説明書作りについて面白可笑しく語る、というもの。過去の現場体験談はそこそこあるあるだけど、実例(のパロディ)はうーん、どういうことなんだろうというかんじで、休みが明けたら、仕事場でみんなで楽しもうと思っていたのだけど、やめとくことにした。おもしろサイトは知らないので、何か前提となるネタがあるのかもしれない。メーカー(クライアント)絡みの話はあんまり書けないだろうし。なんでゴールテープが遠ざかっていくのか、とか。
 森雅之さんの自主制作本「MM文庫・3 ダンスの準備」もやっと購入。80年代半ば(読んだことがある「ダンスの準備」など)から2017年までいろんな年代から採られているけど、どことなく、幽霊譚が基調になっている。こわくはない。どうなるだろう、と行く末に思いを馳せるかんじで。

 居住市に戻って、知らない道を行ってみたりしつつ、図書館のハシゴ。読んでみたい本を置いている館を間違えていて、当の二軒目は坂道をえっちらおっちらぜいぜい言いながら乗り越えてたどり着いたら、本日休館日、でありました。三軒目で一冊借りた。

 水曜日は雨で出られず。でも、予定が早まったようで、「春一番」にはよかった。昼過ぎにあれこれ見ていて、京都・出町柳「出町座」での『花筐 HANA GATAMI』が14時50分から17時30分という見やすい時間帯であることを知り、あわてて家を出た。駅について携帯電話の乗り換え案内サイトを確認すると、上映開始5分前に、出町柳駅着。駅間移動を縮めるしかないと、急ぎ足で橋を渡ったのだけど、予定の10分前に京阪四条駅に着いたら、トラブルで発着が遅れていた。結局、上映開始7分前に駅に着き、また急ぎ足で橋を渡り、「出町座」に飛び込んだら、上映開始が少し遅れていて、間に合った。
 「立誠シネマ」スタッフが運営している「出町座」は初めて。場所は予想していたところと少し違っていたけど、角地でわかりやすかったので、すぐに見つけることができた。券売機でチケットをとってから、受付で席を指定する方式。カウンターで普通に軽食がとれるかんじで、待ち合わせをするのによさそう。待ち合わせをする相手はいないけれど。本も映画関連本だけでなく、たくさん販売されている。
 上映スペースは、「立誠シネマ」と同じくらいだと思うけど、ちゃんとした座席になっていた。

 大林宣彦監督『花筐 HANA GATAMI』は、壇一雄の小説をもとにしているとのことだけど、元の小説は知らない。太平洋戦争直前の唐津の旧制高校、女学校に通う少年少女の危なっかしい交流を描いている。物語の中の年齢よりも、かなり上の年齢の俳優が演じているのが、意識的なこととは言え、奇妙な、彼らがまるで歳を取ったことに気付かないでいる存在であるかのような印象を与える。吸血鬼のモチーフがなんどもあらわれることを考え合わせると、生気を吸い取られつつある。常盤貴子が演じる主人公の叔母に、のようでもあるし、戦争に、のようでもある。次々とめくられていく画面は、主人公たちの生気を吸い取る時間そのもののような気がする。吸血鬼モチーフはエロティックだけど、彼や彼女はみな程度の差はあれ、諦念が支配的で、嫉妬に至らない。吸い取られまい、ではなく、吸い取られるのなら、何に、誰にということが浮かび上がってくる物語だった。

 入荷しているものでいくつか気になっているものがあるので、歩いて「ホホホ座」に。付近に行ったときには必ず寄るパン屋は閉まっていた。18時で閉店するのだったか。「ホホホ座」では、気になっていたものは確認したうえで買わず、田口史人さんの『日本とタンゴ』、「murren」23号(2018年1月、岩波少年文庫特集)を購入。

 バスで三条まで戻り、「JETSET」で、「レコ屋の日」アイテムではないようだけど、合わせて発売された山口美央子『恋するバタフライ/ANJU』があったので購入。知らなかったベスト盤にのみ収録されていた2曲をシングル化したもので、アナログ版とCD版のセットになっている。それと、Lomboy "WARPED CARESS" EP。ベルギーを拠点に活動しているターニャ・フリンタ Tanja Frinta のソロユニットで、これは2枚目とのこと。lampのメンバーが全面的に参加している。

5月4日(金) 【▼ぐりぐらメモ/2018年5月4日】
 服部緑地公園には、このところ、「上新庄」で自転車を借りて走らせたり、「関大前」から歩いたり、「千里中央」から南下したりといったコースで行っていたこともあり、「西中島南方」から北上する場合の時間配分をすっかり忘れていた。最寄駅の発着時刻を確認すると、電車が来るまで9分あったので先に駅前のコンビニで食料を調達し、ICカードのチャージも確認して、「南方」での乗り換え時間を短縮した、のだが、野外音楽堂に着いたのは、開始10分前だった。

 「祝春一番2018」第2日。一番手は、予定表にはなかったgnkosaiBAND。昨日も出演していたようだけど、何故か続けての出演となったみたい。ハルイチは親戚の集まりに出ているような感がなきにしもあらずだけど、ひさしぶりに聞いて、あれ、こんなかんじやったっけと印象が変わる場合もある。gnkosaiBANDは、以前聞いたときは、こってりした印象があったのだけど、すっきりというか、潔いブルースダブでした。印象が変わったと言えば、いままでどう思ってたんやという話だけど、佐久間順平さんのギターの音が綺麗で、はっとした。今回は谷川賢作さんのピアノとのデュオで、音のアンサンブルが際立たせられていた。豊田勇造さんの歌を聞いていると、東南アジアの風景が広がる。最近の「レコード」を通しての東南アジアとつながる。

 酔っ払いの生態を描くナオユキさんの漫談もひさしぶりに聞けた。愛すべき…でも近くにおったら困るとんちんかんさを言い当てる。笑ってしまうけど、明日は我が身だから、で。「西成の難波屋で」て、実名やないかいっ。そや、先週末の週間天気予報では昨日今日あたり雨になっていたのだけど、一昨日に前倒しになり、晴れた。ただ、ナオユキさんのときに少しパラついた。客席が対応でわらわらしていることで「滑ってるみたいになるやないか」と雨にツッコんでいた。

 渋谷毅オーケストラもひさしぶりに聞けた。ピアノの上に乗せたオルガンを時折鳴らすのを聞くのが楽しみで。オールスターバンドなのに、各人とも飄々としすぎていて、この状況で聞くのがもったいない、よな気がしなくもないが。

 中川五郎さんは、佐久間順平さん、谷川賢作さん、ヴァイオリンの黒田かなでさんを召集した即席ユニットで。1968年オリンピックメキシコシティ大会で、黒人差別反対表明を表彰台で行ったとして選手生命を絶たれたオーストラリアの短距離ランナーを歌ったバラッド「ピーター・ノーマンを知っているかい?」については、始まる前に「ビレッジプレス」ブースで、五十嵐編集長から受け取った「雲遊天下」129号で中川五郎さんが詳しく書いている。

 松永希カルテットをようやく聞くことができた。ロケット・マツさん、今井忍さんに、クラリネット、サックスのアンドウケンジロウさんのカルテット。明るく、力強い、快活な笑いが響く歌。最後に、ラブジョイ「君の名を呼ぶとき」のカバーも聞けた。「雲遊天下」では、ハルイチの親戚たちに耳馴れていないかもしれないけれど、聞いてもらえるといいなというひとたちに触れるようにしていて、結果、「祝春一番」そのものとほとんど接点がないのだけど、松永さんのカバーについては、前号(128号)で触れていたので、その点でも感無量。会場で「雲遊天下」を手に取り、目にしてくれたひとは居ただろうか。

 日射しは暖かだけど、もとより風が強く、日が陰ってくると、寒くなってきた。トリ候補2組がほぼ合同で先にやってしまったので、残すところ、AZUMIさんと小谷美紗子さん。AZUMIさんがエレクトリックギターをかき鳴らして、言葉を叩きつけ続ける。無頼なのか鋭敏なのかとらえがたくて、近寄れないでいる。トリは、小谷美紗子さん。自身に向けられているゆえの厳しさと弱さを詞から感じる。最後に、イベントの最後に、トリだからとアンコールを受けることは控えたいということから、アンコールの代わりに、と友部正人「夕日は昇る」のカバーを。
 聞きたかった小谷さんが最後ということもあったけど、席を離れる暇がなかった。親戚の集まりなので、日常的に会っていなくても、ひさしぶりに話したいというひともいるし、挨拶だけのひともいるし、できれば顔を合わせずにというひともいるのだけど、それも含めて、よい一日でした。…トリ候補2組残しだったら、そこで切り上げたかも、ですが。「Blackbird Books」には時間的に寄れず。ムチャな寄り道もしないで、おとなしく帰宅。

5月5日(土)
[一回休み]

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2018 Kijima, Hebon-shiki