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2018年2月4日〜2018年2月10日


2月4日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2018年2月4日】
 「茶屋町画廊」での「第50回 漫画展」を覗きに梅田へ。ついでに梅田界隈をぐるっとひと歩き。書店とれレコード店にしか行ってないけど。「第50回 漫画展」では、ひさしぶりに関根しりもちさんの作品を見た。大阪在住とは知らず。やまなかよしゆきさんのイラストもよかった。森元暢之さんの作品は…匂い立つとはこのことか。その後、あちこち回ったけど、乗り切れず、「山下達郎のサンデーソングブック」25周年記念特集の「ブルータス」のみ。老眼鏡を忘れて出てきてしまって、電車の中で持ち出した本やその、買った雑誌が読めなかったことも意気消沈の一因か。新御堂筋沿いに関西大学のビルができていて、そこの1階と2階が蔦屋+スタバだった。棚は、経済絡みのものがほとんどだった。使うほうと、儲けるほうと。金にならない好奇心にはかかわらない、ということなのか。

 モバイルルーターが充電式になったことで、地味に常時接続可になってます。定額制配信で一時ダウンロードしなくても聞けるくらいか、いまのところのメリットは。新譜を定額制配信で「済ませて」いることも多くて、申し訳ない気持ちも。聞いた曲が良かったからという「曲先」だと、その勢いで買ってしまうのだけど、前に良かったひとの新作だからという「人先」の場合、ハードルをあげてしまうのか、試すモードになってしまうのか、なかなかぐっと来なくて。

2月5日(月)
 [一回休み]
2月6日(火)
[一回休み]
2月7日(水)
[一回休み]
2月8日(木)
[一回休み]
2月9日(金) 【▼ぐりぐらメモ/2018年2月9日】
 月曜日。仕事場最寄駅近くのコンビニを受け取り場所に指定した通販、休み中の到着は免れたが、月曜日というのも、なかなか気が重かった。前回のエピック・サウンドトラックスのLPのことを思うと、箱の大きさが思いやられ。申し訳ないので、少し買い物をしてから、人の流れが途切れるのを待って、レジへ。箱がそんなに大きくなくて、よかった。内容物よりも一回り(1センチほど)大きいだけだった。
 届いたものは…高額なので報告は気が引ける。予約の受付が始まったとき、じっくり検討したら見送ってしまうと思って、目をつぶった。発送のお知らせが来て、支払い金額を確認して、血の気が失せることになったが。クレジット払いにすれば(少なくとも月曜日一日の精神衛生上は)よかった。クーポンやら割引やらを駆使したが、それでも内訳で言うたら、3、3、3、4、4というところか。

 という訳で明言は避けますが(前にも高額商品について同じことをやったな、そう言えば)、1枚はオリジナル盤の何故かUS盤仕様(A面3曲目と4曲目の間にデビューシングルA面を追加、ちなみにB面は見当たらず)、1枚は異なるメンバーによるデビュー前のデモ録音やアルバム録音時の没テイク、1枚は一部はラジオで聞いたことがあるBBC出演時の録音。それに持ってるドイツのテレビ番組出演時のものとは異なる映像集に、当時の雑誌記事やチラシ、プレスリリースなどが満載のコーヒーテーブルブックのセットです。オリジナル盤とBBC録音の2枚組仕様もあるのだけど、デビュー前のデモ録音聞きたさからキヨミズジャンプでした。

 それですぐに聞いたかと言えば、もったいなくて文字どおりしばらく寝かしてました。その間のことなど。iPad mini復活で、世を忍ぶ定額制配信という名のリクエスト即応型「ビート・オン・プラザ」専門ラジオ局も復活。▼通販物を受け取った帰りは、何故だか、ロキシー・ミュージックの "AVALON" が聞きたくなり、ひさしぶりに。"To Turn You On" と "True To Life" の2曲はすっかり忘れていた。これで終わり、という物足りなさを "Tara" が強引に締める、ような。▼寺尾紗穂さんの聞けてない近作を聞いてみようと思ったのだけど、中途半端に聞くと、そのつもりがなくてもどこか査定モード(買うべきか買わざるべきか)になってしまうので途中で止めた。ライヴで接したり、ラジオから流れてくるのを聞いて、ぐっと来る、という状況が理想。▼今週の通勤読書は、バリー・マイルズ『ザップル・レコード興亡記』だったので、読みながら、登場する作品をいくつか。ジョージ・ハリスンのモーグシンセサイザーデモンストレーション "ELECTRONIC SOUND"、モートン・サボトニック "SILVER APPLES OF THE MOON"、アレン・ギンズバーグ "SONGS OF INNOCENCE AND EXPERIENCE"。ギンズバーグのザップルから発売される予定で制作され、閉鎖に伴ってMGMから発売されることになったアルバムが聞けるとは。朗読ではなく、ボブ・ドローが編曲した音楽作品で、デイヴィッド・アレンを思わせる。▼ビューローBから数年前に発売されたスカイレコードの回顧オムニバス "KOLLEKTION 01"。選曲はティム・ゲイン。レコード店でふとかかっているのを聞いて、おおっと思ったら、持ってるやつだったというセルフ赤面事故がたまにあるけれど、通勤途中での曲名や演奏者が確認できない状態も似ている。レデリウスとマイケル・ローターがやっぱり好きなんやな、わたし、と自覚させられることに。アルバムだと流れで聞いて埋没させてしまっているということもある。それを改めて知らせてくれるのはありがたく。▼キャロル・キング "MUSIC"。2018年になってから、「ディスクユニオン」大阪店に2回行っているけれど、2回とも店内でこのアルバムがかかっていた。好きなひとが居るのだろうか。"Brighter" を聞くたびに、新垣結衣「Make My Day」の紹介文を某誌に書かせてもらったとき、"Brighter" を思い出すと書きたかったけど控えたことを思い出す。

 バリー・マイルズ『ザップル・レコード興亡記』は、ザップルからの発売が予定されていた詩人の朗読作品の制作レポートが面白かった。残りは、仲間内では「ザ・ボーイズ」と位置付けられていたビートルズの面々の不用意な発言、迂闊な行動、浮かれた振る舞いが記録されている。
 先週の通勤読書は、牧村憲一氏の回想録『渋谷音楽図鑑』。末尾の座談会形式の章「楽曲解析」に参加していることで、藤井丈司・柴那典の両氏が名を連ねている。渋谷という土地の特性や戦後史に絡めて、自らが関わった「都市型ポップス」の担い手たちの事情が記されている。大貫妙子『romantique』『Aventure』という大好きな2枚のアルバムのプロデューサーだけど、どちらかと言えば、アイデアを出し、ひととひとをつなげるブレーンとしての活動が印象に残った。

2月10日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2018年2月10日】
 ロキシー・ミュージックは、シングルの "Virginia Plane" と "Pyjamarama" が欲しくて1977年発売の "GREATEST HITS" を買ったのが最初で、当時は解散記念に出た、ようなかんじだった。ブライアン・フェリーの "THE BRIDE STRIPPED BARE" とどっちが先だったか。75年に "SIREN"(この時点では "Love is the Drug" しか知らない)、76年にライヴアルバム "VIVA! ROXY MUSIC"(これはラジオでかかっていたのをよく聞いた)、フェリー(それまでのカバー中心ではなくオリジナル曲中心の)もマンザネラもマッケイもソロアルバムを発表と来ての、だったので、その時点ではまさか79年に活動を再開するとは思っていなかった。いまだったら、4年なんてあっという間なのだけど、「ポップス・イン・ピクチャー」で "Trash" のプロモーションビデオを見たときは盛り上がったな。ついでに書いておくと、再結成後の最初のアルバム "MANIFESTO" の日本盤ライナーノートに誤記があったということで、訂正版が出ている。
 となんやかんや言うてても、なかなかオリジナルアルバムは買えずにいて、1985年11月の廉価盤(2000円)一挙再発で、最初に買ったのがファーストアルバム "ROXY MUSIC" だった。"VIVA!" の "Chance Meeting"、"If There Is Something" とラジオで聞いたBBCのコンサート録音 "Re-make/Re-model" が決め手だったかな。…と書いていて、不安になったので、時代背景について断りを入れておくと、この頃は、ラジオでかかるか、レコードを手にするか(買うか借りるか)しないと聞けなかった。過去の作品は特に。ロック喫茶のようなところがあったかもしれないけど、飲食に回す予算はなかった。

 ロキシー・ミュージックは、70年にグレッグ・レイクの脱退を受けて行われたキング・クリムゾンのオーディションに応募したものの採用されなかったブライアン・フェリーが71年になってメンバーを募集して、春頃に揃い、結成されている。核となったのは、最初のラインナップでの71年5月のデモ録音が今回発掘されている。インストゥルメンタル部分がのちの完成形よりも際立っている。イーノとマッケイの色が濃いとも言えるし、キング・クリムゾンからの影響が感じられなくもない。のちに "The Bogus Man"、"Grey Lagoons" となる曲も録音されたが、今回は除かれている。驚くのは、イーノがシンセサイザーに触れたのがほぼロキシーに加わってからと言ってよいこと。それよりもテープレコーダーを使って作り出す効果がバンドの評価を得たようだった。
 9月、ギタリストのロジャー・ブン(元ピート・ブラウン&ピブロクト!)が脱退し、ナイスのデイヴィッド・オリストが加入。11月に元々クラシカルな打楽器奏者だったデクスター・ロイドが脱退し、ポール・トンプソンに交代している。12月にデビューライヴ。明けて1972年1月4日、BBCのジョン・ピールの番組のために5曲録音している。レコードを出していない、ライヴもほとんどやっていないバンドに30分近い録音をさせるというのは破格の扱いではないか。12月に行われたライヴで、DJとして出演していたピールとやりとりがあったということだったけど、もちろん、デモを聞いてのことだろう。今回この5曲は全曲発掘されている。翌月の2月にマネジメント会社、レコード会社と契約、演奏活動も本格化するのだが、その直前にデイヴィッド・オリストが脱退し、フィル・マンザネラが加入している。
 3月に入り、ファーストアルバムの制作。3月に録音が行われ、4月にミックスダウン。発掘されたアウトテイクは、アレンジが異なるなどの試行錯誤はあまりないけれど、完成形と比べると、なんとなく、イーノ&マッケイ色を抑えようとしていたような形跡は感じられる。"Bitters End" については最初からあのとぼけた味わいのアイデアではなかったようだ。"Chance Meeting" のほぼピアノとペースだけのインストゥルメンタル版が聞けるのがうれしい。完成と同時にベースのグレアム・シンプソンがリック・ケントンに交代している。シンプソンは、フェリーがかつて在籍したバンド、ガス・ボードのメンバーだったが、ジャズの熱心なリスナーで、フェリーにピアノを手ほどきするなど、バンド結成に大きな貢献をしたが、心身がまいってしまったのだという(2012年4月16日に亡くなっている)。5月23日にBBCのジョン・ピールの番組のために新ラインナップで4曲を録音、そのうち、"Bitters End" を除く3曲が発掘された。ただ、ケン・ガーナーの本『IN SESSION TONIGHT』の巻末資料では、このときのベースはピーター・ポール Peter Paul と記されている。発掘盤では、リック・ケントンであるとしている。ともあれ、5月27日からはツアーも再開され、6月3日にファーストアルバムが発売されている。BBCのテレビ番組 "The Old Grey Whistle" への出演、"Re-make/Re-model"のプロモーションフィルムの収録などを行っている(共に映像も発掘)。

 7月になって、シングル "Virginia Plane" の録音を行っている。アウトテイク集にも "Virginia Plane" は含まれているのだけど、ファーストアルバムに入れる予定があったということなのか、"Virginia Plane" は「別撮り」で72年3月の録音ではないのか、どちらだろう。シングルのミックスを終えた7月18日には、BBCの番組のためにも "Virginia Plane" を録音している。ケン・ガーナーの本には、この日、"If There is Something" も録音しているらしいことが記されているが、放送記録にはないようで、今回の発掘にも含まれていない。
 この後、ツアーに戻り、8月4日にシングル "Virginia Plane" 発売。前日には、BBCの公開録音番組「IN CONCERT」に出演している。"The Bogus Man" を除く5曲が発掘されている。昔ラジオで聞いたのはこのときの "Re-make/Re-model" だと思うのだけど、どうなんやろ。にわかにはわからない。8月24日には、やはりBBCの「Top Of The Pops」で "Virginia Plane" を披露している。
 イギリス国内ツアーは11月まで続いている。11月6日は、BBCのラジオ番組のための録音を行っているけれど、3曲のうち2曲が次作 "FOR YOUR PLEASURE" の収録曲であり、"The Bob (Medley)" も今回の発掘盤からは外されている。最終日の11月25日はBBCのテレビ番組「Full House」のための収録で、2曲の映像が発掘されている。翌日もフランスのテレビ番組のためにパリのバタクランに出演。そこから4曲が収録されている。いずれもセカンドアルバムに収録される曲は外されている。"FOR YOUR PLEASURE" の記念盤のためにとってあるのだろうか。
 12月からはUSツアー。ファーストアルバムのアメリカ発売に合わせたもの。このとき、"Virginia Plane" が3曲目と4曲目に追加されるとともに、見開き内側のグレアム・シンプソンの名と写真が1曲だけのリック・ケントンに差し替えられているらしい。日本盤も、キングから出たものはオリジナルどおりだけど、アイランドの配給が東芝EMIに移ってから再発されたときは、アメリカ盤仕様だったとか。ビートルズ来日10周年記念のブックレットの巻末カタログに書いてあったっけ。ファーストアルバムは曲目まで書いてなかったような気がする。驚いたことに、CDも、"Virginia Plane" を収録したものがあるらしい。シングル曲の追加のみで、削られた曲がないのがなによりだけど、写真がケントンに差し替えられている盤はちょっと欲しくなってしまった。今回のコーヒーテーブルブックもシンプソン版だし(広告のかたちで、ケントンの写真も掲載されているけれど、モノクロ)。ケントンはツアー終了後、脱退。

 という訳で、デモとアウトテイク、BBCセッションを聞きました。メンバーの入れ替わりがいろいろあったので時系列を整理しつつ。書きながら出てきた疑問や不明点のいくつかは、コーヒーテーブルブックにリチャード・ウィリアムズによる詳細な結成当時のストーリーで明かされていた。アップする前に読んでおいて、よかった。

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2018 Kijima, Hebon-shiki