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2017年12月31日〜2018年1月6日


12月31日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年12月31日】
 朝から年賀状を印刷したり、年始の準備をしたりしていたけれど、宛名書きは諦めて、数日前から読み始めたジョン・ル・カレ(宇野利泰訳)『寒い国から帰ってきたスパイ The Spy Who Came in from the Cold』を読んでいた。映画はテレビで見た記憶がある。関連作の『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』も映画があったかのように思い込んでいたけど、79年のテレビドラマ版を見たのだろうか。タイトルの語呂がよいので記憶に残っただけかもしれない。これは、「通勤文庫」(仮称)に置かれていたので手にとったのだけど、最近、続編の邦訳が出たらしく、それで置かれていたのだろうかとも思う。スパイ小説を読んだあとでは、疑り深くなります。陰謀論がお伽噺に思えるくらいには。

 このところ、「理由」や「根拠」の価値下落がひどい。粗製乱造されたそれらがゴロゴロしていて、お好みのものに飛びついているひとをよく見かけるようになった。理由も根拠も矛盾の指摘も、立ち止まって考え直すということがあるということが前提になっているので、立ち止まって考え直すということがないひとには無効なのが哀しい。

1月1日(月)  
1月2日(火)  
1月3日(水)  
1月4日(木) 【▼ぐりぐらメモ/2018年1月4日】
 行事がひとつなくなったこともあり、月曜日(元旦)は、終日、年賀状の返事を。回想しておる場合か、なのだが、ついあれこれ思い起こしてしまったりして、夕方までに終わらなかったので、投函は翌日になってしまったけれど、去年より早くなってます。いや、世間的にダメなのは変わらないが。

 火曜日、投函ついでに歩いて少しの神社に。父親が毎年行っていたので、家族のことは一応。神仏習合。それと人間観察。片付けの続きを始めるも、すぐに挫折。パソコンを居間から2階に移したままなので、作業名目で、ひとりになれるのは、申し訳ないけど、母親にいらんこと言わなくていいので、気は楽。理不尽なことを言うのだけど、指摘しても、気をわるくするだけだから。

 この年末年始は、テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の一挙再放送というのをやっていて、本放送は見てはいたけど、帰宅が遅くて途中からという回もあったので、録画しておくことにした。とは言うもののハードディスクの容量が切迫しており、CMを抜く編集とディスクへのダビングを寝る前や起き抜けにやることに。で、編集しながらついつい見てしまい。やはり自問自答が面白い。自問自答しながら、得た答を最終的なものにしないで、何度でも考え直す。答が最終的なものにならないのは、相手の存在があるからで、答を相手に示して確かめるという過程がある。見かたを変える問いは突拍子もないけれど、無理はない。そこに考え直す余地がある。機微のいろいろをそうした過程に必要なことに置き換えているのがよかった。それにしても、婚活サービスが再放送の提供になっていたけど、このドラマでそこに結びつくのだろうか。大きなお世話か。

 テレビ大阪(テレビ東京)は、『孤独のグルメ』に頼りすぎではないかと思うけれど、この番組は母親とも穏便に見ることができるので、ありがたくはある。食べ歩き番組に対して文句ばかり言ってる母親も、このドラマについては、松重さんこんなに食べて大丈夫かとは思っているが、食べているのが普段の食事であること、「おいしい」というような表現が内心の声になっていることで、寛容になれているみたい。

 他にも容量確保のため、録画するだけして、見ていなかった映画などをつらつらと。消化という言葉は使いたくない。ので、見る気になるまで待っていた、ということに。ディスクに移す準備作業として、CMを抜く作業も。できればよい組み合わせで無駄なくディスクに移したいと思うのだけど、なかなかそれが揃わなくて。すっかり忘れている番組もあり、『逃げるは恥だが役に立つ』の第11回(最終回、1時間)だけ諦めて移して、消去したあとで、星野源氏の活動を追った昔の番組が残っていることに気付いた。余ったところに入れればよかった。

 水曜日。3日ともなれば、多少騒がせても大丈夫かな、とあれこれ用事を。午後から、外出。水無瀬「長谷川書店」に。いろいろ気になる本はあったのだけど、ふちがみとふなとの歌を元にした絵本『僕に宛てて』(ことば 渕上純子、え デュフォ恭子)を。ふちがみとふなとの歌を元に、画家のデュフォさんがアニメーションを作り、さらにそれを元に、「ゆげしんぶん」や森元暢之さんの本を発行している湯気カンパニーが絵本化したもの。歌のリズムを生かした言葉の配置、主人公たちの表情が工夫されている。歌関係なしに読み聞かせしてみたい。できるかな。無理かな。好きな歌だから。(現に、絵本は繰り返しの一回だけで構成されているので、最初に戻ってもう一回、と思ってしまった。)
 それと、古本箱から、瀬川昌久さんの『瀬川昌久自選著作集1954〜2014 チャーリー・パーカーとビッグ・バンドと私』を。愛読してきた瀬川さんの文章を集めたこの本はすぐには手が出せないけどいつかはと思っていたので、申し訳ないけど、ありがたし。

 阪急水無瀬駅からJR島本駅まで歩く。島本駅で降りたことはあるけれど、乗るのは初めてかもしれない。電車の接近メロディがサントリーのCM曲「夜がくる」だった。島本駅から高槻駅まで移動。駅前には大きな書店の支店が二つあるのだけど、ひとつはまだ正月休みだった。引き返して反対側のもうひとつの店に。「シナリオ」2018年1月号を買う。掲載シナリオは、『探偵はBARにいる3』、『勝手にふるえてろ』、『花筐』の元になった1975年執筆の「花がたみ」。それと、牧野良幸『僕の音盤青春記1981-1991 花の東京編』。クラシックの話題が増えてくる一方、ポップスについてはズレが出てくるので、どうかなと思っていたのだけど、ズレも含めて、同じ時期にちがう捉えかたをしていたひとが居たのだなということが実感を伴って伝わってくるので、やはり、と。

 JR高槻駅近くの食堂「南風楽天(なんぷうらくてん)」での「新春ひょっこりライヴ」に。奄美大島に移住した元ソラネコのあおきさとみさんの新ユニット、ふやよみの企画で、よしこストンペアも出演するということで。面白そうだと思ったものの、正月行事の予定が見えなかったので、予約を入れたのが元旦の夜ということになってしまった。遅すぎて通ってない可能性が高かったのだけど、ダメ元で開場時刻に行ってみたら既に結構埋まっていて、さすがにホームグラウンドなだけのことはある。いちどやはり予約できなくて、ダメ元で行ってダメだったこともあるのだけど、今回はあおきさん(ずっとはたさんと呼んでいたので戸惑っていますが)とイシダさんが入り口付近に居らしたので、入れてもらえました。すみません…。
 ふやよみは、あおきさとみさんと本職は画家という青木薫さん(ギター)のデュオ。奄美の海や自然から触発された曲や地元のひとたちに教わった新民謡などを変わらずゆったりと弧を描くような歌で。イシダさんも話されていたけど、自作の曲がシマウタで教わった歌があおきさとみさんのこれまでの歌に通じるようなかんじで、交差しているのが面白い。
 よしこストンペアの部では、イシダさんのピアノがよく見える位置にいたこともあるけれど、ひねりのあるポップロックの数々を彷彿とさせるイシダさんの曲に改めて、おおっと。「木星マン」、「逃げろ踊れ」など。ひねりのあるポップロックなのだけど、小川賀子さんのおおらかで快活でありながら、身に引き寄せるパフォーマンスが一緒になって、ぶん、と遠心力を感じさせる。小川さんの歌も、遠心力が加わることで、より瑞々しくなっているのだと思います。「ふるさとはライヴハウス」の「約束しないで会える場所」というところでいつも実はじんわりきています。約束するのがヘタなもので。

 きょうは明日から仕事ということで、午前中はいつもの日曜日と同じ感覚で買い物など。午後はどうしようかな、3月で閉館する「京都みなみ会館」で見たかった『パターソン』をやっているので見に行こうかなと思ったら、京都駅近くのシネコンで、松岡茉優主演、綿矢りさ原作ということで気になっていたところ、周囲の映画好きの評判もよい(映画については評価軸を持っていないので判定は人任せです)『勝手にふるえてろ』が午後の早い回に上映されることを知り、その時点でぎりぎりだったので、詳細調べずに、ハシゴできるかもとあわてて京都に向かった。上映15分前には着いて、△になっていたけれど座席もとることができた。ら、意外と長く、終了が『パターソン』上映時刻の5分前。ハシゴは無理、でした。そううまくはいかない。

 大九明子監督(脚本も)『勝手にふるえてろ』は、仇名をつけるように周囲を見渡して、憧れたり毒づいたりしている主人公の世界が、名前を覚えてもらっていなかったことで破綻して、逆襲を試みるも、あらぬ方向に突っ走ってしまう物語。前半は妄想全開なのだけど、閉じてはいなくて、「バカみたいにたくさんのひとと話す」。身を守りつつ、世界と渡り合うための主人公なりの方法。破綻したあと、別の方法を見つける、ところまでは行ってないかもしれないけど、その兆しの方に歩み寄る。松岡茉優さんの全開と心細さを入ったり来たりする様子がいいなと思う。職場休憩室での昼寝の場面は、なんというか、物語の中に、わたしはまだうまく位置付けられていないのだけど、それでも、あそこが必要なことは確かで、不思議なかんじがする。

 京都駅周辺を少し歩いてみた。先日、斎藤次郎『共犯の回路』を買ったときのことを思い出していたので、「Avanti」の書店にも寄ってみたけど、往時の面影はなく。ビル全体がピンクピンクしていた。

1月5日(金)
[一回休み]
1月6日(土)
[一回休み]

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2017-2018 Kijima, Hebon-shiki