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2017年10月29日〜2017年11月4日


10月29日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年10月29日】
 雨がおさまらず、昼に買い物に出たかっこのまま様子を見ていたら、夕方になってしまった。台風が夕方に最も接近するというような話もあり、出るに出られず。きのう買った「早稲田文学 女性号」や先週火曜日に届いていたのを書き忘れていたジェン・ペリー著 "THE RAINCOATS: 33 1/3 series" をぱらぱらとめくりつつ。それにしても、いろいろ間に合わず。

 ハットフィールド・アンド・ザ・ノースやハイ・ラマズにライナーを寄せている作家ジョナサン・コーの70年代半ばの少年少女を描いた小説『ロッターズ・クラブ』を読んでみたいと思い、あれこれ調べてみるも、邦訳はなさそう。同作からの朗読やテーマ曲を収録したアルバム "9th & 13th" というものもあった。音楽はルイ・フィリップとダニー・マナーズが担当している。この共作は日本盤も出ていたようだけど、廃盤になっているようだ。定額制配信にあったので、聞いてみることにする。同じく、定額制配信にはジョナサン・コー名義のアルバムがあがっていて、そのひとなのだろうか、とDiscogsを見ても記載がない。ご本人のサイトを見てみて、ようやくそのひとであることを知る。ひとり多重録音によるインストゥルメンタルで、カンタベリーのリリカルな部分を薄めたかんじではあるけれど、テレビの無言紀行番組の背景に流れていたら、気になると思う。"Battersea Park" は初期のトッド・ラングレンを少し思わせるところがあって、よかった。

 『ロッターズ・クラブ』は邦訳は出ていないけど、イギリスではBBCでドラマ化もされている。公式のものではないけれど、ウェブで見ることができる。まず第1話を。主人公はさえないプログレッシヴロック好きの男の子。クラスの連中や周囲の大人にとまどいがあり、落ち着かない。姉の彼氏にクラブに誘われ、ピンク・フロイド風のバンドの生演奏に接し、アングラシーンの一端に触れる。その折に、「ハットフィールド・アンド・ザ・ノースというバンドはすごいよ」と聞かされる。その姉と彼氏がテロに巻き込まれるところで第1話が終わる。続きは明日。

10月30日(月)
[一回休み]
10月31日(火)
[一回休み]
11月1日(水)
[一回休み]
11月2日(木) 【▼ぐりぐらメモ/2017年11月2日】
 納期未定だったはずの案件が週が明けると突如水曜日に納品、と。月曜日にチェック。8月末に下調べはして、必要な資料や確認事項はリストアップしていたのだけど、まだ未確定や不明点がある。資料入手→聞いている話と異なり、新たな不明点が発生→確認する→変更になりました、の繰り返しでずっとかかりきりになってしまった。結局、水曜日にはクリアできず、一日延期。資料を請求したり確認したりしてなかったらどうなっていたのだろう。
 というような次第で連日帰宅も遅く、今週はいろいろ書いておきたいことがあったのだけど、ろくにメモもとれていない。アンソニー・ムーア+宇都宮泰さん、タラ・ジェーン・オニールなどももちろん行けず。

 月曜日、自宅最寄駅近くのあまりめぼしいものがない書店で、「文藝別冊 大林宣彦」を。土曜日に京都でも見かけたけど、これなら地元の書店にもあるだろう、と。「ホホホ座」山下さん言うところの「一票」、ということで。

 火曜日も、そんなかんじでいたのだけど、材料がその日はもう出てきそうにない、ということになったので、思い立って、北堀江の南端にある古書店「アオツキ書房」に「寄り道」することにした。日曜日で閉店と告げられていたのだけど、台風と重なったため、火曜日まで延期されたのでした。20時までというので、見る時間もある。
 古本は全品5割引、中古盤も2割引。日本橋の五階百貨店近くにあった頃に、「フォーエヴァー」の東瀬戸さんに教えてもらってから、よく…とは言えないけれど、寄っていた。最近は、「円盤」の田口さんが発行している「ミツザワ通信」を置いていることで、「わざわざ行く」理由ができて、二か月に一回は行くかんじだった。もちろん、ライヴやトークなどの催しも見たいものが多く、印象に残っているものがたくさんある。音楽、映画、演芸、美術、漫画、写真、社会問題を中心にした古本の品揃えもよく、次に来たときに買うものがないということがないように何がしか残しておく、という必要もなかった。欲しい本が買い切れない店だった。

 で、最終日、それらを浚えたかと言えば、まったく。何冊か戻して、前に来たときに見送ったビル・ブルフォードのソロアルバム "FEELS GOOD TO ME"(貸したまま返ってこないので買い直し。レーベルサンプラーが付いた2005年のWinterhold版)とずいぶん前から残っているあがた森魚『あがた森魚とZipangu Boyz號の一夜(惑星漂流60周年 in 東京2009年2月22日 九段会館)』を足した。本は、ずいぶん棚は見ていたはずなのに、初めて気付いたフォロン展の図録と、うーんやっぱり手元に置いとくかと『話の特集 ビートルズ・レポート 東京を狂乱させた5日間』の復刻版を。で、さて、これからどこで、の「ミツザワ通信」栗鼠秋号と田口史人さんの『佐渡島とレコード』を。

 「アオツキ書房」からバスで梅田に移動し(小銭がなく、千円札でお釣りをもらおうと思っていたのだが、降りるひと降りるひとみんなICカードを鳴らしているので、初めて試してみた)、「ディスクユニオン」「茶屋町NUタワー」と回ってみたが、めあての盤は見つけられず。帰宅すると、鈴木博文さんの『Wan-Gan King』30周年記念版2枚組が届いてた。アルバムのCD版だけど、EP『どん底人生』の4曲とライヴ録音を追加した『First Compact Disc』と同じ仕様のものが1枚目、2枚目にはデモが収められている。今回はメトロトロンの通販で。最近行われたかつての「メトロトロンワークス」のようなオムニバスライヴのパンフレットと一緒に。『Wan-Gan King』や今度出るコルネッツの『乳の実』の新装版のチラシが同封されているのがうれしい。
 『乳の実』新装版には、未発表曲や新曲が入るということで、むかしいちどだけ見たライヴで印象的だった「養老院」が入らないかと思ったら見当たらないので、少し残念に思っていたのだけど、追加される曲のタイトルを見ていて、ふと「終わらない物語」がその曲なのかもしれないという考えが浮かんだ。そんな歌い出しだったような。と思ったら、どんどんそんな気がしてきた。当たってるといいな。
 聞いたことがないのは2枚目だけど、それはなんというか、邪道というか、申し訳ないようにも思い、正々堂々と(意味わからん)1枚目から。それも、夜も遅いので、いったん本編で切り上げようと思っていたのに、すぐに「どん底人生」が始まってしまい、そしたら、最後まで。まだ2枚目は聞いていません。

 今週の通勤音楽は、ジョナサン・コー with ルイ・フィリップ&ダニー・マナーズの "9th & 13th" をかけることが多かった。1曲目の "Theme from the Rotter's Club" はベイジル・カーチンの歪なかんじをなくしてスマートにしたようなインストゥルメンタル。続く "Destination Moon" はなめらかなストリングスが映えるやるせないメロディの歌が聞ける。ルイ・フィリップには少し線の細さが気になるところがあるのだけど、それもあまり感じない。ハイ・ラマズやプリファブ・スプラウトに近い。盤が欲しくなってきてしまった。ルイ・フィリップ&ダニー・マナーズの名を大きくした日本盤も出ていたようだけど。この二人は、プーランク作品集も出していて、それも定額制配信で聞ける。
 それにしても、いまさらというか、現状の基本認識のようなものだけど、かつては「聞いている」ということは「持っている」ということで、それは所有欲とか蒐集癖とはちがって、持っていないと聞けなかったから。いまでは、持っていなくても聞ける。検索によるチェックというフィルターが問題のような気もするが。

 「VANDA」誌の佐野邦彦氏の訃報。同誌は、ディスコグラフィ中心の音楽記事と漫画記事の雑誌の頃から手にしていたし、多くのバンドやレコードを紹介して存在を知らしめることで、「ソフトロック」のリスナーを掘り起こした功績は大きいと思う。けど、文章や音楽のとらえかた、見立ては好きではなかった。70年代半ば、中学に入った頃の個人的な映画音楽ブームで出会ったことで、アソシエイションやハーパース・ビザールなどの「ソフトロック」と呼ばれるようになったタイプの音楽も好きだったので、それらがまともに扱われてこなかった時代のことは知っている。そうした見かたへのカウンターという立ち位置を考慮しても、切り捨てかたはひどかった。それぞれにそれぞれの見かたがあるので、批判も否定もしないけど、読む気はしなかったし、「VANDA」誌も音楽メインになってからは買わなくなった。しかし。

 火曜日の朝、駅のホームに落ちていた小さな熊のぬいぐるみ。落ちていた場所近くの柱の1mくらいのところにある段に立てかけておいた。水曜日の朝、まだそのままだった。火曜日も水曜日も帰りに確かめようと思っていたのだけど、反対側のホームということもあり、たどり着いたときには忘れていた。木曜日の朝、なくなっていた。収容されたのでも、誘拐されたのでもなく、無事に帰宅していたらいいのだが。

11月3日(金) 【▼ぐりぐらメモ/2017年11月3日】
 NHKの朝の連ドラBS放送分を出社前のペースメーカーとして使っている身には、つまらないのはつらい。御都合主義という言葉しか思い当たらない。このあいだ、母親が連ドラが始まっている時刻であることに気付いていないをいいことに、そのままニュースにしていたら、準備の時間を間違えて、出るのが少し遅れてしまった。でも、母親が「面白い」と思う気持ちを失いがちなので、あまり面白くない、つまらないということを言わないほうがいいかもしれず。母親が「面白くない」と言う、その理由が理不尽だったりするので、つい「それはちゃうよ」と指摘しがちなのも。何も言えないと感じているかもしれない。
 老いると、見えにくくなったり、聞こえにくくなったり、覚えにくくなったりしていく。受け取るということが難しくなる。機器の操作など、受け取る方法そのものが難しい場合もある。難しいと、面倒になるし、面白くなくなる。そのことに負い目を感じたり、恥ずかしくなったりもする。設定が複雑だったり、伏線が張りめぐらされていたり、時間軸がずらされたり、心理が読めない人物造型だったりすると、面白がってしまうけれど、それは若いうちの話かもしれないとも思う。わたしはどちらかと言えばややこしいもの好きのような気がするけれど、いまのうちなのだろうか。

 今日は家族行事の可能性があったので、予定を入れていなかったのだけど、あれこれあって、今回は無しということになった。気が変わることがなさそうなのを見計らい、毎度の直前の申し込みで申し訳なく思いつつ、冬支度&ぱぱぼっくす共同企画「星降る夜に待ちあわせ」(出演=冬支度、ぱぱぼっくす、田中亜矢)に予約を入れ、行くことにした。 「レコードの日」ということで、記念商品がいろいろ出る日だったし、先週の火曜日に2軒回って見つけられなかったものを別の店でチェックしたくもあったのだけど、乗り気でなく、出るのが遅れてしまった。と思いつつ、本だけでも、と先に梅田に寄り、ばるぼら x 野中モモ『日本のZINEについて知ってることすべて 同人誌、ミニコミ、リトルプレス 自主制作出版史1960〜2010年代』(誠文堂新光社、2017年11月1日発売)を入手。「アイデア」誌での連載が気になっていたけれど、「アイデア」を毎号買う財力も置き場所もなく、と言うよりも、デザイナーでもプランナーでも編集者でもないのでそもそも資格がない身には単行本化はありがたく。

 一駅戻って、十三「クラブウォーター」に。開始時刻は少し早く18時からで、3組それぞれたっぷりと聞くことができた。ぱぱぼっくすは、澤田さんのおしゃべりがたっぷりと言えなくもない。

 冬支度は、パーカッションの渡瀬千尋さん、キーボードの北里修さんを迎えた4人編成で。いつものデュオ演奏でギターとフルートやアコーディオンがかたちづくる街並みにパーカッションとキーボードが階段や窓をつけるようなかんじで、メロディやリズムが鮮明になる面白さがありました。ここをこう上っていくのか、とか、ここにこういうものがあったか、とか、そんなかんじで。

 ぱぱぼっくす、なんやかんやでものすごくひさしぶり。澤田さんの漫才を思わせる、のんびりとした調子で突きまくるおしゃべりも健在だったけど、目の覚めるような声と広がりのある演奏で歌われる歌はいいなと思う。新しめの曲もたくさん。

 最後に、田中亜矢さん。冬支度の安田さんはフリーボのHPで見た田中亜矢さんのデモテープを送ってもらった話を、ぱぱぼっくすの澤田さんは活動し始めた頃に『So Far Songs』イベントで出会って以来の憧れと交流を語っていた。冬支度の斎藤さんがツイターで「みんなの憧れ」と書かれていたけど、ほんとにそうやなと思います。ハードルをあげられて、と苦笑されていましたが。言葉少なに曲をたくさん歌ってくれました。ラブジョイの活動終了に触れて、「Sign」のカバーも。思いがけないことで、胸がいっぱいになってしまった。ヴァシュティ・バニヤンの "Rainbow River" を歌われて、「できる範囲で続けていければ」とも。最後の2曲は、冬支度カルテットとぱぱぼっくすが1曲ずつ伴奏するという豪華な企画。田中亜矢さんのソロをバンド演奏で聞けて、うれしかった。1曲でバンドが入れ替わることには、つい、頭の中で、「チャッチャッチャ チャッチャラ」とドリフの「盆回し」を鳴らしてしまいましたが。最後の最後に全員で "Up On The Roof"。大所帯なのに、慎ましく、穏やかだったのは、田中さんへの憧れのなせるところ。よかった。

 ぱぱぼっくす澤田さんが田中さんとの馴れ初めを話されていたので、帰宅してから、ぼんやりしつつ、つい、自分の聞き始めについて回想してしまった。たぶん、やはり、『So Far Songs』で知ったのだと思うけど、『So Far Songs』そのものは茫洋としていてつかみどころがなく、すぐにはピンとこなかった。『朝』が出る前に、いくつかサンプルであがっていたのを聞いてようやくだったと思う。ちょうど同じ頃にオフノートの反戦フォークオムニバス『瓶の中の球体』に参加されていて、初めてライヴを見たのは、その発売記念ツアーの一環で、でした。というようなことを。
 ついでに、ぱぱぼっくすが出演した時の鈴木博文さんのライヴが『どん底人生』からの曲で始まったことを思い出したり。回想しておる場合か(好きな猟奇王のセルフツッコミ)。

11月4日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2017年11月4日】
 昼前に出て、近江八幡へ。アンソニー・ムーア来日ツアー最終日の弾き語りソロを聞きに。バスの本数やらつなぎやらわからないところがあったのと、近辺を歩いてみたいと思って。
 近江八幡「酒游舘」の西村明さんのリクエストで、これまでライヴ演奏されたことがないという "OUT" から数曲演奏されるとの情報が直前になって流れてきたので、朝は、"OUT" を聞いていた。改めて聞くと、曲名曲順について、まだしっくりこない。4曲目が "Please Go" だけど、5曲目にそのような歌詞があるように聞こえる、とか。しばし検索してみるも、通信状態がおもわしくなく、なかなか表示されない。アメリカの蚤の市で500円でオリジナル盤を手に入れたというひとのページがあった。阿木さんが紹介していたのはサンプルカセットで、ジャケは校正刷だったということだけど、ちゃんとした「サンプル盤」もあったのだろうか。いや、いま問題なのはそこではなくて、そのひとも "Please Go" については疑義を呈していない。ということは、そのオリジナル盤も4曲目が "Please Go" となっているということだ。もっともサンプル盤なので、誤記という可能性もないことはない。阿木さんはサンプルカセットをKBS京都「FUZZ BOX IN」でかけてらしたそうだけど、ミックスがちがっていた可能性もあるらしい。NHK『名盤ドキュメント』にアンソニー・ムーアさんを呼んで検証してもらいたい。というか、きちんとした復刻盤を出してもらえないだろうか。

 来日ツアーは、各地で異なる形態で行われたのだけど、どの会場でも、アンコールにピアノの弾き語りで "Slow Moon's Rose" が披露されたということで話題になっていた。この弾き語りバージョンは、Arp & Anthony Mooreとしてのアルバムに収録されていて、北堀江「マルカバツ」の店頭で予期せずに耳にしたときはとても驚いた。各地でそうした驚きがあったのだろう。アナログ盤は550枚しか作られていないらしいけど、配信版は出ているので、盤の入手は難しいけど、聴取は容易です。

 という訳で、昼前に出たのだけど、途中で乗り換えたあと、長い間一本で行けるということに油断してしまった。後ろの席のひとが妙な咳を繰り返していた(最初、車掌のアナウンスがスピーカーの不調で途切れ途切れに聞こえているのかと思った)ことで、居眠りを「決め込もう」としたということもある。新快速では「近江八幡」の前の駅である「野洲」を通過したことは覚えているのに、次に気づいたときは「次は彦根」だった。彦根駅に着いたら、えらく激しい風雨でびっくり。これでは歩き回れない。先に予定がなかったら、近江鉄道で戻るという手もあったのだけど、そのままJRで戻った。戻るうちに、雨は小降りになっていった。近江八幡駅の南側に「イオン」ができていた。帰りにちょっと寄ってみたけど、まだ開店して間もないみたい。
 雨はぽつぽつ降ってるけど、歩き回れないことはないくらい。すぐにバス停に向かい、長命寺方面のバスを待ち、北へ。「酒游舘」にいちばん近いのは「大杉町」だけど、ひとつ手前で降りた。「メンターム資料館」を覗いてみようと思って。のだが、残念なことに、土日祝は閉館しているのだった。そっかー。判官贔屓のメンターム推しなので訪ねたかったのだけど。付近のヴォーリズ建築めぐりをしたり、アール・ブリュットの展示を行っている「NO-MA」(旧野間邸)で、空想科学的な作品を集めた展示を見たり。川埜龍三さんの「さいたまB」遺跡展示が面白くて、去年の埼玉「いわつき民俗文化センター」で行われた「さいたまBハニワ大発掘展」のパンフレットを買ってしまった。主に車の一部の写真をコラージュして作られた具志堅誉さんの「朝」「昼」「夜」とタワーの三態を描いた作品もよかった。
 「酒游舘」の周辺も少し様変わりしていた。前に、奥のうどん屋で昼食をとったことがあるバーやスナックが並んでいる建物の入り口に洒落た北欧家具とカフェの店ができていたり、近江牛の店もこんなにあったっけと思ったり。

 開場時刻になったので、「酒游舘」に。ここでやることになったのは、今回アテンドされている東瀬戸さんによれば、以前ケヴィン・エアーズさんがここで飲みすぎて翌日の大阪公演が二日酔いでボロボロだった(「行ければ行く」つもりでいて仕事で行けなかった)という話からだそう。ピアノ弾き語りということだったけど、スタートはギターと電子音で。80年代の「ロック」作品、"FLYING DOESN'T HELP"、"WORLD SERVICE"、"THE ONLY CHOICE" からが中心。リチャード・ライトのソロアルバムに提供した曲も。思いの外、ベルベット・アンダーグラウンド(ルー・リード、ジョン・ケイルのどちらも)にも近い感触があった。とても淡泊でクールではあって、そこに批評眼を感じる。そして、"OUT" からも。「ステージで演奏したことがない」と説明しながら。オーソドックスな編成の演奏を細かく調整して浮遊感のあるものにしていた70年代後半の諸作を思うと、作曲デモのようなかんじに聞こえなくもないのだけど、これをきっかけにアンソニーさんが改めてこれらの楽曲を見直してくれたらなぁなんて思っておりました。アンコールはピアノで "Slow Moon's Rose"、そしてギターに持ち替えてもう1曲、"Lucia"。そう言えば、今回のチラシの写真は、"Lucia" のシングルでの妙な(五木田智央作品を思わせる)写真でした。
 会場で、アンソニーさんが教え子たちと制作したというアンソニー・ムーア&ザ・ミッシング・プレゼント・バンド名義のアルバム "THE PRESENT IS MISSING" を買った。Arpとの共作にも収録されていた "Piano Waves" が入っている。

 近江八幡駅で、大阪行きの電車を待っているとまた雨。着いたら止んでいて、助かった。

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2017 Kijima, Hebon-shiki