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2017年9月10日〜2017年9月16日


9月10日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年9月10日】
 午後から、先週に続いて、西宮市と神戸市に。阪急今津駅から歩いて、阪神甲子園駅近くの「ギャラリーアオイ」に、先週、「ボローニャ」で興味を持ったコクマイトヨヒコさんの個展「モノクロ模様」に。モノクロのコラージュと粗いドット地を組み合わせて、奇妙な建物や生物が「居ても不思議じゃない」不思議さを作り出していた。コラージュ作品を高精細プリンターで出力する「ジークレー版画」という手法をとられているそうです。

 阪神電車で元町駅まで移動、「元町映画館」でチケットをとってから、歩いて新開地に移動、湊川公園横の「パルシネマしんこうえん」でヤスミン・アフマド監督『タレンタイム 優しい歌』を見た。マレーシアの音楽コンクールに出場する高校生たちの姿を、背景にある諍いや怨み、生き辛さを垣間見背せながら、それらを乗り越える希望とともに描いていた。個別に、向き合って話すことで、怨みが類型化に飲み込まれることを防ぐわずかな希望が見えるくらいなのだとしても。コンクールがどのようなものか、知っていることが前提になっているので、高校とレッスン会場の位置関係やそこへの送迎係の意義から始まって、わからないところもあったのだけど、不慮の死を迎える叔父からの主人公へのメールや最後のコンクールの場面などいくつかの場面でうるっときてしもた。
 「パルシネマしんこうえん」は気持ちのよい映画館でした。女性優先座席が設けられていたり、エアコンがあたる場所の図解があったり、エンドロールで余韻を楽しむひともいるという注意喚起を行ったり。映写室の連学もできるらしい。

 本来は二本立てのところ、時間がなくて、『タレンタイム』終了後に出たことに申し訳ない気持ちに。しかし。『タレンタイム』終了が17時25分、『めだまろん』開場が17時45分。早足で新開地駅に向かい、阪急が来たので花隈駅へ。このへん、どういう路線のつなぎになっているのか実はよくわかっていない。阪神だったら、元町駅に、ということはやはり線がどこかでちがうのか。
 ドン・ハーディ監督『めだまろん』(原題は匿名理論の意。「ろん」は論だったのか)は、レジデンツについてのドキュメンタリー。「本人」たちは出てこないし、語らないので、関係者の証言ということになって、視点としては繰り返しになってしまっているところもなきにしもあらずだけど、彼らの活動を通して、リスナーが受け取ってきたものがよくわかる内容だった。レジデンツを聞いたことがないと、どういう音楽をやっているひとたちなのだかはわからなかったかもしれないが。ディーヴォのジェラルドさんがマークさんを匿名的な存在でいることを通せなかったと非難しているのが印象的だった。あと、ファンのひとりとして証言しているクリス・コムズ氏の演奏がタイニー・ティムを連想させた。映画では、キャプテン・ビーフハートやサン・ラには触れられていたけれど、タイニー・ティムの線もあったかもしれない。
 触れられなかった点と言えば、終了後に行われた安田謙一さんとキング・ジョーさんのトークで、オインゴ・ボインゴに触れられていた。ディーヴォのマーク・マザーズボー、オインゴ・ボインゴのダニー・エルフマンのように、レジデンツの「誰か」がそうなってもおかしくなかった、のに、実際、そうなっていない。という凄み。「BUY OR DIE」というメッセージにも。その他、日本のリスナーに浸透し始めた頃の状況、「医者のコレクターを讃える」など。

9月11日(月) 【▼ぐりぐらメモ/2017年9月11日】
 『タレンタイム 優しい歌』のパンフレットには、シナリオ採録(抜粋)が掲載されていて、ありがたい。シナリオ採録があるパンフレットと言えば、岩波ホールのパンフレットだけど、デザインもそれを思わせる。これとサントラがあれば、映画を思い返すことができる…と思っていたら、サントラは入手困難の模様。Apple Musicも、イギリスでは扱っているようだけど、日本では扱っていない。「ストアを変更」したらどうなるのだろう。
 パンフレットには、寺尾紗穂さんと高田漣さんのエッセイも掲載されている。寺尾さんは「ごたまぜゆえの美しさ」に触れている。夢だけど、夢でしかないと捨てるのではなく、「時折思い出さなくてはならない」と。音楽を担当したピート・テオは、高田渡のファンで、高田漣さんはテオ氏のアルバムに参加するなどの交流があるそうです。
 最後に流れる「オー・レ・ピヤー」は、インド映画からの流用だそうだけど、「偏見にしばられた世界は僕の永遠の敵」という詞にどきりとさせられた。物語を見たあとでは、「メッセージ」としてではなく、主人公たちの言葉として受け取れたから。「偏見」ではなく、「偏見にしばられること」から逃れようとしてきたひとたちの言葉として。

 スティーリー・ダン再聴は、"PRETZEL LOGIC" で止まってる。もともと "Rikki Don't Lose That Number" が好きなのだけど、"Any Major Dude Will Tell You"、"Parker's Band"、"Through With Buzz"、"Pretzel Logic" もよかった。"Night By Night"、"Barrytown" もわるくない。あとの曲…がスティーリー・ダンで最初に聞いた曲だったら、ちょっと厳しかったかもしれない。"CAN'T BUY A THRILL" も聞いてみたけど、このあとでは印象が薄くなりそうなので、もうちょっと措いとくことにする。

9月12日(火)
[一回休み]
9月13日(水)
[一回休み]
9月14日(木)
[一回休み]
9月15日(金)
[一回休み]
9月16日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2017年9月16日】
 ワイドショーの話題に影響された訳ではないのだけれど、ふと、上田正樹「ラブソング」を思い出して、1977年発売のファーストアルバム『上田正樹』をひっぱり出して聞いた。この歌は、結婚しているかどうかはわからないけれど、ともかく決まった相手が居ながら、別の相手と逢瀬を重ねる男女の歌です。酒でやるせない感情を紛らわせようとする場面もある。不倫も飲酒もしていない中学生のわたしが、この歌にしみじみと感じ入っていたのはなんというかではあるけれど。1977年発売だけど、歌を知ったのは、それより前。やっとレコード化された、というかんじだった。ライヴに行っていたのではなく、上田さんはNHKのラジオ番組「若いこだま」に出ていて、スタジオライヴでこの歌を演奏していたのだ。子供の頃の話なので、実際にはそんなに間は開いていなかった可能性はある。
 ところで、このアルバムは発売当時は買っておらず、のちに中古盤で買ったのだけど、リーフレットの内側に印刷された歌詞は見ていなかった。今回、歌われていることを見直そうと思って、ひっぱり出したら、印刷されている歌詞が実際に歌われているものとちがうということで、手書きで訂正が入っていた。
[印刷]
もうやめよう こんなこと
お前にも男がいることだから
もう忘れよう 二人のことは
俺にも女がいることだから

[録音]
もうやめよう こんなことは
お前にも男がいることだから
もうやめよう こんなことは
俺にも女がいることだから

ということで、一行目に「は」が付け加えられ、三行目に抹消線が引かれて、一行目を繰り返すように導線が引かれている。付け加えるなら、「だから」ではなく「やから」と歌っているのだが、それは「読みかた」の範囲として。元の詞で歌われたことはあるのだろうか。そのラジオで放送されたスタジオライヴがどうだったか、エアチェックしたはずだけど残っていなくて、確認できないのが残念。

 「若いこだま」はパーソナリティが短い期間で変わっていったこともあるからか、ネット上にもきちんとした記録が見当たらない。リスナーの記憶も錯綜している。渋谷陽一さんは、もともと「若いこだま」に出演していたが、FMで「ヤングジョッキー」を始めるために抜け、後に大貫憲章氏が入った。「若いこだま」、「ヤングジョッキー」は並行して放送されていたけれど、それらが終了して、「サウンドストリート」が始まる。と記憶しているのだが。

 KBS京都「レコ室からこんにちは」は、細馬宏通さん選曲で20世紀に作られた21世紀についての歌特集。初日の火曜日、「次はチューリップ」と告げられたので、「21st センチュリー・ホーボー」か「2222年ピクニック」かと思いきや(2222年は21世紀じゃねえよ、と思いましたが、そう思ったという歴史的事実を考慮してそのままとします)「2015年世界旅行」を。細馬さん曰く「ムーンライダーズみたい」。この頃は、というか、この頃から本格的に(と言うのも変だけど)聞かなくなっていたので、そう言われてなるほど、と硬質な音を聞いて思った。

 水曜日、ラジオ関西『珍人類白書』、帰宅したら、安田謙一さんが出演されるというので、radikoの「エリアフリー」で聞いた。何故か、このところずっとアクセスすると、エリアが東京になってまして、地元の番組を聞くのに、有料サービスを利用せねばならない、という。番組パーソナリティーの金原みわさんて?と思ったら、気になってはいるけれど、いまだ手にしていない『さいはて紀行』の著者でした。ラジオ番組をもってはったのか。

 金曜日、もラジオ関西『夜のピンチヒッター』。仕事を終えて、仕事場最寄駅でラジコで聞きながら、ツイターでオンエア曲を確認したら、リクエストした津々井まり「愛すれど心さびしく」を既にかけていただいていた。第1特集が、洋画のタイトルと同名の歌謡曲「ゴールデン歌謡劇場」特集ということで、いくつかリクエストを出していたのだ。他にもいしだあゆみ「渚にて」、井上順之(じゅんじ)「昨日・今日・明日」(ひさしぶりに聞いたら、山本精一さんを連想した)など気になるものがかかっていた。台風が近づいているということで、「ゴールデン歌謡劇場」の部が終わったところで帰宅。その間、パンク特集とカーネーションの新譜紹介があって、次に復帰したときは「やすらぎの郷フェス」特集だった。ドラマ『やすらぎの郷』に出演しているベテラン俳優たちの歌の特集。という訳で、歌謡曲濃度の高い一夜になってしまった。あとで、移動中の部分を聞かなくては。

 今週は急に締切が前倒しになって右往左往したり、事前通告してからとりかかったのに終わってからものいいがつけられたりといったことがあったけど、なんとかクリア、できたかな。役に立ってるのかどうか、なんやけど。

 台風が近づいているということで、老母の心配がひどく、迂闊に出かけられなくて。雨もひどかったけど。昼前と夕方の買い物だけ。ひさしぶりに通った道で、また家がひとつ無くなっていた。

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2017 Kijima, Hebon-shiki