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2017年7月16日〜2017年7月22日


7月16日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年7月16日】
 マイケル・ブレアとジョー・ブッシェーロの "COLOSSAL YOUTH (YOUNG MARBLE GIANTS)" をやっと読み終えた。英語をすらすらととは行かない上に、途中、別の本を読んだりして、休み休み読んでいたもので。バンドに影響を与えたもの、活動の様子、同時代のバンドとのモチーフの共有を辿りながら、アリソン・スタットンの役割や影響を改めてきちんと描こうとしている印象を受けた。フィリップ・モクサムのガールフレンドとして付き合いで参加したのが活動を通じて「目覚めて」ウィークエンドを結成した、のではなく、ヤング・マーブル・ジャイアンツの頃から自身のビジョンを持ってパフォーマンスをしており、モクサム兄弟のサウンドとともに、同時代にあって異彩を放つ要因でもあった、と。スチュワート・モクサムはどうもアリソンの貢献をあまり認めていなかったようだけど。
 ヤング・マーブル・ジャイアンツは、明確なコンセプトにもとづいて演奏していて、実際のところは、"COLOSSAL YOUTH" 録音時には解散していたのも同然だったというのも頷ける。元になったデモを録音した時点で「完成」していた。1980年末に解散したのは、人間関係の話で、音楽の話ではなかった、と。スチュワート・モクサムは、解散後、ジストとして活動を始めるけれど、ヤング・マーブル・ジャイアンツのスタイルはやらない、かと言って、そうではない、やりたい音楽はまだ掴みかねていたのだそう。
 3枚組の全作品集は、ダブりになるので買わなかったのだけど、『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984 Rip It Up and Start Again』のサイモン・レイノルズが解説を書いているらしく、そこから、ちょいちょい引用があり、事実関係等はそこに既に記されているのかもしれない。買えば良かったかな。ウィークエンドのカバーイラストを描いていたウェンディ・スミスは、ヤング・マーブル・ジャイアンツ活動時期のスチュワート・モクサムのガールフレンドだったそう。いまだに、プリファブ・スプラウトのひとと同一人物視している文を見かけるので、野暮でも注釈しておいたほうがいいのかもしれない。

 雲行きが怪しくなる中、外出。きのうと同じく、遠回りして、北区菅原町「雲州堂」に。なのだが、付近を通り過ぎて、先日、あまりに品揃えが良すぎて、45分で見切れなかった古書店へ向かった。見切れなかった棚をさらうべく1時間余裕を見て、やってきたのだが、お休みだった。ひととおり見るまでは、なるべく棚を保全したいというケチな考えから、店の情報を隠匿した報いかもしれない。
 時間が空いてしまった。かと言って、暑くて歩き回ることもできない。道路に面したベンチで通りすぎる人々を眺めつつ、しばらくぼんやりしていた。

 「雲州堂」での「夏の倉地祭り」第二日、倉地久美夫×外山明×工藤冬里トリオと頭士奈生樹×村岡充デュオ。倉地さんが住んでるあたりは九州の豪雨の被害は免れたとのことでよかったですが、近くにも被害を受けた地域があったそうです。受付が始まって、中に入ると、ドゥルッティ・コラムが。金曜日、仕事帰りに駅でラジオ(正確にはiPad mini+Wi Fi経由のradiko)を点けたらドゥルッティ・コラムがかかってた(ラジオ関西「夜のピンチヒッター」)、ということがあったので、楽しくなってしまった。しばらくしたら、見知った顔が。東京からこのライヴのために!と。組み合わせの妙もあるし、頭士さんはなかなか聞けないので。「音凪」企画の「夏の倉地祭り」は毎年ソロと合奏(的確な言葉が思い付かない)の2 daysで、そうすると、どうしても、一夜限りの組み合わせになるかもしれない合奏の日を選んでしまい、結果、ここしばらく倉地さんの弾き語りを聞いていない、ということになっていて、それはそれで惜しいことをしていると思う。

 最初に、頭士奈生樹×村岡充ギターデュオ。ざらっとしたギターの音が、細かな粒子になるかと思えば、強い力を秘めたかたまりのようにもなる。力強いギターソロだ、といつも思う。歌も、流れにまかせているようでいて、流されずにひとつところにとどまっていたりする。ループや電子音も多用されているのだけど、厚くならず、奏でられているギターの音との違和感がない。いろんな角度からの視点で作られているのだと思う。

 倉地久美夫×外山明×工藤冬里トリオは、まずは演奏では初顔合わせという外山さん、工藤さんの二人で。童謡をモチーフにしつつ、隙も緩さもないピアノを弾く(はじく、とルビを振ったほうがいいかもしれない)工藤さんに、煽らず、しかしどきどきするリズムを構成するようにドラムを鳴らす外山さん。読めないし、邪気がものすごい、のに崩れない。倉地さんは途中から加わるつもりでいたのに、加われなかったそう。
 倉地さんが加わってからも、読めない、邪気にあふれつつ、崩れない緊張を伴った演奏が続く。倉地さんも「マイペース」では居られないのではないか、と聞きながら、推測した。なんだか今では、倉地さんの話は「笑うとこ」みたいになってるけど、初めて倉地さんの演奏を聞いたとき(博多在住時)は、笑っていいのだかどうだか緊張しながら聞いていた。そのかんじを思い出した。演劇的な展開も控えめで、終演後に聞いた倉地さんの言葉を借りれば、お三方とも Player でした。アンコールは、ラブジョイ/JB/ふちがみとふなとの「at home」カバー。倉地さん版も録音してほしいなと思います。
 倉地さんによれば、工藤さんに、曲は前もって連絡されていたそうだけど、細かなアレンジの打ち合わせはなかったそう。それで、あのギターの音やフレーズに呼応したピアノになったとは。実は、前の席に居た人が、演奏中も始終スマートフォンをいじっていて、バックライトがちらちらしたり、書き込みの動きが音楽のリズムと合わないことで、閉口して、目をつぶって聞こうかとも思ったのだけど、動きを見ない訳にはいかない演奏だったので、困ってしまった。

7月17日(月)
[一回休み]
7月18日(火) 【▼ぐりぐらメモ/2017年7月18日】
 連休明け。連日のライヴ鑑賞の影響か、腰にきている。仕事場には小銭入れと老眼鏡を持っていくのを忘れた。きょうはもともと写真を元にメモをとることにしていたので、老眼鏡を忘れたことで支障が出ることはなかったのだけれど。

 連休最終日の月曜日(海の日)は、9年ぶりに兎我野町「ハードレイン」に。12時からの橋坂愛さんの企画による「忘れたか忘れた外の部屋」。出演は、出演順に、サンシャイン・ガールズ(橋坂愛、末素生児、バチカ、クロエ)、黒岩あすかバンド(須原敬三、澤野祥三、秋葉慎一郎。須原さんが「クラウディボーイズ」と紹介されていましたが、その場の話だった模様。確かにメンバーのリアクションが「あ、そうなんだ」というかんじでした)、死因は愛(EvaRyu、Mitsuki、橋坂愛)、燻裕理。ちなみに(記録として)、「ハードレイン」の店頭の貼り紙は「忘れたかどうか忘れた遠い家」となっていて、Maher Shalal Hash Bazが出演予定だった旨が記されていた。

 どういう関連でだったか、たぶん、瓢箪山の店について調べていて、出てきた映像で橋坂さんを見て、面白そうなひとだ、と思ったのでした。さらに見てみると、バチカさんとも一緒に演奏されている。何度か未遂があったのだけど、ようやく。バチカさん&クロエさんも参加されるし、黒岩あすかさんも聞いてみたかったし、ひさしぶりに燻裕理さんを聞くのもよいかなと。昼のイベントというのもいいし。というのと矛盾するようだけど、12時までに行けるかどうかだけが問題で、予約はしなかった。前々日にお会いしたクロエさんや前日にお会いした須原さんには「行けたら行きます」と伝えていたのですが、それはもう、退路を断つためと言ってよく。そしたら、予約リストに名前を入れてもらっていた。すみません…。

 わたしにとってはお試しというか、試しではないか、様子見のようなかんじだけど、この日は特別編成が多かった模様。サンシャインガールズは、橋坂さんのお子さんの言葉に曲をバチカさんが曲を付けたものを演奏。黒岩あすかさんはふだんは弾き語りとのこと。死因は愛は、EvaRyuさんとMitsukiさんに橋坂さんが加わる形。燻裕理さんはギターとオルガンを演奏するソロ。
 サンシャインガールズは、混沌とした音の中に歌が見え隠れする。落し物を探すような。お子さんたちの声も流れていた。黒岩あすかバンドは、70年代の歌謡曲やロックのカバー多し。ハスキーな声とみえを切らない演奏が、原曲のもたれそうなところを回避してもたれなくてよかった。最後の曲は黒岩あすかさんのオリジナル。死因は愛は、ドラムとフリーキーなヴォーカルがカンを思わせて、とてもよかった。燻裕理さん、ひさしぶりに聞いたけど、ループを使ってらした。ギターをループさせて、オルガンを大きすぎる音でバキバキ鳴らしてた。「みんな元気でなぁ」の声をまたいつか。

 幕間BGMで、アーサー・ラッセルの大好きな "Instrumentals" がかかっていて、助かった。ライヴハウスの幕間は居たたまれないことが多いのだけど、好きな音楽がかかっていると、それを聞いていればよいので。

 バチカさんの『小さな幻があちこちに散らばる』を購入。

 兎我野町から肥後橋まで歩いて、「Calo Bookshop & Cafe」にいわたまいこ切り絵展「そこにいる」を見に。遅い昼食も。いわたさんの切り絵は、蟻やウニ、微生物をモチーフに、連なりの愛らしさを感じます。ハガキを2枚購入。
 謎の雑誌「トラベシア Vol.2 労働」も。ぱらぱらとめくっていて、うまくはないけれど、妙におもしろそうな文章が並んでいたので。

 「Calo」から「ジュンク堂書店」、そこから「タワーレコード」マルビル店と歩くのもひさしぶり。夕方には少し過ごしやすくなっていたかな。しかし、何も買わず、「ディスクユニオン」大阪店まで足を延ばした。デイヴィッド・トゥープ『フラッター・エコー 音の中に生きる』にようやく店頭で遭遇。もう付いてないかと思っていたオマケの未発表録音集CD-Rもまだ付いてました。
 アンディ・パウエルとフィルハーモニア・オーケストラによるアラン・パーソンズ・プロジェクトのイージーリスニング版 "PLAY THE BEST OF THE ALAN PERSONS PROJECT" (1983年)が安かったので、購入。一時的な企画ものと思うけど、CDも出ているんやね。

7月19日(水)
[一回休み]
7月20日(木)
[一回休み]
7月21日(金)
[一回休み]
7月22日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2017年7月22日】
 引き続き、腰が重いです。水曜日、帰りにコンビニに寄って、通販到着物を受け取ったのだけど、帰宅して、用事を片づけたあと、ゴロゴロしていて、そのまま眠ってしまい、カバンに入れたまま、出すことなく、朝になり、そのまま仕事場まで持っていってしまった。
 届いたのは、種ともこさんのデビュー30周年記念出版『バトン』。別枠で貯金をおろしました。財政出動の語を思い浮かべてしまった。公式サイトに掲載されていたロングインタビューに詳細な年表、ディスコグラフィをまとめた本と30周年記念ツアーのライヴ録音を収録したCD(およびハイレゾファイルのDL権)のセットです。インタビューはサイトで読んでいるけれど、読み返したくなる話があちこちにあり、テキストコピーして、勝手に冊子を作るか、と思っていたので、本になると聞いて、ありがたく。制作に向かい合って、どのように考え、どのように対処したかという話がメイン。納得したり、やっぱりそうだったのかと得心したり。冒頭に置かれた長いエッセイ「バトン」はまだちゃんと読めていないけれど、これも、種さんの厳しさ、率直さがあらわれているもののよう。

 デイヴィッド・トゥープさんの自伝『フラッター・エコー』を読み始めていたので、『バトン』は後回しに。トゥープさんの自伝では、年表の中の出来事や名前が、経験として語られている。ひとつひとつの作品の文脈を知ると、まるで、いまその作品が生まれてきたかのようなかんじがする。いくつもの流れがあり、それぞれが別々に書かれているけれど、年の記載によって、それらが同時であることがわかるし、内側と外側の事情のすりあわせに気付かされると言ってもいい。
 子供の頃の経験として、「クォータマス」シリーズの『火星人地球大襲撃』をあげていて、うれしくなった。わたしが見たのは、トゥープさんが触れているテレビドラマを映画にしたものだけど、好きな映画です。「レコード屋の日」に出品されていたサントラがいまさら欲しくなってしまった。
 『フラッター・エコー』は金曜日の帰りに、駅のWi Fi経由で「夜のピンチヒッター」を聞きながら読み終えた。訳者のlittle fish氏のインタビュー申し込みから発展した企画ということもあってか、あるいはもともとなのか、日本の文化や映画、アーティストへ言及も多い。トゥープさんの音楽は、70年代までのものしかほとんど聞いていないので、オマケのCD-R等で改めて聞いてみようと思う。

 金曜日の夜は、ほんとうは遅くからのレジデンツのドキュメンタリー映画を見に行くつもりだったのだけど、腰が思わしくないので、見送った。それで、「夜のピンチヒッター」「棚から鍋つかみ」を聞きながら、トゥープさんの本を読んでいたのでした。「棚から鍋つかみ」は安田謙一さんのご自宅にあるレコードから選曲したものということだけど、『フラッター・エコー』を読み終えての帰途の時間と、イレメさん選曲のコーナーが重なってしまった。「最近びっくりしたこと」というお題の投稿も採り上げていただいたのですが、帰宅してから、かかったテキサス・チェーンソー・オーケストラ "American Woman" を聞いて、井上智恵トリオを連想。そのタイミングで「そのライヴが終わったあとで…」と、投稿した元同僚に声をかけられた話をすればよかった、かも。

 腰が思わしくないので、何もなかったら、遠出はしなかったのだけど、神戸「御影公会堂」で一日だけ、「こころばかりのパルナス展」が開かれるというので、いそいそと。加西市図書館で開催中の展示の出張企画だったようです。出かける前に、最寄駅など確認していたら、ちょうど、その阪神石屋川駅で事故があり、運転が見合わせになったりしているとの報が飛び込んできた。時間がないのと、暑いのとで、歩くのは断念して、阪急六甲駅まで行き、16系統バスで「御影公会堂前」まで乗った。賑わっていて、私家版のCD「パルナスの調べ」をじっくり聞くことはかないませんでしたが、キャラクターがソビエトの子供向けの小説『ネズナイカのぼうけん』の表紙イラストから採られたことや三宮のファミリアやドンクと同じ区画でスタートしたことなどいろいろ興味深かった。阪神の野田オーナーの名も。

 御影周辺をあちこち歩いたのち、復旧していた阪神石屋川駅から、各駅停車で、梅田まで。その間、留守録したラジオで、「夜のピンチヒッター」のイレメさん選曲コーナーを聞いた。涼しいし、のんびりできて、よい。環状線の通勤定期を持っていなくてよかった。持ってたら、本を読んだり、レコードを聞きながら、何周もしてしまうかもしれない。

 梅田に戻り、歩いて、天神橋一丁目まで。まず「矢野書房天満橋店 ふるほんのはまや」に。品揃えがよく、アナログ盤も置いていて、前回45分かけて途中までしか見られなかった。で、続き。のつもりが、やはり残りのアナログ盤を見終わった時点でタイムアウトになってしまった。井上堯之バンド、ケニー・ウッド・オーケストラ『沢田研二オリジナルカラオケ集』を購入。「サムライ」まで入っているので、1978年の発売と思われる。

 先週に続いて、「雲州堂」に。「SONORAMABOX」という企画で、出演は順に、中井大介&PiCas(パイカス)、前川サチコ&光輝swedenデュオ、松ノ葉楽団。中井大介さんは、バンド編成は初めて。アルバムには入っているけど、キレがいいので、楽しい。低い声のコーラス、どなただろうと思ったら、ベースギターの音でびっくりしたり。前川サチコさんはピアノ伴奏とともに。ピアノはもうちょいブギウギ成分が転がるといいのにと思いつつ、前川さんのリードで弾むかんじになってた。松ノ葉楽団は、噂でのみ聞いてました。メインのひとがパリに引っ越しをして、活動休止になっていたところ、一時帰国で8月いっぱい精力的に活動される模様。気持ちよくスウィングするバンドでした。フランスでのエピソードをまじえつつ、かの地で求めに応じて披露した「日本的な曲」なども。

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2017 Kijima, Hebon-shiki