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2017年6月4日〜2017年6月10日


6月4日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年6月4日】
 見たい映画はあるのだけど、休みや予算はライヴを聞きに行くことを優先しがちで、タイミングを逃しがち。ケン・ローチ監督『わたしはダニエル・ブレイク』も見に行こうと思ったときには近くの映画館では上映が終わっていた。配給元が運営している公式サイトの劇場情報を見ると、関西ではあと「塚口サンサン劇場」だけになっていた。開始時刻が10時からと12時15分からと厳しいものだったのだけど、同じ尼崎で柳原良平さんの展覧会もあることということが動機付けになって、午前中から出かけることにした。この「同じ尼崎で」というのは大きな勘違いだったのだが。

 『わたしはダニエル・ブレイク』は、心臓病を患うベテランの大工が給付を巡って行政に翻弄される姿を描く。行政は、個々の事情を顧慮するという余裕を失っている。余裕というと、顧慮しなくても「問題ない」もののように受け取られるかもしれないけれど、そうではなく、顧慮しなくてもできているかのように見えてしまうのがおそろしい。誰にも益がないことが「事実」によって横行する。「事実」に誰もが疲弊し、壊される。「事実」をなんとかしようとすることそのものが潰されてしまう。なんとかしようとすることとそこから始めないと立ち行かなくなるということを描いた作品だった。

 見終えてから、とりあえず歩き始めたのだけど、しっかり道に迷ってしまった。方向のとりかたを間違えた。停留所ふたつ分歩いて、少し気持ちが落ち着いた。で、無駄に余計に歩いてしまったことと、思っていた以上に阪急塚口駅と阪神尼崎駅の間に距離があることがわかったことで、諦めてバスに乗ることに。阪神バスは前払いだった。前払いのバスに乗るのはひさしぶり。

 「尼崎市総合文化センター」での「柳原良平アンクル船長の夢」展。柳原さんは、このあたりに住んでいたこともあったのだ。小学生のときに船好きの友達一人のために出していた自筆雑誌や学生のときに、実物が完成する前に設計図をたよりに作ったというぶらじる丸の模型など、仕事以外の展示も充実していて、とにかく船が好きであることはもちろん、本や雑誌を作ることが好きであったこともうかがえた。開高健や山口瞳らと作っていた「サントリー」のPR誌「洋酒天国」にしても、会社の企画があったのではなく、仲間うちで作ろうとしていたものに会社が乗ったようなものだったらしい。船好きの面では、客船だけでなく、コンテナ船などの輸送船への愛着がうれしかった。展示は、尼崎の海の歴史ともリンクさせていて、この地で開催することの意義を感じさせた。100円で、シンプルではあるけれど、パンフレットが用意されていたのもうれしかった。
 唯一少し残念だったのは、ビデオ上映。トリスウヰスキーCM集やアニメーション作品を上映していたのだけど、途中から見始めた船の一生を模型と切り絵で描いた「ばいかる丸」が終わると、また「ばいかる丸」が始まった。もしかしたら、プログラムがおかしいのではないかと思い、係のひとに伝えて、それが終わったあとにCM集が流れたのだけど、今度はCM集が繰り返される。他の展示を見ては戻ってみたのだけど、ついにアニメーション作品3本のうち「ばいかる丸」以外の2本は見ることができなかった。
 併設の白髪一雄さんの記念室も覗いた。「具体美術協会」のメンバーでアクションペインティングで知られるひとだけど、アクションペインティングによるものではない、空間を地層化したような「流脈1」という作品が印象に残った。

 塚口まで戻る気にはなれず、阪神電車で梅田まで。地元のひとにはあたりまえの光景かもしれないけど、尼崎駅で、左右両方から乗り降りできるのは不思議なかんじだった。阪急西宮北口駅でも両方開くけれど、乗る扉と(乗り換えのため)降りる扉は一応分かれていると思う。

6月5日(月)
[一回休み]
6月6日(火)
[一回休み]
6月7日(水)
[一回休み]
6月8日(木)
[一回休み]
6月9日(金) 【▼ぐりぐらメモ/2017年6月9日】
 月曜日から通勤路線で一部ダイヤグラムの変更があり、いつもどおりの便に乗ると、仕事場最寄駅の到着が1分遅い。月、火と用心のため早めに出て1本前の便に乗っていたのだけど、水は朝から雨で、間に合わず。金曜日も何故だか間に合わなかった。ただ、雨の水曜日は人通りが少ない道に遠回りするのでわからなかったけど、金曜日は仕事場に着いてみれば、前のとおりだった。別路線からの合流のタイミングがちがっているために若干人が少なく、自分のペースで歩けるから、駅から仕事場までの所要時間が短かったのだ。
 ICカード乗車券にも慣れてきたけれど、プリペイしている金額を確認するには券売機を使わねばならず、すぐに確認できないことで、寄り道することに自制心が働くようになってしまった。出られないのではないか、と。

 月曜日の夜、通販到着物受け取り。家にほど近い、こじんまりしたイートインコーナーがあるコンビニで。コーヒーを飲みながら開封。ブリーダーズの "LSXX"。なんでいまごろ、と言えば、5月26日にyoutubeのはしごをしていて、たまたま "Cannonball" の販促映像に行き当り、見たことなかったなと思って見たら、曲はもちろん、映像も面白くて、何度も繰り返して見てしまった、から。なんというか、無愛想で傍若無人でしかもなんだか茶目っ気がある、演奏そのままの映像で、かっこよかった。"Cannonball" は、シングルで持っているけれど、ある曲があまりに気に入ると、それだけで満足というか、それほどでもという曲を手元に持っておく気になれなくて、それしか持ってないということがよくあって、アルバム "LAST SPLASH" も聞いていなかった。で、youtubeでそのままブリーダーズの演奏をいくつかはしごしていたら、他の曲もええな、となって、改めて、"LAST SPLASH" を聞いてみようと。
 "LSXX" は、出ていることすら知らなかった2013年発売の "LAST SPLASH" 20周年記念盤。"LAST SPLASH" に、前後の関連シングル("SAFARI"、"CANNONBALL"、"DIVINE HAMMER"、"HEAD TO TOE"、"SAINTS")やオムニバスの収録曲とデモを集めたもの、ファンクラブ会員にのみ販売されたというライヴアルバム収録曲を含む1994年5月17日のストックホルムでのライヴ録音と1993年7月24日放送のBBCセッションを収録したものを加えた3枚組です。豪華なセットだけど、やはり無愛想です。ブックレットにはメンバーやスタッフのエッセイや当時の日記が掲載されているけれど、曲については必要最低限の情報が小さな文字でびっしりあるのみ。初出とか元のジャケットデザインとか、アーカイヴ的な要素はまったくないところが「らしい」。曲は、重いビートのものもあれば、軽やかなギターポップもある。"Happiness Is A Warm Gun" のカバーをやっているけれど、"Saints" は "It's All Too Much" や "A Hard Day's Night" が垣間見えるかんじで面白い。"Drivin' on 9" は、とぼけていて、かえる目みたいだ。

 火曜日。早朝に、ディスクユニオンに通販を頼んだ水曜日発売のアルバムが運送会社の営業所に到着したという連絡が入った。ディスクユニオンの通販は、代引のみだった昔に比べれば、クレジットカードや銀行支払いができるようになって、利用しやすくなったが、コンビニ受け取りには対応していない。しかし、老母を待機させたり、玄関まで急がせる訳にはいかない。幸い、というか、幸か不幸か、運送会社の営業所止めという選択肢があった。自宅から、仕事場から、通勤路線から近いところを探した結果、仕事場から歩いていけそうなところがあった。月曜日15時19分に出荷されて、火曜日早朝5時55分に到着したその営業所に引き取りに行かねばならない。という訳で、帰りに「寄る」ことにした。
 片付けながら、その営業所近くに住んでいて、自転車で通ってきている同僚に「××の営業所って知ってる?」と訊いてみた。「見たことない。大きいとこ?」との返事に急に不安が。「規模はわからないけど、大きいんとちゃうかな」と住所を告げると、「ああ、近くは近く。でも、歩くのは遠いよ」。30分はかかるのでは、と。う、目算より10分かかる。しかたがない。運送会社と倉庫が立ち並ぶ場所というのは、つまり、他に何もないところなのだけど、運動だと思って歩くことにするか。
 案の定、行き過ぎて戻ったりしつつ、しっかり30分かかった。営業所止めの荷物を引き取りに行ったのは初めてなので、それも目的といえば目的だった。受け付けは、荷物の積み卸しをしている倉庫入り口の片隅にあった。伝票番号を伝えて持ってきてもらい、手渡しの際に証明になるものを見せて、無事受け取ることができた。図書館のベストアルバム『図書館の諸作品』。12インチ、というよりも30cmのLPレコードです。

 『図書館の諸作品』は、2枚のアルバムから4曲ずつ収録され、かえる目「パンダ対コアラ」のカバー(2011年10月配信のみでリリース)が言うてみたらボーナストラックとして追加されている。うちのへなちょこなステレオ装置ではアナログならではの…なんてことは言えないけれど、聞いていて、パーカッションがびしっとしてるなと思ったら別テイクだったり(「夏休みをやっつけろ」)、「最終電車」には、販促映像に入っていた電車が去る音が入ってたりして、思わぬ楽しみもあちこちに。CDプレイヤーがなく、CDを聞くのはパソコン+ヘッドフォン、回数を聞いているものはタブレット+イヤフォンという現状では、スピーカーを鳴らして聞くだけでも、ふだんとちがうように聞こえるというところもある。パーカッションやコーラスが特に。ちらっと顔を見せてはすぐにひっこむような穏やかで慎ましい音でできているのだけど、その連なりが、次の音への予感を秘めていて、歌を前に進める力になっている。だから、いつも、あっという間に歌が終わった、という気持ちになる。初回特典?のCD-R『図書館への助走(STUDIO DEMO)』はもったいなくてまだ聞いていない。

6月10日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2017年6月10日】
 午後から出かけたが、立ち寄り先のひとつの住所の控えを持って出るのを忘れて、断念。続いて、寄ったところでは、手に入れようと思っていた本が売り切れていた。とほほ。やはり昨日の夜に回るべきだったか。

 梅田から「ホテル関西」の看板が出ている通りから歩いて、北浜・平野町のマンション、メロディハイムに。以前来た覚えがあるのだけど、どこにどんな用でだったかまったく記憶がない。思い出したくない時期のことなのだろうか。ともあれ、10階の「10Wギャラリー」での糸川燿史写真展「大阪芸人ストリート」 に。「マンスリーよしもと」の扉やチラシを飾った写真の展示。90年代末くらいまでかな。いまも活動しているひとたちは「若い」し、いまはもう無い場所、今の姿になる前の様子が背景に写っているし、最近「見かけない」ひとたちもいるし、糸川さんのモノクロの具合とあいまって、時が止まっているかんじがものすごく、する。会場には、「マンスリーよしもと」のバックナンバーや宣材写真のファイルも置かれていて、カンパで持ち帰りできるとのことだったけど、杉岡みどりさんとかミスターボールドといっためあてのひとたちのは既に無くなっていた。残念。

 夜はひさしぶりの天神橋一丁目「音凪」での福岡史朗+松平賢一+大久保由希トリオ(と言うか、福岡史朗&スピーディーマンドリルと言うてたような気が)のライヴに。7月16日発売の福岡史朗さんの新譜『SPEEDY MANDRILL』も先行発売されて、全曲演奏するという発売記念ライヴでした。
 最初に大久保由希さんのブルーズ要素多めの選曲の数曲、松平さんのソロ1曲に続いて、そのままメインに突入。「朝のステーキ」で肩ならし(?)したあと、『SPEEDY MANDRILL』全曲演奏。福岡さんの曲の展開は緻密に練られているし、歌詞は流れに任せたものではないので、演奏し慣れていないことから緊張されていることは想像に難くない。のだが、聞いている分には、ざくっとした印象を抱かせる大らかさがいつもあるし、今回はどことなくラテンっぽい要素も感じられて、なおのこと、演奏者の緊張はおかまいなしに聞いてしまってた。大久保さんのハイハットの音色はいつもしびれる。福岡さんと松平さんのギターのコンビネーションはとても大きな空間を作る。そこをのびやかな歌やコーラスが駆け抜けていくのだ。長年親しまれている曲をアンコールで演奏して、お開き。通しで休憩がなかったので、思っていたよりも、早い時間だった。『SPEEDY MANDRILL』を購入して帰宅。
 18時過ぎに着いたら、既に客席はいっぱいになっていた。扉近くに座っていたら、「家族連れの方が来られるんですよ」という話を聞いて、それならテーブルは開けといたほうがええよねと移動したら、元同僚、でした。びっくり。そう言えば、「SOLE CAFE」での福岡さんのライヴのときも見かけたのでした。ちびっこたちも福岡さんや大久保さんのことが大好きなようで、一生懸命聞いてる気配がうしろから伝わってきてた。「サンタイガー」には「子供たち」が登場するけれど、福岡さんの歌は児童文学に通じるところがあるような気もする。

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2017 Kijima, Hebon-shiki