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2017年5月14日〜2017年5月20日


5月14日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年5月14日】
 家族行事、のあとは、ぐったりしてしまい、起き上がれず、出かけられず。
5月15日(月)
[一回休み]
5月16日(火)
[一回休み]
5月17日(水)
[一回休み]
5月18日(木) 【▼ぐりぐらメモ/2017年5月18日】
 昨日、仕事を終えてから、京都へ。「アバンギルド UrBANGUILD」でのフランク・ロンドン with ジンタらムータのライヴ。再来日とあるけれど、前回は知らなかった、のかな。自分の記憶があてにならない年頃になってしまった。
 フランク・ロンドンは、クレズマティックスのひととして知ったトランペット奏者。映画『さよならコロンバス』の結婚式の場面で流れていて、強く印象に残った蛇腹のようなうねうねとした音楽が「クレズマー」と呼ばれることを知ったのは、1987年かその翌年、ピーター・バラカンさんがNHK-FMの番組でかけたアンディ・スタットマン・クレズマー・オーケストラの "Naftule's Tango" を聞いたとき。ああ、これやと合点した。そのときはバラカンさんも確か「クレッツマー」か「クレッチマー」と発音していたと思う。それで、その「クレッツマー」をたよりにレコードを捜し始めるのだけど、前ネット時代の話なので、要するにレコード店に行って「ありそうな棚」をさらうという方法で。なかなか見つけられず、神戸の今はなき「リズム・キングス」でようやくそれらしいものとして出会ったのがクレズマティックスだった。KlezmaticsというからにはKlezmerのバンドにちがいない、と。ん、そやけど、当時、綴りを知っていたかどうか。とにもかくにもというかんじで買って、聞いてみて、いくぶん「うねうね」度は小さかったものの、確かに捜し求めていた音楽だった。なんの知識もなかったけれど、それがクレズマティックスの第1作 "SHVAYGN=TOYT"(1989年)だった。レーベルはドイツみたいだし、そのあたりで活動しているバンドなのだろうかと思いながら、クレジットを眺めて驚いたのが、ショッカビリーのドラマー、デイヴィッド・リクトがメンバーに居たこと。同じ名前のドラマーという可能性もないとは言えなかったけど、あ、ニューヨークのバンドなんやとにわかにつながるかんじがした。ジョン・ゾーンはユダヤ音楽のプロジェクトを始めていただろうか。少なくともわたしは知らなかった。それでも、その演奏にニューヨークのバンドに通じるものを感じた。クレズマーリバイバルのことを知るのはもっとあとの話。でも、最初がクレズマティックスでよかったと思っている。伝統芸能保存会的なものとしてではなく、今聞いてぐっとくるものとして演奏していたから。

 今回の来日は、『クレズマーの文化史 東欧からアメリカに渡ったユダヤの音楽』の著者、黒田晴之氏の招聘とのことで、各地の大学での講演も組まれていた。できれば、講演も聞きたかったけれど、仕事のある日の昼間のことなのでしかたない。ということで、恩返しというにはあまりにささやかなものだけど、ともかく目の当たりにしたかった。活動が多岐に渡ることや最近このあたりの作品を目にする機会が減っていたこともあって、いまの彼の活動を知らないでいたことを申し訳なく思いつつ。
 演奏は、大熊ワタルさん、こぐれみわぞうさんを中心とするユニット、ジンタらムータとの共演。シカラムータの「圧」と人気にあてられてしまって足が遠のいたので、ジンタらムータとしては初めて。ギデオン・ジュークス氏とふーちんさんのリズムセクション、佐藤芳明さんのアコーディオンが加わった5人編成。ゆっくりとたちあがる曲からスタートしたけれど、こぐれさんのチンドン、ふーちんさんのドラムに煽られて、すぐに全開に。トランペットがパワフルで、どんな曲も内側から弾けていくかんじが面白い。ものすごい突進力。その中で、佐藤さんのクールなアコーディオンやギデオン・ジュークスさんのチューバが静かに波紋を広げていく様がかっこよかった。

 休憩をはさんで後半はゲストのクラリネット奏者、樋上千寿さん、ウッドベースの船戸博史さんが参加。ウッドベースが加わると、リズムとは別のうねりができて、それがまたそれぞれのひとの演奏に呼応する。2曲目にやったロンドンさんのオリジナル曲が、うねうね度の強い蛇腹曲で、静かではあったけれど、力強くて良かった。樋上さんの端正なクラリネットは、曲を立たせていて、こころよかった。

 フランク・ロンドンさんの近作などあればと思っていたのだけど、それはなくて、代わりに、大熊さんが寄稿している「みすず」2017年4月号と5月号を購入。書店によっては無料で配布しているみすず書房の販促誌だけど、少なくとも4月号は手に入らないだろうし、お礼の気持ちもあり、購入。そう言えば、しばらく見かけていなかったけれど、いまでも無料で配布されているのだろうか。カラー写真の表紙に驚いた。
 大熊さんの「生き生きと幸せに チンドン・クレズマーの世界冒険」は、日本のクレズマーバンドとしてニューヨークやベルリンに招かれた旅の記録とクレズマーとの出会いを交差させている。大熊さんのクレズマーとの出会いは、やはり30年前、中尾勘二さんが見つけてきたクレズマー・コンサーバトリー・バンドのアルバムだったそう。篠田昌已ユニット『コンポステラ』に収録されたクレズマー曲もそこに入っていたものという。そうした事始めを読むのも楽しいけれど、いまのクレズマーをめぐる状況に触れたところで、現在はリバイバル初期の自由なかんじよりも、オーセンティックなとらえかたが強いのではないか、それからすると、自分たちはガラパゴス楽団かもしれないという指摘に考えさせられた。

5月19日(金)
[一回休み]
5月20日(土)
[一回休み]

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2017 Kijima, Hebon-shiki