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2017年5月7日〜2017年5月13日


5月7日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2017年5月7日】
 あれこれ調達がてら、近辺をうろうろ。目当ての本は見つからない。面白そうな小説を見つけたけど、後編しか置いていなかった。店頭での出会いに左右されてしまう身には、近辺にこれはというものを並べてくれる店がないことが残念なような、セーブになっているような。見るまで思い出せなくて。通勤用のカバンも新調できなかった。そろそろどこかが破れるか切れるかする頃ではないかと思う。ついでに自転車をあてどなく走らせる趣味も。

 「祝春一番」で「世代交代」を意識した。村元さんは、「雲遊天下」のインタビューで「実験」と呼んでいた。しかたなく流れていくものではなく、できるかどうか工夫しながらやってみよう、ということだ。126号に書いた文章は、ブラシュアップしたら、池間由布子さんのことしか残らなかった。「世代交代」というテーマにかすっていると言えなくもない。大テーマとは別に、関西にある場所とフォークの文脈ではないところにいる人のことを書くようにするという小テーマがあるのだけど、そうすると、異なる文脈で通じるものを探りながらになるので、どこかいつも世代交代を意識することになる。代えてしまおうというようなことは考えていなくて、こういうひとが居ますということを伝えられたらということを思っているのだけど。お節介というか、余計なお世話のような気がしなくもないのだけど、読んでいるひとはどう感じているのだろう。

 通販サイトでの「レコードコレクターズ」5月号へのユーザーコメントに酷いものがあるという話を聞いた。5月号の特集は、「レココレ読者が絶対に聴くべき21世紀の名盤」。表紙だけ見て、雑誌が読者をあからさまに提示し出すことに嫌な予感を持ったけれど、ベスト企画が恒常化した頃に買うのを止めて、いまでは3月号しか買っていない、この号にも興味が持てない身には何も言う資格はないと思って、何も言わないでいたのだけど、どうやら、この読者の提示は囲い込みではなく、挑戦らしい。名盤と呼ぶべき充実作は、過去だけでなく、現在もあるという。世代交代といっても、読者を交代させるのではなく、耳というか聞きかたの更新を意図しているのだと思う。レコードを聞く楽しみをこれからも続けていくための仕掛けとして。そのことを理解できないユーザーコメントに語るべき内容は無いけれど、それでも、それがベスト企画として提示されていることへの違和感はある。ひとや傾向を、レコードを題材に、「深堀」すればいいのに、と思う。Soi 48の『旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド』のように。

 書き忘れていたラジオの話。金曜日、ラジオ関西「夜のピンチヒッター」で、諸星大二郎『暗黒神話』に寄せてリクエストしたジェリー・イェスター&ジュディ・ヘンスキの "Farewell Aldebaran" をかけてもらいました。長い名前と言いにくい題名を何度も安田謙一さんに言わせることになり、次は簡潔な名前と題名にしよう、と反省しました。

5月8日(月)
[一回休み]
5月9日(火)
[一回休み]
5月10日(水)
[一回休み]
5月11日(木)
[一回休み]
5月12日(金)
[一回休み]
5月13日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2017年5月13日】
 帰りに通勤ルート途上の書店を回ってみるも、めあての本がことごとく見つからない。遠回りして、近隣市ではもっとも規模が大きいと目される書店にも行ってみたけれど、無かったり、置いてある売り場が既に閉まっていたり(カフェを併設している階は開いていても、その他の階は先に閉まるのだ)で空振り。気分転換にはなったけど。

 通勤読書。前半は、川瀬泰雄 吉田格 梶田昌史 田渕浩久『ニッポンの編曲家(アレンジャー)』。連休前の4月26日(水)に放映されたNHK-BS『名盤ドキュメント 太田裕美「心が風邪をひいた日」 木綿のハンカチーフ誕生の秘密』を見て、読み時だと思い。「名盤ドキュメント」では、作曲家(筒美京平)と作詞家(松本隆)の実験はもちろん、ディレクター(白川隆三)、アレンジャー(萩田光雄)、宣伝(丸山茂雄)の関わりに焦点を当てていた。
 『ニッポンの編曲家』には萩田氏へのインタビューはもちろん、スタジオミュージシャンの証言として萩田さんの仕事ぶりが掲載されている。この本を読み始めるのと同時に、萩田さん編曲で、出た当時、太田裕美作品に通じるものを感じた原田知世『パヴァーヌ』を聞き直してみたのだけど、本の後半に、担当ディレクターだった吉田格氏が、『パヴァーヌ』について書いていて、驚いた。この路線はこれが最後で、その後、後藤次利プロデュースに移行してしまい、がっかりしたものだけど、吉田さんによれば、『パヴァーヌ』のB面、井上鑑編曲のLight Sideで、メリハリの効いたボップスを本人が気に入っていたことが発端らしい。
 『ニッポンの編曲家』は標題にあるアレンジャーだけでなく、スタジオミュージシャン(仮歌シンガーを含む)、ディレクター、エンジニア、スタジオといった主に90年代までの歌謡曲の制作スタッフたちの仕事や環境を記録するものでした。対象となる作品そのものは、つっこんで聞いたことがないものがほとんどだけど、編曲家の名前は見かけていたし、スタジオミュージシャンには親しんでいる名前も多いので、点と点がつながることが多かった。

 通勤読書の後半は、村元武さんの『プレイガイドジャーナルよ 1971〜1985』。「プレイガイドジャーナル」誌が軌道に乗り始めた1973年から、プレイガイドジャーナルから離れられた1985年までの記録。スタッフの働きぶりや交流が詳細に描かれていて、「情報誌」とは言うものの、取り扱っていたのは身近な状況だし、交流を通じて広げつつも、そこから離れることはなかったし、その状況を作り出す側でもあった。わたしが「プレイガイドジャーナル」に読者としてお世話になっていたのは、1979年頃からで、毎号買っていたとなると、働き始めた頃からで、そのとき村元さんは既に離れてビレッジプレスを始められていた。それでも、その80年代前半の時期にしても、なんで知らなかったのだろう、行ってなかったのだろうと思うことが多々あり、またここでも点と点がつながることが多かった。

 きょうは、堺筋本町「HOPKEN」での合奏の会/第65回公演「シンセサイズド お父さん」を聞きに。出来心で、堺筋本町駅に着いたときに地下街に足を踏み入れてしまったことで、すっかり方角を見失ってしまった。うろうろしていたら、天牛書店を見つけた。あ、こんなところに、と思って見始めてたら、しばらくして、ワゴンが片付けが始まり、焦って、目についた2冊を購入。18時までだったらしく。
 合奏の会の出演は、行楽猿(みやけをしんいち、清造 "せいぞうちゃん" 理英子、西浦徹、武村篤彦、加納 "サワディ" 佐和子)、メタミュラー・グヌピコ先生、数えきれない。行楽猿は、朗らかに歩いていても、なにかを感じて後ろを振り返ってしまうような、不穏なものを醸し出していた。西浦さんのギターは初めて聞いたのではないか。エフェクトの効果をメロディの構成要素にしていて、不思議なかんじだった。ひさしぶりに加納さんのタイトなドラムを聞けたのもうれしかった。メタミュラー・グヌピコ先生は、オシリペンペンズ中林キララさんによる歌謡&ダンスショウ。打ち込みには音楽ネタも仕込んであって楽しい。動きもすごいけど、それを自ら茶化す脱力ぶりもかなりぼんやりとではあるけれど好きです。数えきれないもひさしぶりに聞けた。かみあってない話のやりとりを聞くのも楽しいけれど、それが演奏になると、交錯する複雑な図面のようになるから面白い。アルバムに入っていない初めて聞く曲も1曲ありました。

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2017 Kijima, Hebon-shiki