目次に戻る

2016年12月11日〜2016年12月17日


12月11日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月11日】
 『ロンドン大追跡』きっかけで、あまり聞いていないムーディ・ブルースやクリームを聞いてみている。ん。聞いている、でいいところを、「聞いてみた」と、試しというか仮のニュアンスを手放せないでいるところがなんとも。いままで縁がなかったものも、きっかけがあれば、ぐっとくるようになるのではないかというほのかな希望は持っているけど、これ以上「気になるもの」を増やしてどうするという気もする。もっと若いときだったら、あるいは別の状況ならぐっときたのではないかということもいつも思っている。性善説みたいだ。
 ムーディ・ブルースはビジュアルイメージが合わなかったのが大きいかもしれないしれないけど、音もぼやっとした印象を持っていた。"IN SEARCH OF THE LOST CHORD" について言えば、ポップソングが基調であることは初期のビートバンド時期からそんなに変わっていない。メロトロンやフルートが入っていることで、とてもおおらかなものにはなっているけれど、緊張を強いるタイプの音楽ではない。そういうところが物足りなかったのかもしれない。
 世を忍ぶ仮のApple Musicのおかげで、罪悪感を軽減しつつ、いろいろ聞けていることは確か。試し聞きにはとてもありがたい。いや、しかし、買ってしもてたら「もっと」「聞いた」のではないかという疑念も捨てきれない。

 とりあえず今日の分の用事が終わってから、頼まれものもあり、梅田に。欲しい本が自転車で行ける範囲の書店では揃わなさそうということもあって。店に行って、そこであれこれ見て、そこから選んで買いたいと思っているけれど、買おうと思っているものがあるときは揃わないとつらいので、安全策をとってしまいがち。その安全策(大きな店)すら、このところあてにならなくなってきている。通販は、探しても手に入らないもののために取っておきたいと思っていたら、「探しても手に入らない、が、通販なら簡単に手に入るもの」ばかりになってきたという印象を持っている。

 先日のホセ・ゴンザレスのペアチケットのお礼を心の中で一方的にしつつ、ディスクユニオン大阪店に。坂本慎太郎とVIDEOTAPEMUSICの『ホンコンの夜』を買う。焦らなくても、emレコードでは追加プレス中とメルマガに書いてあったのだけど、なんだか、アナログ盤というだけで手に入れにくいという恐怖心が植え付けられていて、困る。その他、何枚か欲しいレコードはあるのだけど、揃わないので見送り。本も、探しに来たのはどれも音楽絡みなのだけど、見あたらず。

 本は、あちこち回ったのち、しかたがないので、マルジュンに。揃った。小田晶房さんの『渋谷のすみっこでベジ食堂』、岩瀬成子(いわせ じょうこ)さんの『オール・マイ・ラヴィング』小学館文庫版、「murmur magazine」改め「まぁまぁマガジン」22号は、リニューアルして詩とインタビューの雑誌になったということだけど、レインコーツのインタビューと訳詞が出ているので。

12月12日(月) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月12日】
 グレッグ・レイクの訃報が届いた日に注文したエマーソン・レイク&パーマー "TRILOGY"(1972年7月発売)が届いた。中学生の時に「担当」でなかったことが影響して、活動休止前のスタジオ録音作品の中ではこの一枚だけ手元になかった。えらく範囲を限定しているようだけど、聞き始めた頃はちょうど1973年の "BRAIN SALAD SURGERY" 発表後の活動休止時にあたっていて、それまででひと括りというのが実感。その活動休止期間中に分担してそれまでの作品を聞いていたのだ。
 "The Endless Enigma"、"Trilogy"、"Abaddon's Bolero" の3つの長尺曲を軸に、小品がいくつか。小品のうちでは、活動休止時に発売された3枚組のライヴアルバムの冒頭で演奏されていることからラジオでもよくかかり、馴染みがあった "Hoedown" 以外はまるっきり忘れてた。キース・エマーソンのラグタイム趣味が反映された "The Sheliff" 他、どれも戯画化された雰囲気で、アメリカのテレビドラマを思わせる。映画の間にドラマやニュースがはさんであるかのよう。"Trilogy" も戯画的ではあるけれど、ポルタメントを多用したキーボード、張りつめたピック弾きのベース、ちゃかぽこしたドラムスの組み合わせは彼らならではのもんやなと改めて感慨。ちょっととぼけたかんじがいい。"Abaddon's Bolero" のイントロの意図されたしょぼさとか。大見栄を切るところがだんだん合わなくなって聞かなくなったけれど、あえて大見栄を切ってみせるところが良かったのだとも思う。

 "Bolero" と言えば、買ったのは、2012年の紙ジャケ日本盤なのだけど、これにしたのは1977年の活動再開時に当初プロモ盤 "ON TOUR WITH EMERSON, LAKE & PALMER" にのみ収録されていたロンドン交響楽団によるオーケストラ版が入っているから。渋谷陽一さんのグレッグ・レイクインタビューのことを、訃報のあった日に書いたけど、そのときだったかにNHK-FM「ヤングジョッキー」でこのオーケストラ版が放送されて。のちに、このプロモ盤をNさんに借りて聞かせてもらった。プロモ盤では "Abaddon's Bolero" ではなく、"Bolero" と記されていた。渋谷さんもそう告げていたと思う。キース・エマーソンの編集盤にも入っているということでそれを探したけど見つけられず。少し前に、この日本盤に収録されていることを知って、どうしようか迷っていたのでした。元曲が入っているとは言え、本来は "WORKS" 関連だし、その他の2曲のライヴ録音は別に完全版が出ているし、で。
 それにしても、この2012年発売の紙ジャケ盤に添付された解説はひどい。1993年の再結成をきっかけにした権利移動によって再発されたときに書かれたもので、再結成時のインタビューと本作についてのあたりさわりのない情報を組み合わせただけ。ボーナストラックについての解説はなし。どうせなら、日本盤が初めて発売されたときの解説を復刻してくれたほうがよかった。

12月13日(火) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月13日】
 グレッグ・レイクの訃報を聞いたとき、キング・クリムゾンの最初の2枚やELPをいきなり聞くと、いろいろ思い出してしまうかもしれないと、ゲスト参加しているピート・シンフィールドの "STILL" をひさしぶりに聞いてみることにした。ら、Apple Musicに2枚組版があがっていた。結局、"TRILOGY" が届くまで待つことになったけれど。
 元キング・クリムゾンの、と言っても、作詞とコンセプト担当なので、音楽はちがっていても不思議はない。これはフォークというか、シンガーソングライター作品。たぶん十年以上聞いていなかったと思うけど、どの曲もよく覚えていて、いまさらながら十代の頃のレコードがなかなか買えなかった時期の「聞き込み」はあなどれないと思う。これも「Daiga」で買った。地元のレコード店にはもう置いていなかったので置いてくれてて感謝、の気持ちだった。考えてみれば、発売から5年くらいだ。いまだと2005年発売のものでも「最近」のような気がして、入手困難でアマゾンで業者がアホみたいな値段を付けているのを見て憤慨してしまうけど。
 淡いファンタジックなフォークソングを、キング・クリムゾンやプロデュースしたバンドのメンバーがバックアップしている。演奏から生まれたものではないので、緊張感のある構成ではないし、引き延ばしたように感じられるところもある。"Hanging Fire" と "Can You Forgive a Fool" は1993年に "STILLUSION" として再発されたときに加えられた発売当時未発表だった曲で、よりフォーク色が強いので、多彩さを優先して外されたのかもしれない。ヴォーカルは、声の出しかたとか発音が少しブライアン・イーノを思わせる。好きなレコードだけど、シンガーソングライター作品として見ると、もっとこじんまりした佇まいだとよかったのに、と思う。
12月14日(水) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月14日】
 月火の通勤読書で、小田晶房さんの『渋谷のすみっこでベジ食堂』を読み終える。その時に必要なもの、面白いと思うもの、既存のものへの疑問に対する答を考えて考えて考えて、ときに考え直して軸足を変えたりしながら、できることの中でなんとか作ってみる日々が記されています。料理への求道精神や食堂に対するプロ意識からすると真逆の、かと言って料理や食堂を手段にしている訳でもなく。強靭な精神力で、という訳でもない。
 必要なものとしての場のつくりかたもいろいろあるとは思うけど、「おっさんが一人で入れるベジ屋にするには」の項で書かれている「匿名性が魅力に見えてくる」距離感の話がわたしにはしっくりくる。これも、考えた結果のひとつ、ではあるので、最終回答ではないのだけれど。

 昼、仕事場構内の売店に寄ったら、"Supercalifragilisticexpialidocious" がかかっていて、おや「802」でめずらしい、と思っていたら、会話のBGMとして続けてゲイリー・マクファーランドの "Flea Market" がかかっていた。"Supercalifragilisticexpialidocious" はゲストの木村カエラさんのリクエストだったみたい。「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」ときちんと話されたのだろうか。わたしは実はきちんと覚えていません。「スーパーカリフラジリスティックふにゃふにゃ」となります。"Flea Market" もカエラさんのリクエストだったのだろうか。BGMは「802」のオンエアリストに載らないので、書いておこうと思った次第。
 いま「フリーマーケット」と頭の中でカタカナで読んでいて、妙な違和感が。「蚤の市」もあまり見かけない。昨今はすっかり「フリマ」になってしまっている。この曲について、動画投稿サイトで検索をかけると、ガボール・ザボによる演奏が出てきた。ガボール・ザボは、マクファーランドとともにスカイ Skye を設立した人でもあり、盟友といってよいのだけど、お洒落でエキゾチックなジャズギタリストのイメージがあって、積極的に聞いてみようといままで思ったことがなかった。"DREAMS" のジャケットは気になっていたけれど。Apple Musicで検索すると、"Flea Market" を収録したアルバム "GYPSY '66" があった。

  "GYPSY '66" は1965年発売のソロデビューアルバムで、"with Gary McFarland & Co." とクレジットされている。ビートルズの "Yesterday"、"If I Fell"、バカラック&デイヴィッドの "The Last One To Be Loved"、"Walk On By"、ミュージカル『子鹿物語』からの "I'm All Smiles" といったポップスのヒット曲と自作およびマクファーランド曲で構成されている。"The Last One To Be Loved" は鮮烈だけど、他のポップスカバーはそこそこ。それらよりも、自作のタイトル曲 "Gypsy '66" がとても良くて。エレクトリックギターのざらっとしたコードストローク、ややノイジーなトレモロ、漂うようにメロディを追いかけるギターがサイケデリックで。

12月15日(木)
[一回休み]
12月16日(金)
[一回休み]
12月17日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月17日】
 水曜、木曜は、金曜日で退職する同僚への餞別にと、はっぴいえんどのサンプル版作り。水曜日にボックスセットを聞き直して、ついでに行方不明だった細野さんのクラウン時代のセットのブックレットも見つけて、分散していた関連作品をまとめ…て、まだ居間の傍らに置いている。収納しろよ、という話。
 退職する同僚は、以前、やはり送別会の席で、はっぴいえんどのことが話題に出たときに、伝説的な存在として名前は知ってるけど聞いたことがないというような話をしていた。歌うのが好きという話は聞いていたけど、歌っているのをついに聞けなかったのが残念。まったく接点がない分野ではあるけれど。いろんな意味で名物男だったけど、人員削減に伴う体制変更で追い詰められて、このところは歌ったり聞いたりすることもほとんどなかったと。傍から見ていると、進むところと退くところがちぐはぐなことが多くて、はらはらしてた。そこ考えるとこちゃうやろと思うこともあれば、なんでそこそのまま行くねんと思ったり。あれこれ思い詰めるのに、対策ができていなくて無防備だったり。交通整理さえできれば、と思っていたのだけど。
 選曲はそういう訳で、やはり代表的な曲になるのだけど、「音楽好き」の間では聞いててあたりまえかしらんけど、世間ではそんな訳ないやろと思うので、いいのです。迷ったけど、帰り際に渡すことができた。

目次に戻る

2016 Kijima, Hebon-shiki