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2016年12月4日〜2016年12月10日


12月4日(日) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月4日】
 早くに出る必要があったので、午前中は前倒し進行をこころがけていたのだけど、土曜日は9時から開いてるところが日曜日は10時からだったりして、いつもとちがうことをやろうとすると、うまくいかない。11時までに中之島は断念。大丈夫だろうか、と思いながら、途中でマルビルに寄って、あっという間に売り切れるだろうと端からあきらめていたところ、まだ残っているという情報を得た3776『3776を聴かない理由があるとすれば』アナログ盤を入手。曲間に入っていた台詞や小芝居や3776カウントを抜いた編集になっているということで。このところタワレコに行っても買おうと思うものが売ってなくて足が遠のきがちなので、期限が切れるまでにポイントを消化することもかねて。

 11時40分に中之島図書館着。「音盤大学」二日目。すぐに講義(トーク)の二限目のチケットを購入。昨日、見切れなかった箱を見始めたら、二限目売り切れのアナウンスがあった。あぶないところだった。二限目が始まるまでに、1枚見つけた。EMIオーストラリアのみで発売されたものとのフレコミのダドリー・ムーアのベスト盤 "DUDLEY: THE MUSIC OF DUDLEY MOORE"、2枚組。ジャケ裏にはダドリー・ムーア・トリオのパーソネルが記されているのだけど、映画『悪いことしましョ』の曲が並んでいることに驚いた。タイトル曲をピアノトリオで演奏しているテレビ出演時のものと思われる映像がYoutubeにあがっていて、レコードになっているのなら欲しい、と思っていたのだ。A面は "30 IS A DANGEROUS AGE" から、B面はその "BEDAZZLED" からとなっている。1969年の記載があるけれど、カバーの写真は歳をとってからのもので、疑問に思っていたら、内側のライナーノートには1978年の記載。あれこれは帰宅してから調べよう、と思い、とりあえず講義の前に清算した。

 二限目の講義というか、トークは、安田謙一さん、バンヒロシさん、キングジョーさん、松本亀吉さんの4人が一年を振り返ってレコードをかけながら、エピソードを語るときのポイントを明らかにし、老いと死を見すえて、2016年を(少しだけ)斬る、というものでした。バンさんと安田さんのイベントの出張編の趣きもありました。シーナ&ザ・ロケッツのアルファ移籍前の「レモンティー」別テイクシングルとか、風間杜夫の「アンジェリーナ」、ソ連時代に活動していたナナイ族の歌手コーラ・ベルドィ、名古屋のバンド「ハポン。」など。

 こんなのあったんやレコードを手に入れたこともあり、きょうはもう満足で、会場をあとにしたら、雨がパラつき出していた。淀屋橋駅まで急ぎ、「ODONA」を覗いてから帰宅。

 さて。問題の"DUDLEY: THE MUSIC OF DUDLEY MOORE"、やはり60年代の録音を収録した1978年発売のアルバムだったのだけど、『悪いことしましョ』はピアノトリオ版ではなく、サントラ盤からでした。残念。手元にない曲もあれこれあるので、よしとします。

12月5日(月)
[一回休み]
12月6日(火)
[一回休み]
12月7日(水)
[一回休み]
12月8日(木)
[一回休み]
12月9日(金)
[一回休み]
12月10日(土) 【▼ぐりぐらメモ/2016年12月10日】
 肩すかしの一週間。月曜、火曜、金曜は遅くなることを覚悟していたのだが、納品が延期になり、宙ぶらりんに。もとから情報が不足している案件で、わずかに手が付けられた部分だけでも、不明点が多々。日程が重なってきているし、できることはやるとしても、不安なまま時間が過ぎていくのはからだにわるい。

 という訳で、月曜日は穏便に帰宅することができたのだが、穏便にすぎて、ついうっかりそのまま帰ってきてしまった。コンビニで通販到着物の受け取りをするはずだったのに。気付いたのは、カギを開けたときで、一瞬引き返すことも考えたのだけど、帰るときには母親を驚かせないように、自転車はがたがた、カギはがちゃがちゃといわせることにしているもので、帰っていることが気付かれているであろうと、諦めた。で、「ただいまー」と部屋の扉を開けたら、盛大に驚かれた。気付かれていなかったのだった…。
 歳をとると、インプットが狭められるからか、母親はちょっとしたことで驚くことが多くなった。帰宅時だけでなく、休みの日、家に居るときでも。わたししか居ないのだから、驚く必要はないはずなのだが。びっくりされるたびに、からだに障るのではないかと思ってしまう。

 火曜日に通販到着物2枚を受け取り。1枚は、復刻盤が発売されたのは去年の5月だけど、それ以来、店で見かけたらと思いながら、まったく見つけられなかったスポンティニアス・ミュージック・アンサンブルの "KARYOBIN: Karyobin are the imaginary birds said to live in paradise"。それと、買ったものと思い込んで、旧盤を放出してしまったドノヴァン "BARABAJAGAL" の2005年版。
 1968年発表の "KARYOBIN" はジャケ買いと言ったほうがいい。アイランドレコードのカタログを眺めていて、デザインがいいなと思って、メンツを見ると、ジョン・スティーヴンス、エヴァン・パーカー、ケニー・ウィーラー、デニス(デレク)・ベイリー、デイヴ・ホランドという60年代ブリティッシュジャズの主要人物たちだったことから聞いてみたかった。いちどCD化されているけれど、そのときは躊躇しているうちに見かけなくなってしまったのでした。今回の日本盤の解説を読んだら、そのときのCDにはロバート・ワイアットがライナーノートを寄せているとか。
 ドノヴァン "BARABAJAGAL"(1969年8月発売)。うっかり買い直したものと思っていたので、ドノヴァンの紹介盤を作ろうとしたとき、困った。"Barabajagal" はEMIからの編集盤にも入っているけれど、イントロが欠けているから。もともと "Superlungs My Supergirl"、"To Susan On The West Coast Waiting"、"Atlantis" といったシングル曲が含まれていることもあり、2005年版のボーナストラックはこのときが初出のものばかり。映画『火曜日はベルギーよ』の中で本人が登場して弾き語りをした "Lord Of The Reedy River"("HMS DONOVAN" 収録)の初期バージョンが "The Swan" というタイトルで収められている他、のちのアルバムに収められたものもいくつか。

 水曜日にも通販したものが届いていた。1968年10月3日スタート全6回の子供向け30分ドラマ『ロンドン大追跡 The Tyrant King』のDVD。リージョンコード2、PAL方式だからか、一年前にNHK総合「少年ドラマシリーズ」のことを思い出したついでに検索かけて発売を知ったときは日本のAmazonでは取扱いがなかった。マーケットプレイスにイギリスの店が安く出品しているのを見て注文したのだけど、その店のものは届かず、返金通知があったその足で、というかその指で別の店に発注したものがようやく届いた。到着予定から4日経っていたので、今回もダメかとあきらめかけていたところでした。
 「少年ドラマシリーズ」では1973年6月25日からの放映。検索かけて、DVD宣伝のための予告映像を見て驚いたのは、ナイス "The Thoughts Of Emerlist Davjack" がテーマ曲になっていたこと。他にもピンク・フロイドなど当時のサイケデリックポップが使われていたらしい。見ていたのだけど、当時はまったく音楽を気にしていなかった。2年後にはビートルズの "Strawberry Fields Forever" や "I Am The Warlus" をきっかけにサイケデリックポップにはまるのだから、わからないものだと思う。そんな訳で、「少年ドラマシリーズ」での放映の際も、ナイスやフロイドが使われていたか定かではなく、ナイスの "AUTUMN TO SPRING" を買ったときもまったく気付いていなかったけれど、もしかかっていたとしたら、「刷り込み」があったかもしれない。
 物語は、男の子2人、女の子1人の3人組が、ふと耳にした "Tyrant King" の謎を突き止めるべく、ロンドン各地を巡るというもの。

 DVDを見て、改めて驚いたのは、そうでなくては困るのだけど、ナイスやフロイドの音楽が差し替えられずにそのまま収録されていること。毎回のオープニングがナイスの "The Thoughts Of Emerlist Davjack"、エンディングがフロイドの "A Saucerful Of Secrets"。ミステリアスな場面には、"Astronomy Domine" 、探索に乗り出す場面ではムーディ・ブルースの "Dr. Livingstone, I Presume"、緊迫場面ではナイスの "Dawn" が繰り返し使われる他、ナイスやフロイドの他の曲とともに、クリーム "As You Said"、"Sunshine Of Your Love"、ローリング・ストーンズ "She's A Rainbow" が流れる。タイトルが、ナイス "Dawn" 風の囁きで告げられるのも可笑しい。

 ナイス "Dawn" に似た囁きは、フロイドの "Careful With That Axe, Eugene" にも出てくる。ナイスには "Cry Of Eugene" という曲があることから、影響があるのではという説がある。むかし「週刊FM」だったか「FMレコパル」だったかに、ライバル対決シリーズみたいな記事があって、ピンク・フロイドとエマーソン・レイク&パーマーがとりあげられたとき、ナイスがフロイドの影響を受けたという説に立って、だからエマーソン・レイク&パーマーには創造性がないのだとクサす論調になっていた。返す刀で、当時発売されたばかりのデイヴ・ギルモアの最初のソロアルバムも感傷的に過ぎるとして批判していた。そのひとにとっては、幻想性がなによりだったのだろう。つまらん書きかたをするなぁと思って、長いこと筆者の名前を覚えていたけど、もう忘れてしまった。かなり経ってから古本屋で名前を見かけて、おやっと思ったら、グルメレポート本だった。
 ナイスの「パクリ」を指摘することでエマーソン・レイク&パーマーをクサすのは訳わからんし、そもそも対決させるのもどうかと思うのだけど、それ以前に、ナイスの "Eugene" や囁きが、フロイドのパクリなのか。ナイスのアルバムが発売されたのは、1968年中頃。番組が始まった時点では、まだ "Careful With That Axe, Eugene" をB面に収録したシングル "Point Me At The Sky" は発売されていない(1968年12月6日発売)。1967年にはナイスとフロイドは共演もしていたし、デイヴィッド・オリストがステージに立てなかったシド・バレットの代役で出たこともあったくらいだけど、フロイドがステージで演奏しているのを聞いた可能性はあるにしても、囁きはともかく、"Eugene" がタイトルに出てくるのは後の話。時系列で言えば、ナイスの "Eugene" が先行していたと考えるべきで、ナイスからフロイドの影響を疑ってもいいくらいだけど、実際のところはわからないというところ。

 というようなかんじで、回顧モードであったところへ、訃報。グレッグ・レイクが亡くなったことを金曜日の朝に知る。後年はまったく聞かなかった。"WORKS VOL.1" のソロサイドのような、アコースティックなバラッドを続けていくことを期待したところはあった。渋谷陽一さんが初めてのアメリカ取材で、グレッグ・レイクにインタビューしたとき、作品やツアーについて質問しても反応が薄かったので、なかばやけになって「あなたの作品では死が重要なテーマになっているが」と切り出した途端、真剣に答えてくれて、インタビューというものはそういうことを聞けばよいのかと思ったという話がありました。ROでは、橘川幸夫さんが「ELPには壊していく快感があり、イエスには壊れていく快感があった」というようなことを書かれていて、なるほどと思ったものでした。

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2016 Kijima, Hebon-shiki